第32話『セレモニー』
二週間後 ハイデルベルク城 《三国同盟式典の会場》
式典の会場には宗教国家ブランカやタリア共和国 他にも他国の重要人物達が顔を揃えていた
そして一番驚かれたのはサン・ライアット帝国の先帝レオン・サン・ライアットと『戦神』『雷神』と呼ばれ現皇帝ルインの兄であるカイゼル・サン・ライアットの姿だった
レオンが玉座に座り右側には現皇帝ルインが 左側にはカイゼルが立っている その姿は他を圧倒していた
ルイン・サン・ライアットの内心「父上が帰還した途端に反皇帝派の連中も顔を出して来たわ それに私の招集に応じ無かった一部の他国の王達まで来ている…これが大帝レオンの『権威』そして兄カイゼルの『力』なのか このサン・ライアット帝国を象徴する力と権威の前では私など…情けない物だな」
ルインは複雑な表情をしていた
カイゼ・サン・ライアット「やれやれ…あの件以来父上とルインは眼も合わそうともしない…仲直りするまで時間が掛かりそうだな…しかしこっちは立ってるだけで脇腹が痛いんだが…」
ゴッドフリーとの戦いで痛めた脇腹がまだ完全に完治しないまま立っているカイゼルの顔色は余り良くない
レオン・サン・ライアット「久しいな 皆 そして他国の方々よ この三国同盟成立の祝いの席 是非楽しんで下され」
レオンへ謁見する為 他国の王や反皇帝派だった者達が列を作って並んでいる
そしてカイゼルの姿を見てブランカの三神官長の一人デイジー・キャッシュは驚いていた
デイジー・キャッシュ「あの人って私のお父さんと同じ年齢のはずよね? どう見ても私達より少し年下ぐらいに見えるんだけど…」
フレッド・ハングラー「どうせクローン再生技術のおかげじゃ無いのか しかし死んだって聞いてたんだがな 何故今頃現れたんだ 伝説の『雷神』様はよ?」
フレッドは嫌味たらしく言い放つ
フレッド・ハングラー「しかし此処の料理は本当に美味いな 流石は世界一の大帝国って感じだぜ!」
フレッドは文句を言いながら祝いに振る舞われた料理を食べている その様子を見てデイジーは半分呆れていた
そしてカイゼルに大神官ガルダ・オリンが挨拶に行っていた
ガルダ・オリン「初めまして ブランカの大神官を務めるガルダ・オリンと申します カイゼル様の武勇は子供の頃から良く聞き及んでおります」
カイゼル・サン・ライアット「ブランカの大神官か…そう言えばお前の姉さんと会った事がある 確かに良く似てるな お前の名前は覚えておく そういや来てるんじゃ無いのか タリア共和国のお前の姉さんも」
ガルダはカイゼルの力量を見て
ガルダの内心「これが《最後のグランドマスター》か…この人 爺ちゃんと同じくらい強い…世の中本当に広いんだな…フェイにしても あの《最初のグランドマスター》と同じ名前の人も…」
そこへタリア共和国の第一軍団長ギルバート・クルスがカイゼルの前に現れた そして全権将軍補佐の
フェルセット・オリンの姿も
ギルバート・クルス「よう カイゼルの旦那 久しぶりだな あの惨敗の後に死ぬ程修練を積んだから また手合わせ願うぜ」
カイゼル・サン・ライアット「あの時のオッサンか…懐かしいな そういやユリウスの奴は欠席してるな まあ…あれだけやらかしたら当然か セレーズもあれから寝込んでいるからなぁ…」
黄金のティアラの件がまた新たな火種を生み出していた
そしてもう一人のブランカの神官長 フェイ・ロンはミリア・サン・ライアット皇女の方を見て何か懐かしさを感じていた
フェイの内心「あの娘『梵天』に良く似ている もしかしたら生まれ変わりかも知れない あの時は三人には申し訳ない事をした…」
フェイの何か少し浮かない様子を見てデイジーが
デイジー・キャッシュ「フェイどうしたの? あのお姫様の方ばかり見て…もしかしてフェイもガルダみたいにファンなの…あのお姫様の…」
デイジーは不機嫌そうな顔に それを察したフェイはデイジーにこう答える
フェイ・ロン「イヤ…別に ガルダの好きな お姫様がどんな子か気になっただけさ 後 知り合いによく似てた」
デイジー・キャッシュ「知り合いねぇ…まあ良いけどね」
デイジーは何か怪しんでいたがすぐに忘れた様だ
そしてカイゼルへの挨拶を済ませたガルダは姉であるフェルセットと数年ぶりの再会を果たしていた
ガルダ・オリン「姉さん 今まで連絡もせずにどうしたんだよ 爺ちゃんが色々心配してたのに…父さん母さんが亡くなった後に勝手にタリア共和国に向かうなんて」
ガルダは姉を問い詰めるが
フェルセット・オリン「・・・・私にはお爺ちゃんの双剣や速術は継承出来なかった それにね タリア共和国に来て新しい生き甲斐を見つけたの」
ガルダ・オリン「あの全権将軍ユリウス・マクシミアンの事かい 姉さんが幸せならそれで良いけど…たまには爺ちゃんの所へ顔を出してやりなよ」
フェルセットは無言で頷いた そしてセレモニーは閉幕を迎えようとしていた。




