22 ルナとカイ
今日もハラペコくまさんは千客万来で昼時の忙しい時間が終わりそろそろ休憩しようかと言っていたところにまたカイがきたのだ
「マリーちゃん!こないだの事考えてくれた?」
困り顔のマリーとカイの間に小さな体のルナが割り込み、勢いよくメニューをバンッとテーブルに広げた
『いらっしゃいませ!ご注文はおきまりですか?』
ルナは笑っているが眼の奥は笑っておらず背後には威嚇した蛇がみえるんじゃないかというくらい冷ややかな怒りがみえる
「はぁ、またチビか!悪いが俺はマリーちゃんに用があるんだよ!」
『チビって呼ばないでください!』
「チビの名前知らないからチビって言ったんだろ!チビって言われたくないなら名前を名乗れよ」
ルナはワナワナワナワナと耐えに耐えられず珍しく大声をあげた
『チビチビチビ言わないでよ!この粘着男!私はルナって名前があるのよ!』
「粘着男いうな!俺はカイだ!!わかったか、小さい頭にいれとけよルナ」
ニヤニヤとした顔でいい返してくるカイに対してルナは顔を真っ赤にして怒っている
「なんじゃとー!カイお前はルナちゃんの事を知らなかったのか!!!」
何故かお会計をして帰ろうとしていたドワーフのカマ爺が大声をだして驚いている
「ここの看板娘は有名だと思っていたがギルドには浸透してないのか?!!!」
「あー、多分みんな最近街にいないから知らないかもな?」
それからというもの、カイはハラペコくまさんに通っていた
毎日カイの顔を見ない日はなかった。カイという男がどんな男なのか、ハラペコくまさんに来るお客さんやクエスト受付嬢のジャスミンさん、カイ本人との会話からだんだんと見えてきた
女性冒険者が口を揃えて言うのは褐色男子とコバルトブルーの切れ長の瞳で近寄りがたいのかと思わせておいて人タラシの人懐っこさでギャップ萌えなんだとか。そして恋人には凄く優しいとか
((わからん。ただのチャラい粘着男だ))
あとは オッドアイ というギルドのギルマスが現在のアンファングの治安を守っているのだが、そのギルドの1人であるということ
炎の加護を受けている魔導剣士だということ
他にも聞いたが、特に悪口をいうような人がいないところを見るといい奴なのかもしれないが、
((マリーを怖がらせた罪どうつぐなわせてやろうか))
「こほん、あの、ルナ?顔が凄く悪役みたいな表情だけれど…」
『ごめんなさい!アミュレットに未来予測してもらうのに頭の中のあの粘着男の情報を振り返っていたらそんな顔に』
ルナはほっぺをムニムニしてこわばった表情筋をほぐした
『じゃあ、マリー、はじめるね!』
「はい!」
2人は額をコツンと合わせると額がポワンと白く光り、意識は未来予測の中に入った