4.ジャン・アッカー宅
この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
イジメや、虐待をイメージさせる表現があります。不快に思われる方は読むことをお勧めしません。
加護の儀式から3年が過ぎた
身元不明の赤ん坊を引き取ったのは宰相であるジャン・アッカーであった
ジャンは赤ん坊にルナと名付けた
ルナを養子に迎えたが、ジャンには妻との間に2人の子供がいる。13歳の男の子のダン、7歳の女の子のロージーだ
ジャンは妻に本当の事は告げず訳ありで知り合いの子を養子に迎えると説明した
妻は内心納得しておらずジャンの愛人の子だと思い込みルナを憎んでいた
母が嫌っているルナを娘のロージーも嫌っていた。父親がいない時は小さなルナに辛く当たっていた
「お行儀の悪いあなたに食べさせるお食事はありません!」
ロージーが母親に有る事無い事を言い、ルナは見に覚えの無いことで叱られていた
ロージーの新しいドレスに泥がついていた。真実は庭で遊んでいて自分で勝手に転んで汚したのだが、母に叱られると思ったロージーはルナに汚されたと言いつけたのだ
新しいドレスを汚した罰として、自室に外から鍵をかけられ閉じ込めらた。さらに夕飯ぬき
しかし、こんなことはざらにあった
そんな時決まって侍女のマリーゴールドがクッキーやパンを内緒で持ってきてくれる
コンコン …
「マリーです。奥様の言いつけを守っているか確認に参りました。中に入りますね。」
カチャカチャ…ガチャン
外鍵を外して部屋に侍女のマリーゴールドが入ってきた
部屋の中には小さな少女が読むには似合わない分厚い本を読んでいるルナがいた
ルナはミルクティーに桜をブレンドしたような美しい髪色をしており、毛先に行くほど桜色が濃いグラデーションになっているふわふわサラサラのボブショートだ
雪のように白い肌 エメラルドグリーンのクリクリの瞳がとても愛らしい
「お嬢様、何をそんなに熱心に読まれているのですか?」
『マリー!?ごめんなしゃい!本に集中ちてしまって気づきませんでちたわ』
ルナはまだ少し舌ったらずであったが、普段から必死にレディになるための努力を怠らない。もちろん滑舌も練習中だ。
そんなルナの事がマリーゴールドは可愛くて仕方がないのだ
マリーゴールドは身分は違うもののルナを本当の妹のように思っていた
『書庫でこの本をみつけまちたの。加護の儀式のことや魔力について書かれていてついつい読み入ってしまいまちたわ』
ルナは3歳にしてすでに文字の読み書きができる。分からない言葉があればすぐに辞書を引くためマーリンの辞書は使い込まれた感がある
「本当にルナ様は3歳とは思えませんね。もっと子供らしくしてくださいませ」
聞く人によっては悪口に聞こえるだろうが、マリーゴールドの表情は優しく慈愛にあふれている。もっと甘えたりワガママを言ってもいいのだという意味を込めているのだが、ルナ本人は母や姉に認めてもらうには兄や姉以上の努力が必要なんだと、甘えるなんてありえないと思っていた
マリーゴールドは現在14歳である。11歳のときに両親を亡くしており身寄りがいない。マリーの両親は王都に薬を造っては卸していたこともあり顔見知りであったジャンの好意でここで侍女として住み込みで働いているのだ
マリーは自分が長居をするとルナが奥様に叱られてしまうことが分かっているため、そっとクッキーを渡し部屋を出た
部屋の外にでると丁度ルナの兄にあたるダンが歩いて来た
「ルナはまた母上の怒りをかったのか?」
「はい、ロージー様のお召し物を汚されてしまいまして…」
「母上もロージーもルナはまだ3歳だということを忘れているんだ…まだまだ手のかかる時期だというのにルナは手がかかるどころかしっかりし過ぎだからな」
「ダン様はルナ様にとって優しく素敵なお兄様であり、良き理解者でいらっしゃいますね」
「マリー、僕を褒めても母上の罰からルナは助けてあげられないんだ。だからそんなに褒めないでくれないか」
ダンは少し困ったように微笑み、ルナに遠くからおやすみと声をかけて自室に戻って行った
ダンを見送るとマリーゴールドはまたルナの部屋の重い外鍵をかけたのだった
ガチャガチャ………ガッチャン
この瞬間はいつもマリーゴールドの心もズンと重くなるのだった
………
その夜ルナは原因不明の高熱に侵され、
7日間うなされることになった
やっと名前がでました。