表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

第9話 リコ

夕暮れの街は、いつもより重い空気に包まれていた。


広場では、エリナの母親、ミリアが、声を枯らして叫び続けていた。


「エリナ! エリナはどこ!? 水色の髪で、そばかすのある子……お願い、誰か見た人いないの!?

もう何日も帰ってこないの……!」


ミリアの目は腫れ上がり、髪は乱れ、服は埃だらけ。

通行人たちは同情の視線を投げかけるが、誰も近づかない。

最近、子供の行方不明が続いているという噂が、

街に広がっていたからだ。


そのとき、広場の端にいた一人の男が、

ゆっくりと手を挙げた。


三十代半ばの、粗末な服を着た労働者風の男。

ミリアはよろよろと近づき、すがるように見つめた。


「……あ、あなたは?」


男は少し躊躇いながら、声を低くした。


「俺、何日か前……夕方頃に、路地裏で見たんですよ。 水色の髪の女の子が、誰かと一緒に歩いてて…… 笑ってたんです。相手は、旅人の少女で……髪に、猫耳のような髪飾りをつけてた。 」


ミリアの瞳が、震えた。


「……その少女の名前、知ってる?」

男は首を振った。

「名前までは……でも、女の子が『お姉さん』って呼んでた。 楽しそうだったよ。

でも、その路地裏、奥の方に行っちゃって……

それきり、見えなくなった」


ミリアは膝から力が抜けそうになり、男の腕を掴んだ。

「ありがとう……本当に、ありがとう……!」

男は気まずそうに頭を掻いて、去っていった。

ミリアは広場に立ち尽くし、胸を押さえた。


髪に、猫耳の髪飾り……

そのとき、広場の反対側から、別の声が響いた。


「ミリアさん……!」


駆け寄ってきたのは、宿「月影亭」の主人、ルナとエレナの夫であり父である男だった。

彼の顔は青ざめ、目が赤く腫れていた。

ミリアは驚いて振り向く。


「……あなたは……ルナちゃんのお父さん……?」

主人は息を切らしながら、頷いた。

「ええ……ルナと、妻のエレナが……もう何日も帰ってこなくて…… 昨日、宿に泊まった旅人の少女のことを、思い出したんです。 名前は…」


「リコと言ってました。」


「髪に……猫耳の耳飾りを付けて。」


ミリアの息が止まった。

「……同じ……?」

主人は声を震わせて続けた。


「その子が泊まった夜に、ルナが……私の部屋に行ったきり、消えたんです。

妻も、次の朝……厨房で……いなくなって……

警察に言っても、『ただの家出』だって……

でも、あの子の笑顔……優しすぎて、逆に怖かったんです」


二人は、互いの顔を見つめ合った。

同じ恐怖、同じ喪失、同じ疑念。

ミリアはゆっくりと拳を握った。


「……リコ…… その子が、知ってるはず……

エリナが、最後に一緒にいた…… ルナちゃんとエレナさんも……」


主人は頷き、声を絞り出した。

「もう、待てない……

俺たちで、探すしかない」


ミリアは涙を拭い、決意を込めて呟いた。


「……会う。 リコっていう少女に、会うわ。

私の娘を……返してほしいって、直接聞く」


広場の夕陽が、二人の影を長く伸ばす。

街のざわめきが、少しずつ大きくなっていく。

噂が、噂を呼び、 行方不明の子供たちと、

一人の旅人の少女の名前が、

静かに、しかし確実に、街中に広がり始めていた。


「…『リコ』、絶対に許さないから。」

今回の被害者


なし

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ついに断罪のときか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