かくれんぼ 20
その後、私とありさは2人でセキュリティのしっかりしたマンションの一室で同居することになった。
引っ越し費用、その他は「こうたり」家持ち。
家賃も、とてもそんな値段で借りられない値段、それで4年間暮らせることになった。
2人の実家にそのことを伝えたらとてもびっくりしたが、テレビに出ている有名人がにこやかに、
「いえ、ちょうど知人から、海外赴任の間、誰か身元がしっかりした人に留守番をお願いできないかという話がありまして。ええ、それでこのお嬢さん2人にお願いいたしました。留守をお願いするので管理費だけでという話です」
滔々とそんな嘘を両家の親に信じさせた。
テレビに出ている有名人というだけで信じてしまう親も親だが、まあこれは仕方ないのかも知れない。学校名入りの契約書、副理事長個人の署名、そんなものがそろった書類一式でつるっと信じてしまった。
もちろんその部屋の持ち主は「こうたり」家、資金も「こうたり」家持ちだ。
息子の不始末をもみ消すために、学校にもかなりの額を寄付したらしい。
お金さえあればそういうことできるのね、とありさは憤慨しながらも、それでもオートロック付きマンションで4年間の安住の地と引き換えで黙ることを約束した。
たった数日の恐怖だったが、それでも私の身には何かセンサーのようなものができてしまったようだ。
たとえば町中を歩く時、誰かがかくれんぼでもしているようにこっそりこちらを見ているのではないか、とふいに後ろを振り向いたりする。
「またやってるよ」
そう言いながらありさにもそんな癖がついたようだ。
「うん」
「しゃあないよね」
2人でそう言いながら、どこかから特徴がなくて覚えられない人間がじっと付いてきてるのではないか、そんな風に振り向くことがある。
「ありさがいてくれてよかった」
「うん、感謝してよね」
冗談めかしてそう言うが、もしも一人だったらどうしていただろうと思う。
怖いものが隠れているのは廃墟やいなかのお寺や、山の中のトンネルだけではない。
都会の真ん中に、ふいっと誰かが潜んでいる。
そうして私をじっと見ている、そんなこともあるのだ。
「ねえ、あれ……」
ありさがふいっとどこかを見た。
青いチェックの影がすうっとどこかに紛れてしまった。
「違うでしょ、日本にはいないって……」
数ヶ月の間気がつかなかったのだ。
今も、いないと思っているけど本当は……
「あの……」
後ろからふいに誰かに声をかけられた。
私とありさは振り向かず、一目散に駆け出した。
振り向かず、知らずにいたらそれで済む。
あの時もそうしていれば、知らずにいれば、心穏やかな日々が続いていたのかも知れない、そう思って。




