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第13話 ノノカの言葉

 瓦礫を踏みしめる音だけが、やけに大きく耳に残っていた。

 空は灰色に沈み、風は焦げた匂いを運んでくる。俺は何も考えずに歩き続けていた。


 軍隊を半壊させたあの時の光景が、まだ頭から離れない。戦車を切り裂く風。ヘリを貫く氷。それをやったのが自分だという事実も、アイリを失ったという現実も、全てが混ざって遠くに感じる。


 ——アナザーの出現。使えなくなった魔法。何がなんだかわからない。

 これから、どうすればいい。思考はそこで途切れた。


 その時、背後から駆け寄る足音がした。

「……レン君!」

 肩をつかまれ、振り返ると、息を切らせたノノカが立っていた。服の裾は埃で汚れ、髪は乱れている。それでも、その瞳はまっすぐこちらを射抜いていた。


「やっぱり……軍隊を圧倒したの、レン君だったんだね」

 低く、確信を帯びた声。


 俺は目を逸らし、「放っておけ」とだけ吐き捨てる。しかしノノカは一歩も退かず、俺の前に回り込んだ。


「ニュースで見たよ。爆撃された地区、レン君の家があるところだよね。何かあったの?」

「何かどころじゃない。家はなくなってアイリ…妹が死んだ」

 ノノカは黙り、少し考えたのちに言った。

「それ、本当に確かめたの?」


俺は、はっと顔を上げた。

「……何?」


「ニュースでそう言ってただけでしょ? 本当に……レン君の目で、確かめた?」

 その瞳には、責める色はなく、ただ必死な願いが宿っていた。


 胸の奥で、重く閉ざされていた何かが、わずかに動く。確かめていない。見たけど、見ていない。


 俺は小さく息を吐き、言葉を絞り出す。

「……家は確かに瓦礫になってた。でも妹に関しては…確かめる」


 ノノカは、ほっと笑ったような気がした。灰色の空の下、ほんのわずかに、色が戻ったように見えた。

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