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第4話 この国のかたち

ここまでの登場人物

・レン 男。主人公。転生者。魔法を使える。

・ノノカ 女。クラスメイト。明るい。

・アナザー 女。転校生。寡黙。

「えー、今日はこの前の続き。ジャスティ国とオリジ国の歴史について、軽くおさらいするぞー」


 1時間目、社会科の授業。クザ先生は年配の男性で、しゃがれ声と独特なボケが特徴だ。クラスの一部には人気がある。


「はい、教科書の92ページ開いてー。オリジ国に元々住んでいたのは農耕民ですねー。そこに移民という名のジャスティ国民が押しかけてきて、いつの間にか都市を作ってたわけですねー」


 教室内にちょっとした笑いが起きた。


「でもこの『いつの間にか』がね、大事なんです。100年前に始まったこのゴタゴタは、土地の取り合い、宗教の違い、歴史認識の不一致……で、ずっと小競り合いが続いてきたわけですね」


 ふむ。俺はふむって感じで聞いていた。


 実際、俺がオリジ国に転生してからこの国の空気は嫌というほど感じてきた。常にジャスティ国との緊張が張り詰めている。街の壁に描かれた落書き。ニュース速報で流れる爆発音。遠くの争いが、すぐ隣にいる誰かの話なのだ。


「はい、それじゃあ今日はちょっと考えてみましょう。今この国が平和になるには、何が必要だと思う?」


 おお、急に深い。

 クザ先生の言葉に、クラスが一瞬静まった。


「はい、じゃあグループごとに軽く意見交換して、あとで発表ねー!」


 俺、ノノカ、そして……アナザーを含む四人グループ。


「やっぱさ、戦争ってどっちかが悪いってわけじゃないよねー」とノノカが言いながらペンをくるくる回してる。

「ま、うちは完全にオリジ国出身だけどー。でもさ、たとえば、オリジのゲリラが先にやったら、そりゃ報復されてもしょうがないよねー?」


「……戦争が続くのは、たぶん、お互いが『正しさ』を譲らないからだ」

 俺はふとそう言った。思ったより、自分の声が真面目だった。

 ノノカが一瞬「おお?」みたいな顔をした。


 そのとき、ツカサの声が教室に響いた。

「結局、勝ったほうが正義なんだろ?」


 出た。ツカサは、ヤンキー気質の有名人だ。ガタイも大きく、しょっちゅう問題を起こしてる。顔は悪くないが性格が終わってる。


「なんか言ったか、レン?」


 俺は肩をすくめた。


「……別に。ただ、それって『力こそ正義』ってことでしょ。なんか悲しくないか?」

「何が悲しいんだよ。そういう奴が世界を回してんだよ。世界同盟を作ったピース国を見ろよ。結局金と力のあるやつが仕切ってるじゃないか。あいつらジャスティ国のバックにいるだろ絶対。」


 ドンと机を叩いたやつがいた。教室の空気がちょっと重くなる。


……まずいな。このまま言い合っても意味ない。


 俺はそっと目を黒板の下に向けた。そこにはガタついた古いチョーク入れ。

──落ちてくれ、ちょっとでいい。

俺は心の中で念じる。


 カララララッッ!!!


 勢いよく、チョーク入れが下に落ちた。白や黄色のチョークが床を転がり、教室がざわめく。


「おいおいまたかよ、このオンボロー!」と先生。このチョーク入れは金具が壊れていて時々落ちるのだ。


 俺はちょっと口元を緩めた。作戦成功。

 先生が手を叩いた。


「はい!ディスカッションはここまで!各自の意見を紙に書いてくださーい!」


 空気がふっと緩む。ツカサは俺を睨んだままだったが、何も言わずに前を向いた。

 俺も、ペンを手に取る。


 アナザーの方を見ると、彼女は静かに紙に何かを書いていた。その横顔は冷たく見えるけど、どこかで思考を深く巡らせてるような──そんな感じがした。


 彼女はまだ何も言わない。でも、何かを感じてる。

 きっとそれは、俺と同じ種類の「違和感」だ。

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