表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/46

12 冒険の始まり

おはようございます、ロイ・ミラードです。

日が明ける位には街道に出ることが出来ました。

馬車の揺れも収まった頃、少年が御者台へ出て来た。

「変わります」

少年に御者を変わって貰う。

荷馬車に移り、前後の幌を捲り上げると、薄暗い馬車が明るくなった。

夜は閉めた方が寝やすいかな。

でも、夜警を考えると、開けた方がいいのかな?

まぁ、とりあえずそんなことはいい。

今は荷物の確認だ。

父上が用意してくれた物に、兄上が追加で用意してくれた物。

何がどれくらいあるかは把握しておいた方が良いだろう。

とりあえず、と最初に手押しの荷車を見る。

空だ。

だが、羊皮紙が一枚ある。

「これは、父上が言っていた地図か」

よく見てみるとこの地図は、南部地図だ。

父上は北へ向かえ、と言っていた。

でも手元にあるのはミラード開拓都市から南部までの地図だ。

北部は一切描かれていない。

「これはどうしたものか……いや、でも早めに見付けて正解かも知れない。今なら修正も出来る」

地図を持って御者台に戻る。

「あ、そういや、名前聞いてなかったね。僕はロイ。君は?」

「バンと申します。12歳です。あの、出立の際には、大変失礼いたしました」

「バン君ね。出立の時、何かあったっけ?」

「名乗りもせず、馬車に乗り込みました」

「いや、別に良いよ。どうせ兄上に言われたんでしょ?」

「そうなのですが、さっきまで本当に寝てしまっていました」

「それも別に気にしてないよ。じゃなくて!ごめんだけど、反転は出来る?」

星を見て、道に出てからは北へと馬を進めているが、反転して南へ向かわなければ。

「この道幅なら反転できます」

道の端に寄り、ゆっくりと回るように手綱を引く。

ゆっくりと回転し、道の反対側ギリギリで反転が完了する。

「ごめんだけど、現在地はここには載ってないけど、多分この道を進むと、この道になるから。とりあえずは、この大木を目指して進めてくれるかな」

御者台の横に板と金具を無理矢理ハサミとして使い、地図が飛ばないようにして置く。

「分からなくなったりしたら、声かけて。大木が見えても教えてね」

バンに御者を任せて、荷物確認に戻ることにしよう。


とりあえず、荷物を漁った結果。

食料系

燻製肉2樽

ワイン樽2樽

水樽1樽

製粉済みの小麦粉2袋

製粉済みのトウモロコシ粉2袋

未製粉トウモロコシ2袋

ジャガイモ1袋

たまねぎ1袋

干し肉1袋

水袋1つ


物資系

3人用野営テント3組

野営用タープ3枚

測れない長さのロープ3束

調理器具一式

食器一式

掛け毛布3枚

敷き毛布3枚


道具系

馬車修理工具一式

馬車修理交換部品一式

幌修理工具一式

幌修理部材一式

鉄のつるはし2本

鉄のスコップ2本

鉄のクワ2本

鉄の三又クワ2本

鉄の鎌2本

鉄のハンマー2本

鉄の斧2本

鉄ののこぎり2本

鉄の鉈2本


武器・防具系

長剣2本

短剣2本

採取解体ナイフ2本

槍2本

弓2張

10本矢筒5本

鉄板張りの盾2枚

全身革鎧一式

全身金属鎧一式


道具や武器武具の類は袋に入っていた。

この袋は魔法具だ。

通称アイテムバック。

見た目以上の容量があり、重量で上限が決まっている。

その上限を超えても物は入るが、超過分の重量は袋の重量になる。

入れ過ぎると、袋の破損に繋がる。

これは屋敷の宝物庫に収められていたものに違いない。

商人垂涎の逸品であり、非常に高価なもののはずだ。

それが2袋も。

それに水袋。

これも宝物庫で見た物だ。

飲んで量が減ると、時間経過で満杯になる魔法具だ。

水の心配は不要、と言うことだ。

父上も奮発してくれたものだ。

とりあえず、道具や武器武具はアイテムバックから取り出したままにし、食料系を袋に詰め替える。

アイテムバック内は時間経過が遅い、もしくは概念が存在しないとされている。

安いアイテムバックなら時間経過が遅い物とされており、高価なアイテムバックは時間概念が無いはずだが、手元のアイテムバックがどちらなのかは判別できない。

どちらにしろ食料の劣化防止にはなるので、詰め替えるのは正解だろう。

まだ、入りそうだが、武器防具の類はすぐに使えるように、出しておくことにしよう。

結構、軽量化できたのではないだろうか。

空きスペースも大分広がった。

これなら馬の負担も馬車への負荷も軽減できるだろう。

「よいしょっと。御者としての経験は訓練?」

「はい、基本操作は一通り習いました。ただ、荷を積んでの速駆けは苦手でして。あの、御者を変わってから、荷が軽くなった様に感じるのですが」

「ちょっと整頓したからね。あ、あれが地図に載ってるの大木かな?」

前方に大木が見えてきたので、あそこで休憩しようかな。

大木を目指してしばらく進むと、大木近くに何かがいるように見える。

「モンスター?いや、こんなところまで出てくることはないか」

「鹿、ではないでしょうか。ただの野生動物ではないかと」

馬車を止め、馬車から弓を取ってくる。

「弓の経験は?」

「兵の基本は弓からでしたので、それなりには」

予備としてだったのだろうが、その予備も今では2人で使用することが出来る。

今の風向きからすると向かい風。

臭いで気付かれる事は無いだろう。

この距離は訓練の中距離、と言った感じだ。

「2人同時なら、良い感じに当てられればラッキー、程度にやろうか」

「はい!」

御者台で立ち上がり、2人で弓を構え、狙いを定める。

息を合わせて矢を放つ。

バンの矢は頭部に命中する。

僕の矢は胴体下ギリギリに命中。

他の鹿は散っていく。

あえて言わせてもらうとすれば、

弓の鍛錬はそんなにして来なかった!

