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第11話 怒りの魔導

 街の空気は、血のにおいと焦げた鉄の風に満ちていた。


「……ここに、いたんだ。アイリ」


 俺たちの家があった場所。爆撃跡に立ち尽くす俺の頬を、乾いた風がなぞる。焼け焦げた建物、黒く焦げたぬいぐるみの残骸。俺の頭の中では、アイリの笑い声が響いていた。


「にーちゃん! おみそしる、ふーふーして!」


 その声が、耳に残っている限り、信じるしかなかった。


 だが。


――スマホから流れる音声。


「生存者の確認は取れておらず、当該地域の居住者は……」


 ニュースキャスターの声は、どこか遠くで鳴る機械音のようだった。


 感情が――焼けつくような、怒りが、喉奥から吹き出してきた。


 俺はゆっくりと立ち上がり、焦げた地面に手をついた。家のあった場所から離れる。歩くほどに街の破壊の様子はひどくなる。

 当然だ。俺は爆撃が始まった方角に向かっている…つまり、ジャスティ国との国境へ。


「お前たちが……お前たちが、アイリを殺したんだ!」


 叫びが空気を裂くと同時に、俺の周囲の風が唸り声を上げて渦巻いた。風が刃となり、前方に見える装甲車を斬り裂く。ヘリが旋回し、兵士たちが散開し始める。


 俺の視界には何も映っていなかった。ただ、アイリとの記憶だけが胸を焼く。


「アイリ……おまえがいたから、俺は……!」


 叫ぶたびに、空気が震える。氷の槍が大地から噴き上がり、戦車の車輪を貫いた。


 兵士たちは混乱し、無線が飛び交う。


「敵は一人だ! 一人で、ここまで――」


「何が起きている?ありえない!」

「新種の兵器か?いや、こいつ、人間じゃ――!」


「人間じゃないよ」


 俺は低くつぶやいた。


「俺は……魔法使いだ」


 風の刃、氷の鎖、怒りが呼び出すままに、魔力が具現化する。はたから見れば神話の戦神のようだろう。


 一人、また一人と兵士が倒れていく。数十人いた部隊は、俺の魔導の前に壊滅寸前だった。


 そのときだった。


 地面に影が落ちる。静かに、だが確かに、足音が響く。


「お前は……」


 俺の心は一瞬、現実に引き戻された。数日前までの平和な学園生活。そこで見知った女生徒。


「アナザー…」

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