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21/46

21 状態異常:睡眠

いやはや、今日の夕食は過去一かも知れない。

塩加減もいいし、具は大きくて食べ応えがあるし、肉も良い感じに柔らかくなっている。

くそぅ、パンが欲しい。

更に言えば、バターを塗りたい。

いや、チーズでも構わない。

ジャムでも構わない。

はっ?!無い物ねだりはダメだ!

欲しい物があれば、見付けるか作るかだ!

「ロイ様~。この食事は定番化しましょう。作るのは大変ですけど、朝食分どころか、昼食分にもなりますよ~。おかわりいいですか~」

バンは相当気に入ったみたいだ。

まぁ、ホブゴブリン戦の戦勝祝いとしてはしょぼい気もするが、気に入ってくれたならまぁ、いいか。

「それにしても、あの穴、燃やして大丈夫なんですか?」

「いやいや、あの悪臭の中に入りたくないからね」

「でも、本とかあったりしたら……」

「ゴブリンは本を読まないから」

「じゃあゴブリン語の本があったかもしれませんよ?」

「ゴブリンは識字文化が無いし、あったとしても僕が読めないから要らない」

「鎧とかあったら溶けちゃいません?」

「ゴブリンの着た鎧は着たくないし、あの程度の火で金属は溶けないよ」

「宝石とかもですか?」

「燃えも溶けもしないだろうね」

「じゃあ武器とかあっても回収できますね」

「そうだね、まぁ、ススが付いてるかもしれないけど」

「明日は穴の探索日ですね」

「バンくん、数日この盆地に滞在しようと思うんだけど、いい?」

「それはロイ様が決めることですから。それに僕はたまにゆっくりする日があっても良いと思いますので」

ちょっと嬉しかった。

滞在に同意してくれたことではなく、自分の希望に近い言葉を出したからだ。

出会ってからは、奴隷・買主の意識が強かったが、だんだん素が出てきてくれているからだ。

幸い、バンには奴隷紋が無い。父親は戦闘奴隷商館の奴隷で奴隷紋はあるが、祝福の儀前の子供には奴隷紋を付与しない。祝福の儀が済んだ奴隷は奴隷紋を付与される。バンは12歳で祝福の儀を受けていないので奴隷紋は無いのだ。

勿論、解放条件を満たせば、奴隷紋は解除される決まりになっている。

少なくともミラード開拓都市ではそうなっている。

バンとは部下、いや戦友、最低でも年上の友達として認識してもらいたい。

今のところは、部下と上司、かな?

