第8話 双子をいただきます。
アリアさんを食べたせいで暗くなってきちゃった。
私は人気のない貧民街の路地裏に行き、美味しそうな子を探す。今日はもう2人くらい食べたい。
昼下がりの陽光が、細い路地にまだらに差し込んでいる。
髪飾りをいじりながら歩く。
六つの思い出が、私の髪に揺れている。
少し離れたところで、笑い声が聞こえた。
貧乏だけど、幸せそうな双子の幼子。
五歳くらいの女の子たち。
同じ顔、同じ銀色の髪、同じ青い瞳。
片方は左の頰に小さなえくぼ、
もう片方は右の頰に同じえくぼ。
母親が洗濯物を干している隙に、路地で石ころを転がして遊んでいる。
「リリ、こっち来て!見て見て、きれいな石!」
「ルル待って! 私も見たい!」
二人が手を繋いで、ぴょんぴょん跳ねる。
リリちゃんとルルちゃんか…
可愛い。
食べてしまいたい♡
私はそっと近づいて、しゃがんだ。
「こんにちは。お姉さんも一緒に遊んでいい?」
二人はぱちっと目を輝かせて、すぐに私の手を握ってきた。
「いいよー! お姉さん、きれい!」
「髪にいっぱい飾りついてる! かわいいね!」
小さな手は温かくて、純粋だ。
指の関節が小さく動く感触が、懐かしい。
私は二人を優しく抱き寄せて、囁いた。
「じゃあ、もっときれいなところに行こうか。
お姉さんが、特別な場所に連れてってあげる」
二人は無邪気に頷いた。
「やったー!」
「どこどこー?」
私は二人を抱えて、街の外れの廃墟へ。
花畑に近い、古い石造りの崩れた家。
…誰かに見つかったら取られちゃうもんね。
中に入ると、埃っぽい空気が鼻を突く。
私は二人を床に座らせて、にっこり。
「ここ、秘密のお家だよ。ちょっとだけ、いい子にしててね」
リリちゃんとルルちゃんは目をキラキラさせて、周りを見回す。
「わー、暗いけど面白い!」
「秘密基地みたい!」
私は背後に回って、まずリリちゃんの首に手を回した。
いつも通り、親指と人差し指で喉を正確に圧迫。
七秒。
カクン。
リリちゃんの体がくたりと倒れる。
ルルちゃんがびっくりして、目を丸くする。
「リ、リリ……?」
私はすぐにルルちゃんの口を塞いで、同じように首を掴む。
カクン。
二人が、並んで床に横たわる。
同じ顔、同じ銀色の髪、同じ青い瞳。
まだ温かい。
小さな胸が、微かに上下している……いや、もう止まっている。
「……始めようか、リリちゃん、ルルちゃん」
まずは髪。
二人の銀色の髪を、交互に一本ずつ抜いていく。
頭皮が少しずつめくれ、薄い血が滲む。
髪を束ねて、自分の髪に結ぶ。
…ふふ。七人目と八人目。
次に頰。
えくぼのある頰を、指でつまんで皮膚を剥ぐ。
ぷにぷにした脂肪が、白く柔らかく露わになる。
こそげ取ると、
んっ……甘い。
ミルクのようなコクと、幼さの無垢な甘みが混ざる。
二人の頰を交互に味わう。
同じ味。
でも、少し違う。
リリちゃんの方が、ほんのり塩気が強い。
ルルちゃんの方が、甘みが強い。
「楽しいなぁ…」
次に舌。
小さな口を開かせて、根元から切り取る。
ぷるんとしたピンクの舌を、口に含む。
甘酸っぱい。
まだ言葉を覚えきっていない、純粋な味。
二つの舌を、交互に転がす。
次に胸。
小さな胸を服ごと剥ぎ取る。
肋骨は細く、簡単に折れる。
ぱきん、ぱきん。
心臓を露出。
まだ微かに、温かさが残っている。
心臓を縦に裂いて、心筋を一口ずつ。
弾力。
幼い命の熱と、血の鉄分が混ざった、儚い甘み。
二つの心臓を、交互に味わう。
同じ鼓動の残響。
最後に、お腹を開く。
小さな内臓を丁寧に取り出す。
肝臓は柔らかく、苦味が優しい。
腎臓はぷちぷち弾ける。
腸は薄く、内容物がほとんどない。
全部、全部、味わう。
二人の体を、空っぽにする。
最後に、二つの体を抱きしめて、囁く。
「……リリちゃん、ルルちゃん。 ありがとう。
双子の味……本当に、特別だったよ。2人とも一緒に胃袋に入れられて、とっても嬉しいんだろうな。」
私は二人の銀色の髪を撫でて、立ち上がった。
廃墟の外へ出ると、夕陽が沈み始めている。
街の方から、誰かの叫び声が聞こえてきた。
「……エリナ! エリナはどこ!?」
私は足を止めて、耳を澄ます。
エリナちゃんの母親の声。
「娘が……娘がいなくなったの!
誰か、見なかった!?
水色の髪の、そばかすの女の子……!
お願い、誰か……!」
街の広場に、母親が立っている。
髪を振り乱し、涙で顔を濡らして、通りすがりの人々にすがりつく。
「エリナ……エリナがいなくなって、もう何日も…… お願い、助けて……!」
人々がざわつく。
噂が広がり始める。
「また行方不明か……」
「最近、子供が消えるって……」
「まさか、魔物か?」
母親は膝から崩れ落ちて、地面を叩く。
「エリナ……エリナぁ……!」
私は遠くから、それを見ていた。
髪飾りを指で弄びながら、にっこり。
「……エリナちゃんのお母さん、まだ諦めてないんだね」
今回の被害者
ルルちゃんとリリちゃん




