【第二部】第19話『結束する者達』(中編)
ダーナ神王国 《ヌアザ城外》 《庭園の広場》
20代前半の黒髪で凛々しい女性がマーベリック・シュトルムとカムロン・ライリーの争いを一喝して止めに入る
マルセラ・エンゲルマン「待ちな!二人共!マーベリック(須流徒)とリータ(禍津)の件なら既に決着はついてるはずだよ お前たちは何時まで引きづってるつもりだい!」
その姿を見た四人はみな驚いていた
ラーヴァナ「”荒覇吐のお婆様“…まさか『受肉者』になったのか…あれ程嫌がってたのに」
マルセラ・エンゲルマン「今回は流石に大事だからね クトゥルフの邪神共は《第一次神魔大戦》で『天臨者』達を殆ど全滅させた連中だよ アンタなら分かるよねエンリル?」
エンリル・ノーサ・ルドラ「その《第一次神魔大戦》で『天臨者』達を”皆殺し“にするよう命じたのは《前世》の俺だからな」
エンリルは自嘲気味に答えた そして他の連中はその事には一切触れなかった
フェイ・ロン「ところで”荒覇吐のお婆様“じゃなくて何と呼んだら良いのかな?」
フェイ・ロンがマルセラに聞く
マルセラ・エンゲルマン「マルセラ・エンゲルマンだ!これからお前達は”お婆様“とか呼ぶんじゃないよ!」
マルセラの迫力に圧倒されて皆が頷いた
マルセラ・エンゲルマン「それにマーベリックとリータ…アンタ達”兄妹“の事は皆が良く分かってるはずだ」
過去の回想へ 5000年前 《廃墟の街》《漁村》
荒覇吐が取り仕切る”最下層民の街“で仲の良い二人の兄妹がいた 兄の名は《須流徒》妹の名は《禍津》兄妹は漁師の家系で両親を病で失い”須流徒“が魚を取り生計を立てていた
須流徒「禍津!今日はこんなに魚が取れたぞ!」
禍津「凄いね お兄ちゃん!私も早く海に潜れる様になりたいなぁ」
その言葉を聞いた”須流徒“は”禍津“の頭を嬉しそうに撫でた
そして月日は流れ”禍津“は美しく成長した 海に潜り銛で魚を取り兄に見せる
須流徒「良くこんな”大物“を仕留めたな 俺より”禍津“の方が漁師の才能があるんじゃないのか?」
その言葉に”禍津“が感激した ”禍津“は誰よりも兄である”須流徒“が大好きだったからだ
やがて”須流徒“に恋人が出来た ”尾身“と言う美しい少女だった 二人は”仲むずましく その光景を見た”禍津“は”嫉妬“する様になる やがて”禍津“の美しさに男達が寄って来て”禍津“自身の性格も歪んでいった
”禍津“は取り巻きの男達に”尾身“を少しだけ
痛めつけるよう指示をしたが男達は”尾身“の美しい姿に欲情し暴行を行った
それが原因で”尾身“は崖にふらつきながら到着し最後にこう言い残した 尾身「須流徒さんサヨナラ…禍津ちゃんは何も悪くないわ 悪いのは全て私のせいだから…」そしてそのまま崖から身を投げた
次の日に”尾身“の遺体が上がりその姿を見た”須流徒“
は泣き叫び”荒覇吐“から譲って貰った『炎聖剣プロメテウス』を《虚空》から取り出し”禍津“の取り巻き連中の男達を全員斬り殺した それから”禍津“の所へ行き”禍津“の首筋へ『炎聖剣プロメテウス』を押し当てる
須流徒「何か言い残す事はないか…禍津?」
禍津「違うの兄さん…連中には少し尾身さんを痛めつけるよう言っただけなの…まさかこんな事になるなんて…」
”禍津“自身も今回の事態は予想外だった
須流徒「どの道同じ事だ…禍津」
”須流徒“は剣を振り上げて”禍津“を斬ろうとしたが脳裏に子供の頃の”禍津“の笑顔が“フラッシュバック“して
剣を振り下ろすのを止めた… そして”須流徒“は何処かへ無言で立ち去った
今回の事を重く見た街長である”荒覇吐“は二人を引き離し別々の所で暮らすよう手配した それから”兄妹“は全く会う事はなかった。




