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32 仮拠点堅牢化2

「おはようございます」

状態を変更する前にバンが自然覚醒してきた。

「お、早いね」

簡易日時計を確認すると、日の出から大体5時間経った位だろうか。

「最近よく眠れるんです」

それは状態を安静に変更しているからだ。

最近は寝起き前に状態を普通にしなくても自然覚醒してくる。

人間の睡眠時間は人それぞれだと思うが、自分たちの年齢からするともっと睡眠時間を確保した方が良いと思うが、状態を安静に変更出来る今なら、問題は少ないはずだ。

普通は状態を変更することなど、不可能なのだから。

「午後からは何をするんですか?また何か家を造るんですか?」

「いや、今日は城壁を組み上げるよ。いつまでも双璧に頼るより、しっかりとした城壁をね」

「城壁まで造れるんですか?!」

「一応ね。頭の中で城壁に城門も考えて、それをスキルで造る。今日はその瞬間を見られるよ」

昼食には早いが、先に建設を済ませてしまおう、どうせ数分で済むのだから。


「これが、開拓者のスキル何ですか」

建設には10分掛かった。

巨大構造物だもの、それ位の時間は仕方ない。

城壁の厚さは5m。

城壁上の幅は木製構造物により7mまで拡張されており、昇降機も2基ある。

昇降機は人間用と大型のバリスタなどが載せられそうなサイズの物で、どちらも片方に石材を積めば昇降するようになっており、2個の滑車でスムーズに動く様だ。

木製の螺旋階段に、降下用のポールが5m間隔で3本、段階的に素早く下に降りられる。

石材の階段も存在するが、これは殆ど木製構造物に隠れてしまっている。

長い階段を上るより、外格子と手すりのある螺旋階段で休み休み上る方が、安全だし楽だ。

万が一城壁に登られたら、焼き落とせと言うことだろう。

城門上部の監視小屋は木製では無い。カタパルトによる火炎弾の防御の為に変更された様だ。

城壁上の矢防壁は設計通りだが、壁を支える控え壁がいくつも並んでいる。

カタパルト名手が居たとしても、壁は少しずつしか壊せない様になっている。

今は未設置だが、バリスタでカタパルトを撃破してやれるし、双璧の残りの岩を上に持ってくれば、いくらでもリペアしてやろう。

城門上部の落石口は設計通りだが、落とす石材のサンプルがトゲトゲに加工された物だった。手運びするより、蹴り転がすことを想定してるのか?ちょっと多すぎない?


城門は木製だが、敢えて未乾燥を指定し、重厚な造りになっている。

城門は閉じられ、2本のかんぬきが掛かっている。

「ちょっと、高くて届きませんね」

まぁ、かんぬきを搬入してしまえば、問題無い。

しかし、城門横の城壁の一部に変な窪みがある。

窪みを引くと岩が動いた。

隠し通路か。

城壁の中は一本道だが、やたらと曲がり角が多く、壁伝いでも暗くて全く見えない。

仕方ないので、小さな枝木を搬出し、火起こしする。

あれ?ここさっきも通らなかったか?

