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愛惑星、ゼロちゃん 

作者: 藤乃花

最近の流行りのペットは、何と云っても惑星。

勿論犬や猫小鳥を飼うのも良いものだけど、やっぱりなかでも惑星がダントツ一番のペットだ。 

惑星を飼えば散歩の時には、その惑星に触れれば一瞬にして銀河へワープ出来るのが楽しい。   

楽しいらしいのだ。

らしい……というのは周囲に惑星を飼っているクラスメイトが何人かいる事で、その楽しさを耳にしているだけだ。


惑星を飼う方法は幾つかあり、銀河惑星ストアで捜す方法、惑星の里親募集に応募する方法、雛惑星が生まれた家庭から譲り受ける方法等……様々な飼い方があるのだが、生憎飼いたい気持ちはあるものの、明日美はペット禁止のマンション住まいだ。

(父さんの実家だったら、堂々と惑星飼えるのにな……あ~あ、飼いたいよ、惑星‼)

ペット特集の惑星ページをサイトで眺めた後、明日美は今居る自室を見渡した。

(この部屋に惑星いたら可愛いだろうなあ。

部屋ん中をコロンコロン転がって、呼んだら来るの……)

空想では惑星と暮らしており、お手製のリングを付けて銀河散歩したりしている。

(父さんの実家みたいに一戸建てなら良かったのに)


パソコンから視線を移し、窓の向こうを見詰める。

(空にはいっぱいの惑星がいるんだろうな)

と……そこへ現れた小さな影が一つ。

窓の外を浮遊しているではないか。

「んあ?

あれ……は?」

気がついた時には明日美は窓の前まで駆け寄り、ベッタリ張り付いていた。

小さな影は、どうやら惑星と思われる。

明日美と目が合い、ピタリと停止した。

しばし明日美と惑星は窓を隔てて、視線を合わせる。

惑星の形状は楕円形で、アラビア数字のゼロを思わせる。

「ゼロ……」


明日美がそう呟くと惑星は強い反応を示し、体を小刻みに震わせた。

これは犬で云えば、尻尾を振る行為と同じものだ。

(喜んでる。

あ、そうだ!)

明日美は服のポケットから土を入れた小瓶を取り出した。

土は惑星の主食なので、明日美は野生の惑星を見付ける度に土を与えていた。

窓を開けると、惑星の震えはより強くなりつつある。

「土、食べる?」

惑星との距離が更に縮み、明日美が土入りの小瓶を見せると、それは彼女にすり寄った。


人に慣れているようで、警戒心はゼロだ。

形がゼロだけに。

小瓶から土を注ぐと、惑星は美味しそうにそれを飲み込んでいく。

「飼われてるのかな?

人を警戒しないね」

惑星と触れ合いを感じていると、明日美の頭上に影ががかった。

「ん?

えええ!」

上方には更に大きな惑星が浮かんでおり、明日美を見詰めている。

そして形はゼロ型だ。

「うちの子を世話して下さりまして、ありがとうございます。

目を離したスキに、姿を消していて……探していたんです」

大きな惑星は小さな惑星の母惑星だったようだ。


小惑星の動きは母惑星へと移動し、先程よりなついている。

「迷い惑星でしたか……母さん惑星と再会出来て、良かったで……す」

(銀河に帰るんだね。

もう少し遊びたかったな)

残念そうな明日美を見た母惑星から、思いもよらない言葉が告げられた。

「あの、実は私たち前の住みかを出てきたんです。

それで新たな拠点エリアを探していました。

そこで、お願いなんですが……お嬢さんのベランダをお貸し頂けませんか?」

「え?

ここのベランダを?」

「お嬢さんのが差し支えがなければ……」


あれから数日、惑星の母と子は明日美の部屋の裏側にあるベランダで、迷い惑星として住んでいる。ペットではないので、その辺りは許可が下りているのだ。

「ただいま、ゼロちゃん、

ママちゼロゃん!」

「おかえりなさいませ、明日美さん」

「今日もいっぱい遊ぼう!」

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