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返事

部屋に戻ると、とりあえずおりんさんに座って頂き、お茶を淹れることにした。おりんさんは私がやると言われたけれど、菊之助様に怒られますと言って座っていてもらうことにした。お茶を淹れ始めている時に上様がお部屋に戻られた。


「あら、上様、こんな時間にどうされました?」


「いや、お里が心配でな」 上様はそうおっしゃると席に着かれた。


「まったく・・・仕事も手に付かれないようで・・・」 その後ろから菊之助様が困ったようなお顔をされて入ってこられた。私は、皆さんの分お茶を淹れた。


「それで、どうだった?」 上様は早速尋ねられた。


「はい、良い報告でございますよ」 私が笑顔で言うと、上様はホッとしたお顔をされた。私はお仲様がお城を出られてからのお話をした。すると、皆さん口を挟まず最後まで話を聞いてくださった。話終わると、全員がお茶を一口飲んだ。


「そうか、お仲は幸せになっているのだな」 上様は微笑んでそうおっしゃった。


「本当に良かったですね」 おりんさんも嬉しそうに言われた。


「お話されているお仲様はとても幸せそうでした」 私はお仲様の幸せそうな顔を思い出しながら言った。


「それだけを報告しに来たのか?」 上様がそうおっしゃったので、私はその話の続きをした。話を聞き終わった上様は、しばらく考えられていたようだった。


「それではお里が大変なのではないか? おりんの髪飾りも時間がかかったであろう?」 上様は私の心配をしてくださっていたようだった。


「あれは、おりんさんに内密にしていたので作業の時間があまりなかったこともありますし、おりんさんのことを思いながら何度も作り直したものですから」 私がそう言うとおりんさんが「申し訳ございません」 と言われた。


「そういう意味ではございませんよ。作っているとき、私は本当に楽しかったのですから・・・謝らないでくださいね」 私はおりんさんの手を取って言った。おりんさんはクスッと笑われてから頷かれた。


「こらこらおりん、お里殿に気を使わせるな」 菊之助様が私の様子をみておっしゃった。


「はい・・・」 おりんさんはシュンとされた。


「それでお里はそれをしたいと思っているのか?」 上様が尋ねられた。


「はい、お仲様のお役に立てるのであれば・・・」 


「そうか・・・わかった。お清と御台所には私から話しておく」


「ありがとうございます。お仲様も喜んでくださると思います。それで、お仲様への報告ですが・・・」


「ああ おりんに行ってもらうには何かあっては困るからな。おぎんに頼むとするか。どちらにしても、また組紐を仕入れてもらわねばならないだろ?」


「はい お願い致します」 私はそう言ったあと、おりんさんの方を見た。案じていた通り、少し落ち込んだお顔をされていた。


「おりんさん?」 私はおりんさんに声をかけた。


「お里様、お役に立てず申し訳ございません」 おりんさんはいつもと正反対の元気のない声で言われた。


「役に立たないなんて言わないでください。ここで作業をする間、おりんさんには手伝って頂きますからね」 私は元気付けようと、少し声を大きくして言った。


「私にも手伝わせて頂けるのですか?」 おりんさんは少し笑顔になられた。


「はい、お願いできますか? でも、疲れたときは休んでくださいね」 


「もちろんでございます」 おぎんさんはすっかり元気になられたようだった。その様子を横で見ておられた菊之助様はやれやれというお顔をされ上様と目を合わせておられた。


「それで、上様? もう一度お仲様とどのようなものがいいかお話合いをしたいと思うのですが、おぎんさんと一緒に私も行ってもよろしいですか?」


 「なに? 町に行くのか?」 上様は驚いた声を出された。


 「たしかに・・・城でお会いされるには、少し面倒でございますね。何度もとなると・・・」 菊之助様がおっしゃった。


 「んー だが・・・」 上様は納得しかねるというお顔をされていた。


 「上様が反対されるなら、おぎんさんお一人で行って頂きます」 私はこれ以上上様を困らせるつもりはなかった。


 「いや、わかった。お里も城の中だけにいるより、少し外に出た方が気分転換にもなる。少しだけでも町に出るのもいいかもしれないな。ただ、必ずあったことは教えてくれるな」 上様は微笑んでそうおっしゃった。


 「はい、ありがとうございます」 


 3日後、おぎんさんがお部屋へ来てくれた。おりんさんも朝から私と一緒におられた。


 「おりん、体調はどう?」 おぎんさんは尋ねられた。


 「はい、今は食欲が旺盛で困っています」 おりんさんはそう言ってお腹をさすられた。


 「菊之助様のことは聞いておりますよ。とても過保護だとか・・・まったく、私はおりんの今の時期には諜報活動で野良仕事をしていましたよ。そんなに甘やかしては逞しい子なんて育たないわ」 おぎんさんがそう言われたので、私はどこかで聞いたことがあると思いおりんさんを見た。おりんさんも同じことを思っていたらしく、私たちは笑いあった。


 「なんですか?」 おぎんさんは急に笑い出したので何事だ?という顔をされた。


 「いえ、全く同じことをお清様が先日菊之助様におっしゃられたので・・・その後菊之助様も少し反省されていたみたいです」 私がまだ笑いながら言うと、おぎんさんはフフフと笑われてもう一度おりんさんを見られた。


 「でも、旦那様が無理をしないようにとおっしゃっているのなら、あなたはそれに従いなさい」 と優しくおりんさんに言われた。おりんさんも「はい」と返事をされた。


 「それではお里様、まいりましょうか? 地図を先に頂いているので、大体の場所はわかっておりますので」 おぎんさんは立ち上がって言われた。


 「はい、よろしくお願いいたします。それでは、おりんさん行ってまいりますね」 私はおりんさんに挨拶をしておぎんさんの後について行った。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

急に寒くなりましたが、皆様体調を崩されませんように・・・

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