第2.5話 ルナちゃんのお手伝い!
夕暮れの「月影亭」は、いつもより少し賑やかだった。
宿の玄関に、ルナは小さなエプロンを着けて立っている。
金色の三つ編みが背中でゆらゆら揺れて、
頰はぽっちゃり赤く染まっている。
「パパ! 今日もルナ、お手伝いするよー!」
宿の主人がカウンターから顔を上げて、にこっと笑う。
「ほぉ、今日は張り切ってるな。よしよし、じゃあまずはお客さんの荷物運びからじゃ」
ルナはぴょんと跳ねて、玄関の隅に置いてあった
木箱を抱え上げた。
「えいっ! 重いけど……ルナ、がんばる!」
箱の中は、旅人さんが持ってきた干し果物とハーブの束。
少し揺らすと、甘い匂いがふわっと広がる。
「わぁ、いい匂い~! これ、夕ごはんのデザートにしちゃおうかな?」
主人は笑いながら、ルナの頭をぽんぽん。
「それはお客さんのものじゃぞ。ちゃんと届けてからな」
ルナは「はーい!」と元気よく返事して、
二階へ向かう階段を上り始めた。
小さな足で一段一段、箱を抱えてよたよた。
途中で息が切れて、階段の途中でぴたっと止まる。
「ふぅ……重い……でも、ルナは強いもん!」
三つ編みをぷるぷる振って、もう一度気合を入れる。
「えいっ! えいっ! がんばれルナー!」
無事に二階の廊下までたどり着くと、
ちょうど部屋の前でお客さんが待っていた。
「おじちゃん! 荷物届けたよー!」
おじさんはルナの頭を優しく撫でて、
銅貨を一枚くれた。
「ありがとうな、ルナちゃん。元気いっぱいだな」
「えへへ、ルナはお手伝い大好き!」
銅貨を大事にエプロンのポケットに入れて、スキップで一階に戻る。
次は食堂のお手伝い。 テーブルに白い布を広げて、
ナイフとフォークを並べていく。
「ここにナイフ、ここにフォーク、ここにお皿……」
小さな手で一生懸命揃えるけど、
時々フォークがカチャンと倒れる。
「わっ! ごめんなさいー!」
自分で倒したフォークを拾いながら、
くすくす笑う。 母親が厨房から顔を出して、
優しく声をかける。
「ルナ、今日は本当に助かるわ。ありがとうね」
「ううん!ルナ、パパとママと一緒にいると、毎日が楽しいんだもん!」
夕食の時間になると、宿は旅人さんたちでいっぱいになった。
ルナはトレイを持って、テーブルを回る。
「スープお持ちしましたー!熱いから気をつけてね!」
「パンも焼きたてだよー!」
小さな体でトレイを両手で支えて、よちよち歩き。
時々こぼしそうになって、慌てて体を傾ける。
「わわっ! 危ない危ない……」
でも、こぼさずに全部運びきった。
最後のテーブルに着くと、疲れてぺたんと座り込んだ。
「ふぅ……今日もいっぱいがんばった……」
母親がそっと近づいてきて、ルナの頰を撫でる。
「ルナ、今日は本当によく働いたわね。えらいえらい」
ルナは照れくさそうに笑って、母親のエプロンに顔をうずめた。
「……ルナ、この宿が大好き。 ずっとずっと、ここにいたいな」
窓の外では、魔法のランタンが優しく揺れている。
食堂の中は、旅人さんたちの笑い声と、温かいスープの匂いでいっぱい。
誰も傷つかない、誰も悲しまない、 小さな女の子が、家族と宿を愛している、 いつもの穏やかな夜。