まぁ、これからどうにかなるだろう。

でも、明日は結構大変になるかも知れないので、テントに行くバンに触れ、状態を安静に変えておく。

自分は普通のままにして、布団の上で、夢想家のCP獲得を目指して明日からのこと、その先について色々思案して過ごす。

明け方にはウトウト状態だ。

バンの寝るテントに近付き、状態を普通に変える。

「覚醒」にすると飛び起きてしまい、疲れるので、自然に起きて貰う。

フラつきながら、鎮火したゴブリンの焼却現場に向かうと、うっすらと煙が出ていて、鎮火していた。

柵の残骸で上部を叩くと、ガラガラと崩れ、灰が舞った。

灰が落ち着くと、ガラガラとした音の原因はゴブリンの骨だった。

「おぉ~、燃えたねぇ~」

ゴブリンの骨を横薙ぎに払い、高さを減らす。

中に木が挟まっていたからか、もしくはゴブリンにも脂肪があるのか、中層のゴブリンも骨になっていた。

更にゴブリンの骨を横薙ぎにした。

下の方は、生焼けだった。

「さすがに1回ではこの量は無理かー。2回に分けて正解だなー」

よく見ると、生焼けゴブリンはボロい革鎧を着ている。

ボロいし、汚いから要らないな。と思ったが、鎧に投げナイフが装着されていた。

どうせ溶けないし、最後に回収すればいいか。

隣の焼却現場も同様に崩したが、こっちも同じ状態だった。

せっせと柵の残骸を並べる。

「寝不足にはキツイな」

残骸は無くなり、2つの焼却現場には何とか均等に並べられた。

「火起こし、はい、こっちも火起こし」

燃え上がるのを見届けず、水樽から手鍋に水を汲み、水分補給をする。

「スープは、温かい方がいいよね~」

竈横に避けられスコップに乗ったままの燃えカスと残り炭を竈に投入し、追加で木を差し込む。

「火起こし」

竈に火が入る。

「ぐへっ!」

眠気のあまり、後ろに転んでしまう。

自身の状態を確認すると

「覚醒」

「維持」

「普通」

覚醒と普通の間って何だ?

自分を鑑定してみる。

状態:睡眠

あぁ、本で読んだことがあるな。状態異常って奴だ。毒とか麻痺とか、あったな。睡眠はそのまま寝ちゃうと結構な時間寝てしまうらしい。それに寝起きの倦怠感は結構キツイらしい。

「マズいな。これは良くない」

状態を覚醒に変え、更に興奮に変える。

「バンくん起きて!僕がかなり大変なことになってる!!」

とりあえず服を脱ぎ、全裸になって、池に飛び込む。

この池、意外と汚く無いな、まぁ飲むのは勇気いるけど。

頭を池に沈め、頭皮を猛烈に洗う!しまった!タオル持ってきてない!えぇぃままよ!全身を手で擦る。潜っては頭を洗う。

「ロイ様!どうしました!?」

バンがこっちに走ってきている。

「バンくん、拭くものと着替え持ってきて!着替えは何でもいいから!」

「は、はい!!」

バンは途中で切り返して馬車に向かう。

そのまま全身をくまなく手で擦り洗う。

バンが布を抱えて走ってくるのが見えたので、池から出て、身体を振って水気を飛ばす。

敢えて言おう、全裸である。

「どうぞ」

「ありがと」

布で猛烈に髪を揉みまくり、身体は適当に全身を拭く。

「えぇいクソ!」

下着までは良かったが、ズボンが逆だった。

上着は被るタイプだったのでミスは避けられた。

ボタンタイプだったら確実に掛け違えしてただろうな、ありがとうバン!

裸足だが、問答無用で竈へ向かう。

「何かあったんですか?」

「さっきまで、状態異常で倒れそうになったんだよ」

「状態異常ですか!?」

「あぁ、毒とか麻痺とかの一種で、睡眠になってね。今は無理矢理の興奮状態だよ。ごめん、スープよそってくれる?水汲んでくる」

興奮が冷静に変わるかもしれない。それは構わないのだが、興奮から一気に睡眠にまで変わってしまったら困るので、常に動いていないとマズい気がする。

手鍋に水を持って竈に戻り、よそってくれたスープにがっつく、具材が大きいのが幸いし、よく噛んで食べることになった。

「バンくんは午前中は自由時間ね。何しててもいいから。そしておかわり」

手鍋の水を煽る。

おかわりを平らげ、立ち上がる。

「バンくんはゆっくり朝食食べていいからね!?んで、午前中は自由時間!僕は寝る!!」

馬車によじ登りつつ、足裏の土を払う。

「うぉ?!」

急に身体に力が入らなくなる。

ゆっくりと敷布団を整え、横になる。

「覚醒」

「維持」

「普通」

普通に変える。

「維持」

「安静」

そりゃ、安静一択だろう。変えた瞬間、腕が落ちた。

「安静から睡眠に変わったりしないで、く、れよ……」

意識消失。


ガンッ!

ガンッ!

ギギギギギギ!

ズドーーン!

「んん、んぁ?」

遠い気がするけど、何の音だ?

