上様と菊之助様
上様がお部屋を出て行かれた後の様子を追加しました。
菊之助が戻ってくるのを、上様は待ち構えていた。
「菊之助、遅かったではないか。お里と二人で何を話していたのだ?」
「別に・・・何も・・・」
「お里は、何か言っておったか?」
「もう一度、お話されるなら上様をお呼びしますが・・・と言ったのですが」
「で? なんと?」
「会わなくてもいいとのことでした」
「えっ? それは本当か?」
「はい。そう言われました」
「お里は、怒っておるのか?」
「それは、私にはわかりません」
「わからぬのなら、聞いてこい!」
「上様がご自分で部屋を出て行かれたのでしょう?」
「・・・だったら、今からもう一度奥へ行く!」
「お里殿は、もう御膳所へ戻られました」
「じゃあ、私はこのまま一週間以上お里には会えぬのか?」
「そうなりますね」
「菊之助! 何とかいたせ!」
「上様が子供みたいに拗ねられるからでございます。どうせ、拗ねるところを見せれば、お里殿が同行されるとでも、思ったのでしょう?」
「・・・」
「お里殿は、色々考えてご決断されたのです。そういうところを、上様は大切にされているのではありませんか? なのに、ろくに話も聞かず、子供みたいに・・・」
「菊之助・・・もういい・・・わかった」
肩を落とされて歩く上様をみて、「やれやれ」とぼやかずにはいられない菊之助でした。
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