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顔合わせ

 廊下を突き当たると、お清様が立っておられた。前回は、宴席に参加するためお夕の方様としてお会いしたのだった。


 (でも、あの時にはお里であるとわかっておられたのね)


 「お清の方様、おはようございます。よろしくお願い致します」


 「お里、おはよう。しっかりと頼みますよ。そちらの侍女は?」 私が紹介しようとすると


 「菊之助様から命を受けました、お(すず)と申します。お里様に付き添わせて頂きますのでよろしくお願い致します」


 (お(すず)? まあ、今は口を挟まない方が良さそうだわ。おりんさんも、こっちをみてニヤッと笑っておられるし・・・)


 「そうですか。よろしくお願いしますよ。では、部屋を案内するのでついてきなさい」 そう言って、お清様が部屋へ案内してくださった。お夕の方様のお部屋ほど大きくはないけれど、充分な広さの部屋だった。


 「ここで、二人で寝泊まりをしてもらいます。荷物は、昨日のうちに運んであるみたいなので確認しておきなさい。今から1時間後に奥の広座敷にて顔合わせをした後、話をしますので用意しておきなさい」


 「はい。わかりました」 そう言って、頭を下げるとお清様は部屋を出て行かれた。私は、おりんさんと二人きりになると少し大きく息をした。やはり、緊張していたようだった。


 「お里様、そんなに緊張されていては体がもちませんよ」 そう言っておりんさんが笑われた。


 「はい。あっ それはそうとお(すず)さんって?」


 「それですね。上様の隠密である私たちは、本当の名前は出来るだけ隠しておかなければならないので・・・上様の命ですが、菊之助様の命ということにしてあるのもそのためです」


 「そうですか。それでは、私もお鈴さんと呼ばなければならないですね」


 「いえ、お里様、お鈴ですよ。決してさんなど付けてはいけません」


 「あっ そうですね・・・努力します・・・」 そう言うと、お鈴ことおりんさんは楽しそうに笑われた。その後は、上様が用意をしてくださった着物や小物を整理しながら時間を過ごした。時間になり、広座敷に行くと1番に着いたようだった。やはり、身分的に一番下でもあるので、早めに来たのだけど・・・

 部屋を見渡し、一番下座に座ることにした。その後ろにお鈴さんが座った。それと同時に、一人の綺麗な女性が入って来られた。目が合ったので、手を付いて頭を下げたけど、どうやら無視をされたらしい。


 (そうよね・・・全員がライバルだものね)

 

 その方は、4つ並んでいる席の1番上座に座られた。その後ろに、見ただけでわかるとても気の弱そうな侍女さんが控えておられた。残りのお二方も来られそれぞれ席に着かれた頃、お清様が入ってこられた。みな、手を付いて頭を下げた。


 「ご苦労様。これから、あなた方4人にはご側室見習いとして2週間過ごしてもらいます。御中臈の3人は、大体どのようなことかわかっているとは思いますが・・・御膳所から来ているお里は初めてのことも多いと思うので、他の3人を手本として過ごしなさい」 私の方を見て言われたお清様と同時に、他の3人さんの目がこちらを見た。


 「はい。わかりました」


 (視線だけで、萎縮してしまいそうだわ)


 「それではそれぞれ自己紹介をしていきなさい」 と言って、一番お清様に近いところに座られている方から話された。

 一番上座に座られていた方はお(たき)様で、次に座られていた方がお(あつ)様、私の隣に座られていた方がお雪様ということだった。3人とも、上様や御台所様付きのお世話役をされているらしい。

私も例にならって挨拶をした。


 「お里と申します。現在は、御膳所で働きながらお夕の方様の雑用係をさせて頂いております。習わしなど、わからないことばかりですがよろしくお願い致します」 そう言って頭を下げた。


 「お里様は、お夕の方様のご推薦とお伺いしておりますが?」 お滝様が質問された。


 「はい。そうでございます」


 「でも、一度お手付きの機会を頂いたのにお役に立てなかったのでしょう? なのに、再び見習いになんてねえ」 少し笑いながら、お滝様が続けられた。


 「はい。お夕の方様にご迷惑をおかけしないよう勉強したいと思っております」 私は、気にすることなく答えた。その答えが面白くなかったのかお滝様はフンッと鼻で笑われた。その横で、お敦様もお雪様もクスクス笑っておられた。

 黙って話を聞いておられたお清様が、「明日から、ご側室の皆様と同じように朝の総触れから参加してもらいます。8時半には御鈴廊下へ来るように! よろしいですね?」 と言われた。


 「はい」と言って4人は頭を下げた。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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