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着替え

 次の日目が覚めると、上様は私をしっかりと抱き締めていてくださった。私は上様の寝顔を見て、頬に触れた。上様は、「うんん・・・」と言いながらゆっくり目を覚まされた。そして、私を確認すると笑顔になられ


 「お里、おはよう。よく眠れた・・・」 とおっしゃった。


 「上様、おはようございます。少し寝坊をしてしまったようです。起きてご用意をいたしましょう」 


 「ああ」 そう言って上様は大きく伸びをされた。私は起き上がり、廊下を出ると朝の御膳が置いてあった。


 (きっと、おりんさんが気を使って起こさずに置いていってくださったのだわ)


 「上様、先にお着替えをされますか?」 


 「そうだな」 そう言ってようやく布団から出てこられた。私は、お着物を取りに行き、着替えをさせていただいた。着替え終わると、上様はお席に着かれた。私も自分の部屋に戻り、とりあえず着替えをしようと思った。すると、上様が後ろからついてこられた。


 「上様、私も着替えましたらすぐにお食事の準備をさせて頂きますね」 と言うと、上様はニッコリと笑われた。


 「ああ わかっている。お里は先に着替えをするのだろう?」


 「はい、おりんさんかおぎんさんが来られる前にまずは簡単なお着物に着替えさせて頂きます」


 「それでは2度手間だろう?」


 「はい・・・ですが、寝間着のままではさすがに・・・」 と私は困ったまま言った。


 「だから、私が着替えさせてやる」 上様は微笑まれたままおっしゃった。


 「上様、でも・・・」


 「いいからいいから、とりあえず寝間着を脱いでお里ができるところまで自分でやりなさい。全て私がやってもいいが、それではお里が恥ずかしいと言って困るだろう?」 ニヤっと笑われた。


 「はい・・・では・・・」 戸惑いながら、従うことにした。


 (初めからお着替えをなんて・・・恥ずかしすぎる)


 私は肌襦袢と長襦袢まで自分で着替えた。そして、上様を見た。


 「上様、これでよろしいですか?」 


 「ああ、それでは私の出番だな。お里が着替えている間に今日の着物を選んでおいたからな」 そう言って、着物を一式揃えておられた。


 「あの・・・上様?」


 「ん?」 返事をされている間にも、私の近くに来られ着物を肩にかけられた。


 「よし、やっぱりこれが似合う」 と言って袖を通すように促された。私もそれに従った。しばらく、上様は私の周りをあっちにいったり、こっちにいったりされながら、たまに「苦しくないか?」 と聞いてくださった。


 「よし、出来た」 上様は1度私から少し離れられた。


 「うん、我ながら上手く出来た。どうだ? お里」 ととても嬉しそうに笑われた。


 「はい、上様。いつもと変わりない出来映えです」 私は自分の姿をみて驚いた。


 「あとは、出る前に上掛けを羽織るだけだ」


 「上様? いつの間に?」


 「私もおぎんに暇があれば着付けを習っていたのだ」 とドヤ顔で言われた。


 「本当に上様は器用でございますね」 私も上様に笑いかけた。


 「ああ そうだろう? お里には何でもしてやりたい。それに新しいことを習うのは、なかなか楽しいものだからな」


 「ありがとうございます」 私は上様のお気持ちが嬉しかった。


 「では、食事にしようか」 そう言いながら上様は食事の席に着かれた。私も着せてくださった着物の上からたすき掛けをして食事の準備をした。二人きりで食事を済ませ、落ち着いた頃に菊之助様とおりんさんが来られた。


 「おはようございます」


 「おはようございます。 菊之助様、おりんさん」 私はお二人に挨拶をした。


 「あら? お里様、もうお着替えですか?」 おりんさんが不思議そうなお顔で私を見られた。


 「はい、上様にお着替えをお手伝い頂きました」


 「上様が?」 おりんさんは驚かれていたが、菊之助様はその横でクスッと笑われた。


 「おぎんさんに、習われていらっしゃったみたいで・・・」


 「そうなんですか? とてもお上手です」 おりんさんは驚かれたように、私の周りを回って着付けを確認しながら言われた。


 「だろ? だから、私がここで寝る日はこの時間にくればよい。それまでは、お里と二人で過ごす」 と上様がおっしゃった。


 「それが狙いでしたか・・・私は少し寂しいです。上様にお仕事を取られた気分でございます」 とおりんさんが少し拗ねたようにおっしゃった。すると、横から「おりん!」 とたしなめるように菊之助様がおっしゃった。おりんさんは、菊之助様のお顔を見られてから「申し訳ございません」と納得のいかない顔で頭を下げられた。


 「まあ よい。おりんにも変わらず、お里と過ごしてもらわねばならない。時間が空いた時には用事がなくても、一人で過ごすお里の相手をしてやってくれ」 私たちは顔を合わせて笑いあってから、上様の方に向き直り「ありがとうございます」と揃って頭を下げた。


 「ああ それでは、そろそろ総触れに向かおうか」 満足そうに微笑まれてから、上様は立ち上がられた。


 「いってらっしゃいませ」 私は上様に向かってもう一度頭を下げた。


 「ああ またあとでな」 上様は笑顔のままそうおっしゃった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

寒くなってきましたね。皆様、体調には気を付けてください。

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