あ、出れた、と思ったら、城壁内だった。

「戻って来ちゃいましたね」

「簡単な迷路にしちゃったみたい」

「自分でもルートが分からないと?」

「もう1回!」

やっとのことで出口の壁に到着すると、壁に文字が刻まれていた。


※再入場時の手順に従わなければ、通路は潰れる


壁を押すと岩扉が動き、外に出られた。

扉を閉めると、何か岩が落ちる音がした。

閉めると何か錠的な物が作動した様だ。

この付近の岩壁はツルツルでは無く、レンガ構造の模様になっている。

これで扉はどこか分からなくなる。

鑑定すれば隠し扉の場所も分かる。

複雑だが、解除手順も分かる。

いやはや、城門前は広大だ。

城壁の外側はレンガ風の造りに見える。

城門前通りは100m程踏み固められており、城門からは防護柵が組まれている。

防護柵は深く打ち込まれており、先端は綺麗に尖っていて、太さもある。

何せ、木そのものが加工されているのだ、破壊は困難だろう。

木が足りなかったからだろう、城壁近くの防護柵が薄い。

城壁、城門は完成だが、城壁外の防護柵が半分、と言った所だろうか。

それにしても、今回も最適解は凄かった。


午後は木材を仕入れることにしよう。

盆地の外側にはまだまだ沢山木が生えているが、伐採し過ぎるのも防衛上、良くないだろう。

しかし、向かいの森まではブラックホースで1時間。

往復で2時間。

どんなに軽くしても5tずつしか運べない。

それならば、盆地周辺の森を深く入って、空白地帯を作るか、どこにも通じない街道を作るか。

こっちの方が効率的だな。


「この辺りが、密集地帯だったよね」

事前に盆地上部から木々が密集する場所の検討を付けておいた。

よくよく観察してみたところ、この盆地周辺に広がる森はそう大きくは無かった。

空白地帯を作るのも、どこにも通じない街道を作るのも悪手に思えた。

ならば、見通しをよくするために木の密集地帯を複数見付けられたので、それを上手く間伐してやる方が良いだろう。

「じゃあ、バンくんは狩りをお願ね」

間伐をすると言っても、斧は使わず、バックパックに搬入する為、音は出ない。

よって野生動物が逃げることは無い。

まぁ、搬入した木に巣を作った鳥は騒ぐかもしれないが、狩りの邪魔になることは無いのだ。

明らかに日照不足で生育の悪い木や、逆に大きすぎて周りの木の妨げになっている大木を中心に搬入していく。

時折、雑草群生地で鑑定を使い、有用な草花をまるごと搬入する。

現状は、採取よりも仮拠点に移植した方が良いだろう。

と言うことで雑草以外は根こそぎ搬入し、腐葉土なども搬入する。

倒木した木は使い物にならないかと思ったが、キノコが生えていたので、これも栽培に向けて周辺一帯を搬入する。

密集地帯をある程度慣らしたら、目標としていた別の密集地帯へと向かう。

目印はバンに事前に矢にロープを繋ぎ、放ってもらったのを目印にしている。

この時に判明したのは、ラッシュは弓でも使えると言うことだ。

だが、弓を引く力が瞬間的に強くなるだけで、狙いを定める時間は殆ど無いと言うことだ。

普段使いせずに眠っている中弓を持ち出して矢に強引にロープを繋ぎ、放ってもらった。

まぁ、密集地帯の目安は大体で構わないので、精密射して貰う必要は無いからだ。

「ん?なんだこれ?」

歩いて移動していると、石を蹴飛ばしたと思ったら、何やら柔らかい物を蹴った感触がした。

手にしてみると、混じり物があるとはいえ、白い塊だった。

弾力があり、引きちぎるようなことは出来ない。


ゴム

ゴムの木の樹液が硬質化した物


んー。何かに使えないかなぁ。

この弾力感。

靴底とかにしたら、歩きやすくなるかな?

靴底の主流は木製の土台に低品質な野生動物やゴブリンの皮を何重にも重ねて作られている。

現状、ゴブリンの皮は廃棄品になっているが、このゴムなる物を使えないだろうか。

周囲を鑑定で見渡すと、ゴムの木は結構あった。

樹液をどうやって取り出すかの検証は後回しにして、とりあえず間伐程度に搬入しておこう。

「ロイ様~!イノシシを仕留めました!」

バンから声が掛かるので向かう。

鳥は仕留めてから血抜きがどうこう急がなくても良いが、大物はそうはいかないので、呼ぶように言っておいたのだ。

「おお?結構な大物だね」

体長2mはあろうイノシシは頭部一射で仕留められていた。

「あ、そろそろバックパックが一杯になるみたい。他に何か仕留めた?」

「珍しく角ウサギが居ました」

バンは角ウサギを見せてくる。

角ウサギは、野生動物では無く、一応モンスターだ。

非常に警戒心が高く、人間が近付くと基本的に逃げてしまう。

しかし、不意に遭遇してしまうと、角を活かした突進をしてくるので、意外と厄介だったりする。

食料としては普通の野ウサギと変わらないが、角は加工素材として使えるが、野ウサギより警戒心が高いため、苦労の割には益の少ないモンスターだったりする。

バンは他にも5羽程の鳥を仕留めており、脚をロープで縛り、肩に下げている。

中々の猟師振りである。

密集地帯は後5ヵ所程あるが、これは明日にした方が、良いだろう。


城門前に戻り、防護柵用に搬入した木を取り出し、残りの防護柵を建築する。

設計図上では未完成の部分が建築され、再度材料不足を指摘される。

頭の中の設計図上では、残り40%と分かるが、この大半が防護柵なので、木の補充だけで後はそう大したことは無い。

この分なら明日には完成させることが出来るだろう。

「さて、夕飯を作ろうか」

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