寝床から起き上がって、馬車から飛び降りる。

「痛っ。あ、靴」

馬車に再びよじ登り、靴下を手に取る。

ゆっくり馬車から降り、竈近くに置いたままの靴のところまで行く。

地面に座り、足の土を払いつつ足先を靴下に突っ込み、靴を履く。

立ち上がると、バンが斧を持って走ってきた。

「昼食食べた?」

「まだ時間には早いですから。身体は大丈夫ですか?」

「うん、頭もスッキリしてるし、倦怠感も無いね」

「良かった~。早朝のロイ様明らかに不自然でしたから」

早朝、昼食にはまだ早い。

つまり5時間は寝ていたってことか。

時間的には少ないけど、長時間安眠出来た気分だ。

「心配かけてごめんね。でももう大丈夫。それにしても睡眠不足が続くと睡眠の状態異常になることが分かっただけ儲けものだなぁ。朝の処置は間違ってなかったってことか」

「あまり無理な実験とか検証はしないで下さいよ?」

「ハハハ、気を付けます。んで、バンくんは何してたの?何か凄い音してたけど」

「はい。どうやらラッシュのスキルを獲得したみたいで、木を切って試してました」

バンを鑑定してみる、全部は見にくいので部分鑑定。


職業 戦士6(12/60)

スキル

「ラッシュ」1(2/10)


おぉ!?確か、前が戦士2だったはずだから凄い急成長!

やっぱゴブリンとホブゴブリンの経験値がデカかったか。

よし、自分も見てみよう。


「……なるほどね」


あまり上がっていなかった。

創造1(8/10)

ただ、唯一ラッシュだけは2になっていた。

どうやら2になると持久消費が50~45にMP消費が4になっている。

ありがたいことに、威力は変わらないでくれた。

そして経験値増加は多分機能しているだろう。

でも何故、自分はあまり上がっていないのか!?


選択職業の数の多さとスキルの多さ!

それら全てに均等分配されたからだろう。

それでも

夢想家5(191/5000)

意外に考え事してたってことか。


「でもねバンくん、ラッシュは持久を消費する戦技だから、多用すると最悪立てなくなるから気を付けてね」

「分かりました。実は今結構疲れてます。確かにもう1回放ったら、多分そうなりますね」

「バンくんが万全の状態なら、安全を取って3回だね。戦闘では使い所を見極めてね。とりあえず休憩を兼ねて昼食にしよう」

竈に火起こしして鍋を温める。火の番を任せ、馬車周辺を見回る。

あ、テントの位置が変わってる。

馬車の頂点からタープが地面に向けて斜めに張られ、テントはそこに移動している。

馬車後方には高い位置からフックで長くロープが張られ、洗われた今朝の自分の服と、バンの服が干されている。何で加工したのか、洗濯物はハサミで止められている。

「ん?」

穴近くの消失現場の近くに何やら並んでいる。

「ロイ様~!温まりましたよ~!」

「ありがと~。そういや、穴入った?」

「はい。煙は抜けてたので、丁度朝日で光が差し込んでたので、松明無しでも見えましたから」

「臭かった?」

「臭いのは無いですね。煙突掃除をした時の感じでした。とりあえず布で顔を覆って、持ち出せるものは持ち出しておきました。樽とか木箱は燃えちゃってましたけど、中身は空でしたし、他に燃えたのは木製のテーブルとイスと食器みたいなのです。大きめの石造りのカウンターみたいなのがあって、その裏は燃えてなかったですね。でも熱くて回収できませんでした。その後は僕も池で水浴びと洗濯をしちゃいました」

「大変だったんじゃない?自由時間なのにごめんね」

「いいんですいいんです!調子乗って木を切ってましたし。あ、そうだ!穴の中に大きな宝箱がありましたよ!鍵も掛かってる感じでしたし、熱かったので放置してます」

「おぉ~、燃えない大きな宝箱!鍵付き!何か楽しみ!じゃあ昼食後は穴の中の再調査だね!」

「はい!」


燃えない大きな宝箱!鍵付き!何が入ってるのか楽しみ過ぎる!

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