29 都市設計士
夕食の準備をしながら、バンに投げナイフを半分渡した。
投げナイフとしての活用ではなく、槍との融合を想定して話した。
概ね意見は同じだった。
槍と柔性素材を渡して縛って貰おう。
「それにしても変わった形の投げナイフですね。どうやって槍に縛り付けましょうか」
「投げナイフってそんなに形が無いの?」
「ロイ様、投げナイフなんですから、ナイフの形をしてないとおかしくありませんか?これ、持ち手の部分がに短くて小さくて」
鑑定上はちゃんと投げナイフなんだけどな、まぁ、投げナイフ何て知ってるだけで見たことが無い。
「特別な投げ方をするとか?」
「特別、とは?」
料理の手を止め、バンに近寄る。
「うーん。両刃のナイフで、柄を作るにはこの細い持ち手は小さすぎる気もするし」
特別な柄があった?
燃えた?
気付いた時点で1つ確保しておくべきだったか。
投げたことが無いので、転がした木に色々な投げ方ですべて投げてみる。
全然刺さらないし、虚しく弾かれる。
縛るにしても不安定になりそうだ。
鑑定上、投げナイフに分類されているが、燃える前は別の物だった?
有効活用方法が消えた。
分解した素材はごっちゃになると困るので、バックパックに入れたままだが、これは、馬車に置いておくか。10個とは言え、いくら容量が大きくとも無駄に圧迫したくない。
職業を兵器職人にでもしたら、何か閃くかもしれないが、現状は出来ないし、兵器を作るより、都市設計士を優先したい。
残念だ。
食事を終え、バンと交代で水浴びをする。
昼間に水浴びをした方が、良いのだろうが、池の水温は夜でも大して変わらない。
夜に水浴びをするのは、布団を汚したくないからだ。
布団を洗濯するのは苦労するだろう。
夏前の今なら、厚手の服を着ている訳でも無いので、夜に洗濯すれば、朝食後には大体乾く。
布団は2人掛かりでも絞るのも不十分で、生乾きで逆に臭くなるかもしれないから、本格的に何か考えた方が良いだろう。
石鹸、は作れないこともないのだが、油の問題がある。
現状油は無い。
いや、言ってしまえばあるにはあるのだが、あまり使いたくない。
イノシシの油脂がある。
でもこれは料理に使っているし、イノシシ石鹸はあまり使いたくない。
まぁ、これも最終手段かな。
「さて、バンくんごめんだけど今夜もお願いね」
「お任せください」
スキル名称:第3職業
スキル効果:第3職業枠を追加
発動代償 :持久0消費
発動代償 :MP0消費
創造代償 :持久500消費
創造代償 :MP250消費
消費CP :3000CP消費
ありゃ、第3ともなると、消費CPも増えるか。
でも、これ以上の代償はキツイし、本来存在しないことを実現させるスキルなのだし、そもそも創造と言うスキルなのだから、ここはこれでいくしかないか。
「ぐおっ?!やっぱりキツイ!!」
すぐに状態変更しなきゃ。
「昏睡」
「維持」
「普通」
またこれか!
普通普通普通普通普通普通!
「維持」
「安静」
安静安静安静安静安静安静!
これで、た、の……
意識消失。
「んぐ?」
起きたら、まだ夜が明けていない時間だった。
ステータスを確認すると、持久もMPも最大値まで回復していた。
「おぉ~、やっぱり自然回復は重要だな」
夜が明けようとしている。
着替えて馬車から降りると、バンが見当たらない。
竈周辺にもテントにもいない。
池?もいないし、双璧の上にもいない。
「ん?入口?」
双璧の入口付近に何かがいる。
バックパックを背負い、歩いて向かう。
盆地の入口にはバンが居た。
そして足元には5匹の狼、の死体。
「あ、ロイ様?早いですね?」
「どうしたのその狼」
「夜中に夜警鳥が飛び立ったので警戒していたら現れました。何匹かは仕留めたのですが、傷の浅い狼はここで脚を切りました。月明りなので、仲間を誘き寄せてここで仕留めていました」
警戒鳥には以前、足に解いたロープの細い紐を括り付け、板を2枚繋いでいた。
でも、警戒鳥自身があまり飛べなくなってしまうと言うことに気付き、野生動物の骨を代わりに付けていたのだ。これなら警戒鳥の負担も少なくなるからだ。
それにしても、月明りでもそんなに見えないだろうに。
「そろそろ、生肉も減ってたんだよねぇ。戻って解体しようか」
「お願いします」
竈に火起こしをして、朝食の準備をバンに任せる。
こっちはこっちで、第3職業を発現させておき、都市設計士を設定する。
補正は知力200だった。
まぁ、予想通りかな。
5匹の狼を解体し、素材をバックパックに入れる。
やはり、肉は脂身が少なかった。
夏前だからだろう、秋や冬前ならもっと脂身があってもおかしくないだろう。
やはり、脂身は料理に使おう。
どうにか、植物油を手に入れられないだろうか。
周辺にはその様な実になるものは自生していなかった。
石鹸は遠いな。
飼料と化しているトウモロコシの量も減ってきている。
主にブラックホースに与えているが、その辺りに自生した草も食べているし、多くは与えていないが、それでも適した食事を与えたいものだが、生憎、ほぼ自給自足を強いてしまっている。
腐葉土と土を混ぜた畑でも作るかな?
