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第三話

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 今、私が居る世界が現実の世界ではないって事だけは理解している。


 だって、胸の部分にぽっかりと大きな穴が空いているし、この穴を覗き込めば、向こう側は見えるわけだし、穴の内側の部分が抉れて内臓が見えているというわけでもなく、真っ黒な何かで加工されているみたいで、ツルツルピカピカになっているわけですよ。


 ここが、昔住んでいた街だっていうのも分かっている。

 この市営野球場は実際に存在しているし、何かのお祭りの時にこの野球場まで家族揃って遊びに来た事もあるもの。


 夢、とするならあまりにもリアルで、

「マジ、この世界は俺好みなんだけど、唯一女といい事ができないというのが残念な作りだよなぁ」

明らかに人相が悪い男たちが私の周囲を取り囲む。


「でも、触り放題だから、それはそれで良くない?俺、白間咲良のおっぱいは触る価値ありだと思ってるもん」

 髪の毛を真っ赤に染めた若い男が、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込んでくると、手を伸ばして私の胸を触ろうとしたので、

「やめてください!」

その手を叩きながら後に下がると、後から肩を掴まれた後に羽交締めにされた。


「夢って都合が良いよなぁ、女だって殴り放題だし」

 赤髪の男が私の顔を殴りつけた後に、私の胸を鷲掴みにする。

「やめてよ!やめて!」

 羽交締めのまま足を振り上げて蹴りを入れると、もう一人の男が私の髪を掴みながら、

「抵抗するだけ無駄だぞ?ここはまさに、夢の世界なんだからさ!」

と言いながらスカートの中に手を入れてこようとする。


 集まった四人の男は、みんな胸の穴の周りが真っ黒で、下卑た笑いを浮かべている。

 男たちからかなり離れた場所に女の人が四人も居るんだけど、手を繋ぎあって後を見ていて、こっちを見ようともしない。


「助けて!助けて!」


 ほとんどの人が野球場から出て行った後だし、残っていた人たちも、私を取り囲んだのが明らかにガラが悪い男たちだという事に気がついた様子で、慌てた様子で逃げて行ってしまう。


 耳を塞ぐようにして座り込む女の子たちの姿を見て、ああ、彼女たちもこの男たちに暴力を振るわれたのかもと理解する。


「うるさい!黙れ!」

「殺されたくないだろ?」

「俺たちの言うことを聞く方が利口な生き方だよ?」

「ここで最後まで出来ないのが残念だけど、後でお前の住所教えてよ、現実世界ではもっと良い思いしようぜ?」


 殴られ、芝生の上に押し付けられ、体を弄るように触られて、よく分からない男がキスで口を塞ごうとしてくる。

「やめてよ!本当にやめて!」


 虚しい叫び、誰も助けてくれやしない。

 そもそも、現実世界でだって誰も助けに来てくれなかったし。

 ファンのおじさんにあっさりと刺されたし、こいつら、私の自宅に来るつもり満々みたいだけど、そもそも私、おじさんのひと刺しで死んでいるんじゃないの?

 もー!本当になんなのこいつら!

 死後の世界にしても冗談きついんだけど!


「ガッ」


 本当、いやらしい顔でニヤニヤ笑いながら私に馬乗りになって唇を塞ごうとしてきた男が、異常な発声をした後に、男の頭が顔の近くに落ちてきて、一瞬、視界が男の髪の毛で埋め尽くされる。


「なっ!てめえ!」

「うわっ・・うわあああああああ!」

「やめろ!やめろ!」


 生ぬるい何かが胸の上に広がって、馬乗りして来た男の重みから解放される。

 今は夜で、仰向け状態の私の視界には、漆黒の空を明るく照らす野球場のライトが見えていた。


「ぎゃああああああああ!」

「やめて!やめて!本当にやめて!」

「あれぇ?自分たちはやめて〜!とか言われてもやめてないんだから、十分に理解していると思うけどぉ、俺だってお前らと同じようにやめないよ〜?」


 誰?誰?誰?

 誰か助けに来てくれたわけ?


「本当、自分の事は棚上げにして、助けてくれと懇願してくるのはどうかと思うよ〜?」


 どこか呑気な男の言葉と共に、私の頭の近くに何かが落ちてくる。

 空に向けていた視線を芝生の上へと移していくと、切断された男の手が自分のすぐ近くに落下している事に気がついた。


「ええ!嘘でしょう!」


 慌てて飛び起きた私は、もしもここが現実世界だったとしたら、確実に何かを漏らしていたのに違いない。



ここまでお読み頂きありがとうございます!

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