#2
「なんでこんなに再生回数が」
男は何度も画面を確認した。
これはきっと夢なんだと。
だが、これは現実である。
一体、何が起こったんだろうか。
「と、とりあえず会社に行くか」
男は取り乱しながらも、会社に行く準備をした。
「また帰ってきたら確認しよう、きっと何かの間違いだ」
そう言って男は自宅を後にした。
男の会社は都内のオフィス街にある。
周りを見渡せば、いかにもという感じのサリーマン、キャリアウーマンたち。
男の同世代は役職についている者も多い。
男にとってはこの空間にいることも、とても苦痛だった。
会社に出社した男。
挨拶も聞こえるかどうかぐらいの大きさで、
「お、おはようございます」
と言いながらいそいそと自分のデスクに向かう。
もちろん、この会社に仲のいいやつなんていない。
ただでさえ派遣ということで、正社員の人間とは壁がある。
周りの視線を気にしつつ、男の一日は始まる。
「おい、今日も納品が沢山あるからちゃんと仕分けしといてくれよ」
課長からいつもの雑用が押し付けられる。
「今日はコピー用紙が沢山あるな、DXのご時世に印刷なんてするなよ」
そう言いながら男は仕事を行う。
いつもならダラダラと仕事を行う男であるが、今日はいつも以上に身が入らない。
「昨日動画の再生回数は何だったんだ?」
男は動画のことが気になって仕方がないのだ。
「いつまで仕分けやってんだ!?早くしないと会議に遅れるぞ!」
課長からの声も男の耳には入らない。
男にとっては仕事よりも大切な動画があんなことになったのだから。
仕事を終えた男は終業のチャイムを聞くなり、一番に会社を後にした。
「早く、早く」
男は急いで自宅に戻った。
家に帰るなり一番にPCを開く男。
再生回数を確認すると更に再生回数は上がっていた。
「マジでどうなってんだ」
何度も画面を見ても再生回数はいつもの数値ではない。
頭を抱える男はふとメールボックスを開いた。
すると、見知らぬアドレスからメールが来ている。
「即月様へ」
即月とは男のSNS上でのハンドルネームだ。
男はそのメールを開いた。