#1
男は今日もPCと向き合っていた。
自宅で何時間もPCを開いてキーボードを叩いている。
「ふぅ、今日の動画はこんな感じか」
男は自身の生活ぶりを動画にして、SNSに投稿している。
普段派遣社員として、とある会社で総務の仕事をしている男であったが、家に帰るといつも動画を作って配信している。
「今日の動画は再生回数が狙えるグルメ動画だ」
もう動画を配信してかれこれ1年になる。
だが、いまだに再生回数が伸びることはない。
「俺の作った動画、今に世に認められるときがくる」
男はいつもそう心で唱えながら、動画を作っては配信していた。
今宵も動画の作成が終了し、動画を公開した。
「さて、明日になったら再生回数はどうなっていることやら」
最初のうちは、再生回数がどれぐらいになるのか気になっていたが、男の作る動画の再生回数はたかが知れている。
作って配信しても、その日のうちに再生されるのはよくて500回ぐらいだ。
そんな調子が1年も続き、もう再生回数に一喜一憂することもなくなっていた。
「明日も仕事か」
「また課長から雑用を押し付けられるに決まってる」
男の会社での評判は決していいものではない。
もちろん、さぼっているわけではない。
だが、結果がついてきていないのだ。
いわゆる落ちこぼれ。
派遣ということも相まって、男に回ってくる仕事は誰でもできる雑用ばかり。
男はそんな毎日に嫌気が差していた。
「明日のことを考えると鬱になるぜ」
そう言って男は床に就いた。
翌日、男はいつも通り朝7時に目を覚ました。
「はぁ、ねみぃ」
歯ブラシ片手にPCを開いて昨日公開した動画の再生回数をチェックするのが朝のルーティンだ。
「昨日の動画はどうなっているのかな?」
男は再生回数を見て腰を抜かした。
「え、なんで」
「再生回数が1万回を超えている!」
男は何度も確認した。
「翌日の再生回数なんて500回前後がいいとこ」
「何がどうなってるんだ、、、」