2.皇女の懐かしい記憶
そのうちに、ライムのお父様が病気になった。私は枕元に呼ばれ、
「どうか、公爵家を頼む。ライムはクズだが、1つだけいいことをした。レムさんを正妻にしたことだ。レムさんがいなかったら公爵家はつぶれていた。ライムを見捨てないでくれ」
これがライムのお父様の遺言だった。
もう公爵家は私なしでは回らなくなっていた。それを、ライムのお父様も分かっていたみたい。それはうれしかったのだけど、それなら放蕩息子を何とかしてほしかったのだけど、それはできなかったみたいで、その時は複雑な気持ちだった。
ライムのお父様が亡くなって、ライムが公爵位を継いだ。そうしたら、公爵家の仕事がすべて私に来た。ライムはあっちにフラフラ、こっちにフラフラと遊びまわって、後始末はすべて私。カチンとくるばかりの日が続いた。
性格的にはクズだが、ライムと結婚して1つだけいいことがあった。ライムは空間魔法が使えたのだ。そしてライムの子供もすべて空間魔法が使えたのだ。結界を張ったり、索敵で遠くのものを調べたり、いろいろなものを収納したり、遠くへ一瞬で転移することもできた。まさに夢のような魔法である。
空間魔法は、私の子供だけでなくミリーの子供も他の側室や愛人の子供たちもすべて使えたのである。こんなことが王家に知られたら、ライムは種馬にされる。さすがにこれはライムも意識していたようで、人前では空間魔法は使わなかった。
しかし、子供たちに人前で空間魔法を使わないように指導するのは私の役目、面倒ごとはすべて私に来る。私は5人の子供を産んだがすべて空間魔法が使えた。遠くへ行きたいときは子供に転移で連れて行ってもらったし、貴重品はすべて子供のアイテムボックスに入れておいた。
すごく便利、こんな子供が生まれるのなら、ライムと結婚してよかったなと思った。他の妻たちも同じようだった。
ライムは性格的にはクズだが、魔法の腕は確かだった。魔力量が異常なくらい大きかった。空間魔法は魔力量が多くないと使えないそうだ。私もライムに教えてもらっていろいろな魔法を使えるようになった。でも、空間魔法は転移魔法と索敵魔法が少しできただけだった。ライムに言わせると「素質がないからそれ以上は無理だ」とのことだった。
それと、ライムは魔法が得意なので、宝石や先ほど作った陶磁器など必要なものはほとんど魔法で作ってくれた。だからライムはお金はあまり使わなかった。
それとライムは治癒魔法も一級品だった。一度、子供がひどいやけどを負って、治癒士に見てもらったのだけど、「もうやけどの跡は消せない」と言われた。すると、ライムは子供に治癒魔法を何回かかけたの。そうしたら2か月ぐらいで後が残らないようになった。たぶん今の私の痘痕もきれいに跡が残らないように直せると思う。
それから、ポーションを作るのもうまかった。学院では遊んでいて薬師の資格はとっていなかったけど、病気の症状を見ただけでよく効くポーションを作ってくれた。
公爵家は豊かだったので、金には困らなかった。それに金がいるときはライムに言うと適当に宝石を土魔法で作ってくれた。ライムの欠点は女癖が悪いこと。じきに愛人を連れてくる。連れてきた愛人を処理するのは私の仕事。だからライムの愛人と生まれた子供はすべて把握していた。「私に隠していることはない」と言っていた。
私が「こんなに面倒ごとを処理しているのだから、旅行に連れて行け」とライムに迫ったら、隣の国に連れて行ってくれた。
「ネンネリ広場の時計台の前で正午の鐘の音に合わせて祈ると願いがかなう」
というので行ってみた。
なんでも、
「カップルで行くと、必ず結ばれる」
と言われているらしい。
最初ライムは
「もう結婚しているのだから、行かなくてもいいのではないか」
と言っていたが、
「来世もあるのだから」
と言って、無理やり連れて行ったの。
そして、ライムと私と他の妻たち全部で11人で祈ったの、
「来世でもライムと一緒になれますように」
てね。いろいろあったけど、顔はいいし、お金には困らないし、子供はすべて空間魔法が使えるし、ただ女癖が悪いだけ。その時は私もライムがほんとに好きになっていたみたい。
他の妻たちも
「来世もライムと結婚できますようにと祈った」
と言っていた。
ライムは何を祈ったかは教えてくれなかった。
他の妻たちとも話をしたのだけど、たぶん、
「浮気し放題の妻に巡り合えますようにと祈った」
と思うということになった。
不思議なのはライムは女癖が悪く、すぐに女と仲良くなるのだけど、女に騙されることはなかった。ライムに聞くと
「俺は相手のウソが分かる」
と言っていた。
よくわからないので、息子に聞いてみたら
「僕も、相手がうそを言っているとわかる。絵画でも贋作だとすぐにわかる」
と言っていた。これもライムの能力で子供も受け継いでいるみたい。
その後も皇女の話は続いた。




