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34 また逢う日まで

とりあえず、城門は搬入出することにより、馬車は通れた。

しっかりと施錠も確認した。

馬車もリペア済みだし、何なら馬車を貰った時より快適かもしれない。

今は工芸職人を外して、見習い魔法使いにしている。

MPと知力が50上昇したが、工芸職人の方が知力の上昇が大きいので結果としては知力は下がった。

工芸職人にしていた時に、馬車の改良版の様な設計図があったが、鉄が必要とされたので、残念ながら造ることは出来なかった。

まぁ、純金で出来なくも無いけど、何となく無駄遣いな気がして見送った。

と言うのも、進行方向である南に向かって建築項目にある、舗装を行っているからだ。

舗装には石材が必要な物もあったが、下位の素材を必要としない舗装があったからだ。

これにより、デコボコ道は完全に平らになり、馬車はほとんど揺れない。

横幅は5m、最長が50mなので、その間隔で舗装しては進んでいる。

これからは野生動物もモンスターも出てくるだろうから、見習い魔法使いの方を優先した。

戦闘になった際は、バンが弓で仕留めることとして、接近戦では槍を使う様に話し合った。

仮拠点生活の間に集めた鳥の羽を使い、工芸職人の職業を活かして、矢も大量生産した。

早々に接近戦になることは無いと思うが、接近戦では僕が前衛剣士として斬り込むことになっている。


「あ、ありがとう~」

イヌワシが野ウサギを御者台に落としていった。

戦闘について話し合いをしていたのだが、いざ出発してみると、イヌワシが先行して野生動物を捕まえて来てしまうので、戦闘には遭遇していない。

馬車が停まるのは、ゴブリンやコボルトが待ち伏せていたであろう場所での死体処理兼、イヌワシの食事。

もしくは、鹿などのイヌワシには運べないサイズの野生動物を解体回収する時くらいだ。

「ロイ様、前方に青い平原が見えます」

「青い平原?」

馬車の後方で野ウサギを解体しているとバンが声を掛けてきた。

御者台の方へと戻り、前方を見ると、遠いが確かに青い平原が見えた。

青い平原と表現されることが多いが、実際は草花の平原だったりする。

緑の平原を何故、青い、と表現されるのか何故かはよく分からない。

「うーん。あれは海かもね」

「ロイ様、海って何ですか?」

「ここは大陸の南端に位置してて、そこから先は海って言う水が溢れる領域なんだよ」

「へぇ、じゃあ、着けば飲み水の心配は無くなりますね」

「バンくん、残念ながら海の水は飲めないんだよ。水に塩が入っていて、飲むと余計に喉が渇くんだよ」

「そうなんですか、何か残念です」

「水問題は解決しないけど、塩問題が解決します!」

スイール王国の南端はわずかだが、海に面していることは知っていた。

崖があるらしく、港を造ることも出来ないと、判断され、手つかずになっているらしい。

降りるのは大変だろうけど、場所を確保できれば製塩施設を造ることが出来るのだ!