運よく、トウモロコシが発芽してくれればの話だが。
朝食を食べながら、都市設計士の能力を確認する。
頭の中にミラード開拓都市にあった建物、また、無かったが、他の様式の建築物が浮かんでくる。
個別に建築物を集中すると、設計図が頭の中に浮かび上がる。
平面図もあり、立面図も思い浮かぶし、立体的にも把握できる。
頭の中で、その設計図を編集も出来る。
「これは、高速思考が無いと、頭がパンクするな」
頭痛はしないが、考えていると頭が疲れる感じがする。
知力の影響を受けているのだろう。職業補正値もそうだが、基礎の知力が高くて助かる。
とりあえず、今何が必要か。
寝泊りできる家か、いや違う。
ここは仮拠点なのだから、馬小屋と馬車小屋だろう。
どちらも別の建築物だが、編集によって異なる建物の同時編集も出来る様だ。
設計するのは大変だが、どうせなら連結させて設計した方が良いだろう。
どちらも大きめに設計する。
馬小屋はブラックホースには広すぎるが、別の馬か、馬的な何かを隷属させられれば、同居して貰うためだ。
馬車小屋は整備性を高めるために大きくしたが、別に馬車を大型化するつもりは無い。
あくまでも整備性重視、車輪の間には溝を作り、馬車の下に潜り込んで見えにくい足回り、軸の確認が出来る様にしておく。
馬車小屋は必要だ。
野ざらしの状態では劣化してしまうだろうし、幌に関しては絶対に痛むからだ。
連結した一つの建物には明確な設計変更をした。
それは必要素材の削減だ。
強度が下がってしまう様にも思えるが、そこは敢えて造りを重厚にし、組み木で設計した。
釘を使わないためだ。
その元となる鉄はあるのだが、あまり使いたくないし、炉も無しに釘の加工は手間だからだ。
当然、組み木にすると釘は使わなくて済むが、木材の加工には非常に手間が掛かるだろう。
仮拠点だからこそ、しっかりとした造りにしておかなければ、立ち寄った時に倒壊していました、何て嫌だからだ。
「でも道具無いし、今は考えるだけなんだけどねぇー」
一度編集設計したものは、それとして保存記憶も出来る様なので、第2候補も考える。
今の2つの竈を見ると、明らかに野営規模だ。
一軒家の調理場を編集するか?
いやいや、家具も何も無いのに、一軒家を建てても意味が無いだろう。
炊事小屋かな?
今のままでは、雨が降れば火は消えるし、鍋に雨水が入る。
屋根付きで、それなりの石組み竈を作ろう。今の鍋が余裕で置ける大きさで、1つの火元で複数置けるようにしよう。竈で発生する煙の流れる排気煙突も作ろう。後は、何を追加しよう。洗い場もあった方が良いかな?洗い場は低くして、普通の高さに貯水槽を作って、そこから木製弁を作って流れ出る様にしよう。
うむうむ、楽しいな。
造れもしない物を設計するのは。
これぞ、夢想家だ!
「ロイ様、冷めますよ?」
どんどん考えよう!
炭焼き小屋も、その保管庫も、焼き小屋を作るなら、レンガ焼きの小屋も作りたいな、レンガの材料無いけど。後は鍛冶小屋だな。リペアで直せても新しく作るには鍛冶小屋が無ければ、炉の設計も出来るのか、高炉?何それ、でもそれも併設させよう。
えーと、他には何かないか?
あー、楽しいなー。
「ロイ様、それ、温め直しますね」
「あ、ごめん。何か考え事してたら手が止まっちゃったよ。あー、お腹空いた」
「でしょうね。じゃあ昼食にしましょう」
「え?朝食は?」
「これが朝食です。鍋に戻して温め直したら、それが昼食です」
え?




