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第2話 テストの魔法

 教室には、試験前の緊張感……しかしそんなものは、ノノカの前には存在しなかった。


「ねえレン、テストって『本気出したら負け』って感じしない?」


 隣の席のノノカが、いつも通り無駄に高いテンションで話しかけてくる。


「いや、本気出しといた方がいいと思うよ。単位、いるでしょ?」

「なるほど、真理。でも私、直感型だからさ〜。九九の八の段まではギリいける!」

「それ普通の人は全部いけるやつ」


 そんな会話をしてるうちに、先生が入ってきた。


「はい、準備してー。テスト始めるぞー」


 教室が一気に静まり返る。


 緊張と無音。鉛筆のカタカタという音だけが響く。俺も集中を切り替える。魔法を使う準備だ。



 カリカリと解答を進めていたそのとき、コツンという音が聞こえた。


「……あ」


 ノノカが小さくつぶやく。ちらっと横目で見ると、彼女の消しゴムが机から転がって落ちていた。そして彼女は見当違いの方向を探している。


 俺は無言で、指をさす。ノノカの椅子の後ろ、机の脚の隙間にちょこんとある。


「え、あっ、そこ!? ありがとー!」


 ノノカが小声で笑顔を向けてきた。元気で、やかましくて、でも礼儀正しい。


 なんてことのないやりとり。――けど、俺の中で、何かが「カチッ」と噛み合うような感覚が走った。


(……今の、なんか良かったな)


 説明できないけど、身体が軽くなった気がする。魔力が自然と流れ始める、そんな感覚。



 次のページ。来た、面倒な問題。数学のラスボスっぽいやつ。

 普通に解いたら時間が足りない。というか、解ける気がしない。俺、数学得意じゃないし。


 でも――。


(回答よ、現れろ)


 心の中で、魔法を呼び起こす。これは魔法世界で身につけた、俺だけのやり方。


 視界の端がふわっと揺れる。


 すると、白い答案用紙の上に、うっすらとそれっぽい答えが浮かび上がる。


(見えた……!)


 俺はペンを持ち、その光のような軌跡をなぞっていく。紙の上に浮いた答えを、そのまま書き写すだけ。


 これが俺の、こっそり魔法。発動の理屈は未だによくわからないけど、人に何かを教えたあとが調子いいってことだけは知ってる。


(ありがとな、ノノカ)



 テストが終わり、騒がしさが戻ってきた。


「ねー! レンって天才でしょ? 絶対ズルしてるでしょ? 私、あの問題で時間切れした!」

「ズルって。ちゃんと考えてたよ」

「えーほんとー? レンの答案用紙から光が出てたもん。『俺はできる』って感じのオーラが」

「日光の反射だろ」


 俺は笑いながらノノカを見る。こういう元気なやつがいると、日常がわりと楽しい。


 でも、俺には誰にも言えない秘密がある。


 俺は――転生者で魔法使いなんだ。

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