────意識、現実────
「むにゃ、むにゃ…………ぐぅ」
「起きて、兄さん」
何だ? この俺様を揺さぶるものは。今まで経験したことのない優しさだぞ?
「ねぇ、翔=ショウ兄さん!」
なんか名前呼ばれた気がしたんで、目が開けられた。
「あ、兄さんおはよう」
「……ほうぁい?」
「? 朝から英語なんて凄いね。尊敬しちゃうよ」
「いやいやいや、貴女どちらさま? 俺に妹なんていらっしゃったのかしら」
「あれ……違った? じゃあ――翔君、おはよう、てへへ」
ふむ情況を整理しようか。なんだか俺を起こした女の子は、どうやら妹キャラを演じていたらしい。それから何だろう、幼なじみキャラを作ったのか?
「てへへ、じゃねえよ。あんた何もんだよ?」
ちょっときつめに俺が言うと、少し悲しそうだった。
「翔君、私のこと嫌い?」
「嫌いとか、そういうこと以前に俺はあんたのことを知らん」
「そっか、う~ん。簡単に説明すると、翔君のことが好きです!」
うほ、なんか告白されたんですけど……。まぁ可愛いので許可する。
「許可する……じゃねえって俺。まぁとりあえず名前は?」
「名前か、う~ん、翔君が好きに付けて良いよ?」
こいつは何を言っているんだ? テラ意味不。
「はぁ、穴の次はこれか。よう分からん夢だ。うん寝ようお休み」
夢の中でふて寝することに決めた。
「いや、学校行こうよ。お母様に怒られるよ?」
なんか言ってるけど無視します。
「むぅ、ねぇ翔君。無視しないでよ」
泣きそうな声で俺の肩をゆさゆさとしてくるんだけど…………っち。
「わぁったよ。とりあえず起きてやる。で、一応おかしな点をあげてやる。俺は今フリーターなの!」
そうだ、高校を卒業して何もやりたいことがなくて、ただ生きるために金を適度に稼ぐ、そんな暮らしをしているはずだ。
特に面白味もないが、変わらないいつも通りを普通に過ごすのが日常だった。
「……いいえ、翔君は私と一緒に高校生の一年生なんです。夢でも見ていたんじゃないですか?」
夢だと。それは今見ているんだ。
「あぁ、めんどくせぇなぁ。もぅいいよ。じゃああんたの言うとおり俺は高校一年生ですよ」
「納得してくれたのかな? 良かったぁ」
胸に手を当てて、心底ほっとしてる素振りを見せてきた。
まぁ悪い奴には見えないか。
「で名前は……、あぁ俺が決めるんだっけ? そうだな明=アキラでいいか?」
「うん、私は明だよ。へへ。翔君はどう呼ばれたい?」
呼ばれ方ねぇ、今までは呼び捨てやら君付けが大半だったからな。特に無いけど、兄さんは、こう胸に来るものがあったな。……先輩も悪くないな、さてどう呼ばせるかな。
「何でもいいのか?」
「うん。翔君が望むならご主人様でも、弟君でも、兄上でも良いよ」
なかなかに魅力的な提案ジャマイカ。ふぅん、折角だからなこの夢でも楽しむとするか。
「ならば、お兄ちゃんと呼べ!」
「分かったよ、翔お兄ちゃん」
ふぅぅん、マンダム。良き響きだ。妹、萌だな。さすが俺様良い夢だ。
「でだ明、設定はお前が義理の妹で俺が義理の兄でお~け~?」
「うん、いいよ」
「さらに明はお兄ちゃんが大好き」
「うん、大好きだよ」
「俺の言うことは絶対聞く」
「あんまりエッチじゃなければ……」
おいおい、頬染めながらそんなに視線を泳がせて。悪くないな。
「よし、ならば行くぞ明。俺たちのラブラブっぷりを周囲に見せつけようではないか!」
「分かったよ。お兄ちゃん」
てな訳で義理の妹の明が出来た。うひょ、良いセンス。
服を着替えて外に出る事にした。もちろん見せつけると言ったのだから、俺の右腕には明の未熟な果実をくっつけた。
ふむ、柔らかい。けしからんねぇ、実にけしからんよ。だがそれがイイ!
周囲を見渡してみる。皆さん俺と明を凝視しているようだった。
う~ん注目の的っていいね。まさに時の人。時代の最先端だね。違うか。
冬の空気に触れながら並木道を二人で歩いた。
どうしてだか明の温もりは、何者にも代え難い、そう感じたのだ。
ずっと側に置いておきたいと、夢だと思いつつも願わずにはいられなかった。
生まれてこの方、年齢イコール彼女いない歴だったからなのか。
在る種この夢は俺の願望を投影した物なのかもしれない。