「うーん、見た感じ、後2日で海にたどり着けそうだね」

「塩が手に入れば干し肉作りが出来ますね!」

「そう!保存食に塩は欠かせないのです!それに塩は人間の身体に必要な物だから是が非でも手に入れるべきなのだよ!」


そう思っていた自分が馬鹿らしくなりました。

2日後に予定通り、最南端に着いたが、愕然とした。

「ロイ様、これは降りられる様には思えないのですが」

崖を舐めていた。

恐る恐る下を見たのだが、これは無理だ。

断崖絶壁。ほぼ垂直。高さ20m。

しかも、岩がゴロゴロしており、波が強烈に押し寄せている。

どうにか降りられても、そしてどうにか平地を確保できても、波ですべて攫われるだろう。

「塩計画が……」

「ロイ様、塩は海でしか手に入らないんですか?」

「いや、山に岩塩って言うものが存在するけど、スイール王国には岩塩の採れる山は見付かって無いんだよ」

「じゃあ、この国ではどうやって塩を手に入れるんですか?」

「別の国から輸入、購入してるんだよ。塩自体はそんなに高くないんだけど、輸送費が掛かって高価なんだよ」

「この国は沢山別の国から買ってるんですね。逆にこの国が別の国に売ってるものって無いんですか?」

「無いよ」

スイール王国は、輸入大国であり、輸出貧国。

魔境地帯の干渉地域として見られており、基本的には、輸入と言うより物資提供で成り立っている。

モンスターの素材や、それらを利用した武具は、冒険者ギルドが管理している為、スイール王国にその金が流れることは無い。

唯一流れているのが、ミラード開拓都市。

「食料とかもですか?」

「無理だね。隣の国は農業大国と言われているから。ってか、王都の穀物の類は殆どが隣の国で生産されたものだから」

「じゃあ、この国の良い所は何ですか?」

「周辺国の魔境干渉国として生かさず殺さず、冒険者を送り込んで利益を搾取されること」

「え?それって良い所ですか?」

「これでも頑張って出した結論なんだよ?」

「悪い所が多いってことですか……」

バンはミラード産まれ、ミラード育ちだから実感は無い様子だが、知識として周辺状況を知っている自身としてはかなり苦しい。

しかし、塩計画は死活問題だったりする。

でもこの断崖絶壁では塩計画は進められない。

人間は塩無しでは生きていけない。

豊かな食生活、とかの問題ではない。

肉食の野生動物は捕食した獲物をそのまま食べる。

血も一緒に食べているから、血に含まれる栄養から生きていける。

草食動物も大地に含まれる微量の塩分を食べることで生きていける。

岩塩が埋まっている場所でも大地から塩分だけを採取することは不可能。

そして、人間が動物の血を飲むことは推奨されていない。

塩分不足よりも深刻な病を発症してしまう可能性の方が高いからだ。

最終手段は魔境に入り、何らかの形で塩を手に入れるしかない。

その何らかの形は一切不明だが。

でもやるしかない。

「バンくん、森のすぐ側を舗装するから、仮拠点に戻ろう」

「何で、森の方なんですか?危険じゃありません?」

「森を観察しながら、森と魔境の境界線を観察しながら帰ろう。本格的な森への出入りは仮拠点近くとして、その予行演習も含めてね」

馬車に戻り、舗装を再開し、森の手前で折り返すように再度北に進路を定める。

「舗装して3日で来れたけど、帰りは休憩を多めにして戦闘に備えよう」

「もうすぐ、陽が沈みますけど、今日はどうしますか?」

警戒態勢を高めたまま野営するのは危険だ。

「素材が無いから何も造れないか……あ!」

城塞設計士の一覧を調べていると、木も岩も必要のない構造物があった。

堀と土塁だ。

さっそく堀と土塁を繋げて設計する。

堀で得られる土は土塁に使用、堀の深さは2m。土塁も2m。堀の幅も2mとして考えるとそれなりの土が得られるが、それは、土塁の内側の段差に利用できるだろう。

広さはそんなに必要無いだろう。

緊急避難場所として考えると出口の設計はしなくて良いだろう、出る時は馬車の幅だけ搬入して、堀を埋めれば良いのだから。


「見事に囲まれましたね」

簡単な構造なので、最適化の効果はあまり感じられないが、四方が土塁によって囲まれた。

土塁の上に登ると、土塁の高さと堀の深さから、結構な高低差を感じる。

これならある程度のモンスターが押し寄せても食い止められるだろう。

とりあえず、これを繰り返して仮拠点まで戻れるだろう。

「ロイ様、焚き木はありますか?」

「ぐっ?!少しあったはず」

バックパックの中身を慌てて確認すると、防護柵に使用した木の端材が残っていた。

「これは、夕食分しか無いよね」

「朝は冷めてても良いですから、スープにしましょう!」


今日は、状態を安静には出来ないけど、バンと一緒に普通状態で寝ることになるな。

ちょっと緊張するが、今はこうするしか無いのだ。

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