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居酒屋 『青春』

Sabotage!’タカミ

作者: 伊咲 知里

短めです。

いつものように居酒屋『青春』に行くと、既に悪友共が集まっていたので驚いた。


「ヒッキー、シュン君まで居るじゃねーか! 珍しいことも起こるんだな」


ヒラヒラと手を揺らしながら言ってやるとシュンが元々ある目力をさらにパワーアップさせた。


「軽く死ね」


シュンは綺麗な顔を崩さず、低く、それでいてどこか甘さを含めたその声で暴言を吐くのだから末恐ろしい。


「タカミの場合、軽くっていうか、本当に地獄に堕ちて二度と這い上がってきたくないと思わせるほど、精神に絶大なダメージを負って死んで欲しいよね」

「…ねぇ、ソウ君? それって地獄に堕ちてる時点で既に死んでるよね? ソウ君?」


ソウの肩に手を置き、身体を揺らしながら言い放つと、手を払われ、さも汚い病原菌に触られたように嫌悪感で顔歪め、肩を払った。


「シネ」

「ちょ、肩触っただけで? 万死に値するってか?」

「いいから座れよ。サキちゃんが困ってるだろ」


カナメは俺にだけ見える角度で、汚いものを見るように蔑んだ瞳で言いのけ、すぐに店員さんに向けて愛想好い甘いマスクを被った。


「つーか、なんでお前来たの? 明日の二限、いや、もう今日か。進級試験だろ? 勉強するから今日は飲まねーって言ってだろ?」


シュンは、目の前に置かれたビールを器用に飲みながら悪態をつく。


「…星に祈ることにしたんだよ」

「馬鹿じゃねぇーの。どこに星があるんだよ。全然キマってねぇし。ダッセ。タカミダッセ」

「本当、今何時だと思ってんの? 明け方だよ? 本当に馬鹿なの?」


シュンの態度に激しく同意するように声を出したソウを睨みつける。


「馬鹿馬鹿いうなよー。本当に馬鹿になるだろ?!」

「もう、完全に手遅れなほど、本当の馬鹿だから安心しなよ」

「うっさいわ! ところで、シノノメは? さっきから姿見えないけど」

「なんか、先帰ったけど?」

「ふぅーん。ま、いいや。あ、俺ビール」


カナメと店員さんがまだ楽しそうに話していたので、間を割る様にして注文してやる。


「かしこまりました。ビールお一つでよろしいですか?」


可愛らしい声が響き、荒んだこの場も一気に和んでいくのがわかった。

カナメは可愛いお気に入りの店員さんとの和みタイムを邪魔され、俺に敵意をむき出すがいつものことなので気にしない。


「あときゅうりの浅漬け一人前」

「かしこまりました」


そう言うと店員さんは笑顔を絶やすことなく席を離れた。


「…シュンってあれから元カノとかどうなの?」


そんな店員さんに見向きもせず、いまだにメニューの浅漬けから視線を外さないシュンに呆れつつ声をかけると思いっきり眉間に皺を寄せてから一瞥する。


「シネ」

「ちょっと、シュン君? 俺が死んだら泣いて悲しむくせに、思ってないこといっちゃだめでしょ?」


戯けて言うとさらに嫌そうな表情を浮かべた。

やれやれ、と頭を振って周りのメンバーの顔を覗くと他の奴らも同じ様な表情を浮かべている。


「おい、お前ら。なんだ、その顔は」

「全員一致でお前に殺意が湧いた顔だよ」


ヌケヌケとソウが言ったので、唯一味方になってくれそうなトーマに顔を向け、助けを求めた。


「…全員一致で、だよ」


近来稀に見ぬ爽やかな笑顔で言いのけた。


「んだよ、やってらんねー」

「まぁ、まぁ。殺意は湧いたけど、まだ殺そうとはしてないんだから、安心しなよ」

「…カナメが言うと、近い将来本気で誰かが殺しに来そうで怖いわ」


カナメはただ、ふふ、と笑うだけだった。


「…頼むから否定して…」


呟いた本音は周りの客の煩い声に搔き消された。



続く…?

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こんばんは、伊咲さま!  この間は、新たに悶えをいただき、わたしが悶えました(笑)  ところで、『居酒屋』シリーズ拝読しました! おバカで他愛ない会話がテンポよく進み、爽やかな、な…
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