第3話 転校者アナザー
朝のホームルーム。担任のローラ先生がいつもよりピシッとした声で言った。
「今日は転校生を紹介します。前にいたのはジャスティ国寄りの地域だそうで──」
教室がざわついた。名前すら出るだけで空気がピリつくのは、我がオリジ国の学校あるあるだ。ノノカが俺の隣でひそひそ言った。
「うわー、いきなりハードモードじゃんね。どんな子だろ」
「黙って見とけよ」と言いつつ、俺もちょっと気になる。
「じゃ、入りなさい」
静かに扉が開いた。
スッ…と入ってきたのは、黒髪ロング、真っ白な肌、制服もきっちり着こなしてる少女。目元は冷たく、口元は無表情。どこか近寄りがたいオーラをまとっている。
「アナザーです。よろしく」
それだけ言って、教卓の前でぴたりと止まる。先生が少し気まずそうに促した。
「えっと…じゃあ空いてる席…レンの隣、いいかしら?」
俺の隣かよ。
「どうぞー!」とノノカがなぜか元気に返事した。
無言でアナザーが着席。すれ違いざまに少し目が合った気がした。でも、気のせいかもしれない。視線の強さが妙に懐かしい感じはしたけど──。
授業が始まっても、アナザーは一言も発さなかった。教科書を静かに開き、先生の話を黙って聞いている。いや、聞いているかどうかも怪しい。ほとんど板書を写していない。
休み時間。周りの女子たちは「声かけていいのかな…」「怖くない?」と様子をうかがっていたけど、ノノカは違った。
「ねえアナザーちゃん!どこのアイスが好き?」
「……アイス?」
「うん!コンビニの限定アイス知ってる?」
「……知らないわ」
「じゃあ今度一緒に買いに行こー!」
「……」
アナザーの無言は拒絶か、それとも反応の仕方がわからないだけなのか。ノノカは勝手に「今度一緒に行くことになった!」と喜んでいたが、あれはきっと妄想だ。
俺は片目でそっとアナザーを観察していた。何かが、違う。普通じゃない。だけどそれが何なのか、まだはっきりとは言えない。
──もしかして、俺と同じ?
放課後、誰よりも早く教室を出たアナザーの背を見送りながら、俺の中にひとつの仮説が浮かびかけていた。
—
次の日の朝。校門の近くにアナザーが一人で立っていた。ポツリと、誰にも聞こえないような声でつぶやいた。
「この世界、静かでいいわね」
お前も、向こうの世界の人間なのか?
でも、話しかけるのはやめておいた。俺にはまだ、何がどう繋がっていくのか分からないから。




