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かくれんぼ  4

「いやあああああああ!」

「って、どしたの!」


 みつき先輩が小箱を持ったままうろうろする。


「い、いつの間に……」


 ありさも顔色が変わっている。


「え、なに、なに? なんなの?」


 泣くようにして2人で先輩に説明をする。

 みつき先輩の顔色も白くなっている。


「それ、学校に相談した方がいいよ……ってか、それ、うちの学生?」


 言われてハッとする。

 大学という場所は比較的オープンで、外部からの人間も侵入しやすい環境ではある。同じ教室にいたからといって、学生だと決まったものでもない。


「学生課行ってきます……いこ」


 ありさに(うなが)され弱く(うなず)いた。


「それ、持ってくれない?」


 手にするのも気持ちが悪い小箱。

 見た目だけは美しく、知らない人なら心躍る小箱。


 ありさは、自分も気味悪そうに、それでも自分のものではないだけに少し安心したように小箱を持ってくれた。


「いこ」


 そうして2人で学生課に足を運んだ。




「うーん、それだけではねえ……本当に知ってる人ではないの?」


 学生課のしらかわ女史は今どき珍しい黒縁の眼鏡の縁を持ち上げると、疑わしそうにこちらを見た。


 ここは学生課。

 私とありさはそこの応接セットの長いソファに2人並んで座っている。


 学校側としてはそんなめんどくさいことではなく、単なる年頃の男女の色恋沙汰、個人の問題にしてしまいたいのが見え見えだった。


「本当です! この間初めて廊下で会ったんです」

「でもあちらはあなたのことを知ってるみたいだったんでしょ? お誕生日まで知っていてそんなものをプレゼントしてくれるなんて」

「本当です! 見たこともない人、だったと思います……」


 語尾が弱くなるのは自信がなくなってきたからだ。

 だってあんな特徴のない人、しかも下半分マスクでは、見ていても覚えてないと思う。


「うん? どうしたの? 何か心当たりがあった?」


 しらかわ女史はこちらの尻尾を掴んだ、と言わんばかりの視線を送ってきた。


「いえ、あまりに特徴がない人なので、会っても覚えてないかなと思ったんです」

「ふうん」


 まだ疑っているようだ。


「私、たまたまですけど入学式後のオリテンテーションからこの子と一緒だったんですよ。本当にたまたま隣の席になったので、よろしくって挨拶して、それから結構一緒にいますけど、あんな男、私も今まで見たことないです」

「そうなの? でもそれは学内で、でよね? 外でのこと、あなたにそこまで分かるかしら?」

「そう言われたら……」

 

 ありさがトーンダウンする。


 確かに学外で別れた後のことまでは他人のことに責任は持てない。

 ましてやお互いの住居は最寄り駅から左右に逆の方向だ、電車に乗った後のことは分からない。


「ほら」


 黒縁メガネの縁が意味ありげに光った。

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