心の中で押し止める。

御者台に座り、大木まで速駆けで向かう。

大木の下には2本の矢が刺さり絶命した鹿がいた。

「これを食料にするのですか?」

「解体して昼食にしよう。余り物は保存食にしよう」

刺さった矢を抜き、回収する。

「すみません、解体部位の切り分けをしたことはあるのですが、解体そのものの経験はありません」

「大丈夫。僕も無いから。何事も挑戦だよ。僕が解体するから、竈と火起こしの準備をお願い出来る?」

解体をしたことは無いが、冒険譚の中に解体の描写があったので、やり方は知っている。

やったことは無いけど。

まずは腹を開き、ざっくりと内臓を取り出す。

本来ならこれで川に沈めて冷却するのだが、残念ながら川は無いので、これは飛ばすしかない。

前脚をロープで縛り、大木の枝に向かって反対側のロープを投げる。

吊るして血抜きを行いつつ、開いた腹の中を丁寧に内臓を切り取って行く。

足れる血を少し鍋に溜める。

血の滴りが少なくなってくると、皮剥ぎに移る。

骨、肉、皮の境目に注意してナイフを差し込む。

本の描写通りにやってみてはいるものの、さすがに上手くいかない。

剝ぎ取った皮には無駄に肉が付いている。

まぁ、皮を痛めていないだけマシかもしれない。

食べにくいあばら骨を中心の肉を食べることにしよう。

他の食べやすい部位の肉はアイテムバックに入れるとしよう。

「こんな感じになってしまいましたが、いかがでしょうか」

いつの間にか大き目の石竈が組みあがっていた。

脇には枯れ木等の細枝、枯れ葉が集められている。

幸い、あばら肉を焼くには、丁度いいサイズだ。

一本の枯れ木を砕き、揉み砕いた枯れ葉と混ぜる。

そこに火を起こし、小さい順に木を投入して、火を大きくする。

あばら肉は竈に丁度はまった。ちょっと火が近すぎる気もするが、よく見ていれば問題無いだろう。

血の鍋は竈に突っ込み、沸騰させる。

何でも、血には多くの栄養が含まれているが、病気の元になる毒素も含まれているらしいので、血は沸騰させてから、肉に掛けて焼くのが良いらしい。

後は樽から干し肉を2枚取り出し、あばら肉の上で干し肉同士を叩く。

干し肉に使われた岩塩の余剰分を振り掛けるのだ。

これで完成だが、熱すぎるので竈の火を長剣で叩き消す。

「バン。馬が食べている草をこれで刈り取って集めてくれる?」

「飼葉集めですね。分かりました」

敷布団下に敷けば、快適性も上がるし両得なはずだ。

まだ肉は熱々なので、竈の灰に埋めたままの長剣を取り出し、鹿の皮を慎重になめす。

何か台があれば、長剣ではなく、短剣でやるべきだったか。

なめし作業はなかなか難しかった。

本来は殺菌、防腐に塩を用いるのだろうが、塩は貴重で量も無いので、竈の灰を利用する。

吸湿と雑菌処理には灰も使えると本に書いてあった。

何も服や装備に使う訳では無いのだ。正式な手順を踏む必要はない。

それにここまでしておけば、後々物が揃い、準備が整えば正式な手順に移ることが出来る。

「バン~。そろそろ昼食にしようか」

「はい!これを束ねたらそちらに向かいます」

バンと2人で解体ナイフとフォークを使って、肉を削ぎながら食べる。

ガツガツとは食べられないが、なかなか美味い。

時間を掛けて昼食を取る。

肉の削がれたあばら骨は、内臓を捨てる為に掘った穴に一緒に放り込む。

竈を崩すのはもったいない気もするので、他の旅人が利用できるように残しておく。

旅人のルートでは無いかもしれないが、奇特な旅人が居るかもしれない。

燃え残りと灰を穴に入れ、掘り出した土を被せる。

埋めた、と言ってもしばらくすれば嗅覚の鋭い獣は気付くだろうし、獣によっては掘り返すかもしれない。まぁ、野ざらしよりはマシ、といったところだ。

血の入っていた鍋に水袋から水を入れる。

バンにも水袋を渡して水補給をさせておく。

鍋の水は馬に与える。

出した諸々の一式は馬車に積み込み、再び北へと馬を進める。

さて、距離的には今日はどこまで行けるだろうか。

暗くなる前に野営地を決めて設営しなければ、身動きが取れなくなることもある。

旅は計画的に。

でも時間はまだある。

今後を色々と思案しながら、馬車に揺られる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