12 捜索
ルナとマリーゴールドが風の如く、ずっと走り続けていたころ
別ルートから別荘に国王に仕える医師と医師の護衛に一番隊の隊長、それに、四番隊の隊長、副隊長が向かっていた
一番隊は戦いに特化した騎士のなかでも精選された強者の5人のみが入れる。一番隊の隊長ともなると国の頂点に立つほどの強さだ
四番隊はヒーラーの集まりで戦では後衛の要だ。主に治癒魔法に特化しているが、中には闇の加護の者もおり、術呪返しや呪いを解くことに特化した者が所属している。四番隊隊長は回復、副隊長は闇魔法が得意であった。
このメンバーにしたのも宰相からの報告を受けた
王の計らいだろう
どんな事態でもこのメンバーなら対応できると判断したのだ
しかし、医師御一行が別荘に到着してからしばらく待つが誰かが来る気配すらなく、予定を大きく過ぎてもマーリンの乗った馬車は姿、形すら見えない
「少し、様子を見てくるのでここから動かないでください」
一番隊隊長が馬にまたがり森に向かって走り出した
森の中腹に差し掛かかったころ倒れている馬車を見つけた
御者が倒れている、しかしアッカー家令嬢と侍女が見当たらない
事情を聴くために御者を起こしたが、途中で休憩したところまでは覚えているがその後のことは記憶をなくしていた
御者には前から誰かに殴られたような痕があること、荷物が荒らされ(単に馬が倒れるときに荒れただけなのだが)
さらに荷物が減っていたこともあり
「クソッ!賊の仕業か!」
一番隊隊長は顔をしかめ、傷ついた御者を馬に乗せ別荘に引き返した
そのまま事の次第を王と宰相に報告した
『なんて事だ!賊に大聖女を拐われてしまうなんて』
「私の采配ミスです。大変申し訳ございません。」
ジャンの嫌な予感が的中し、可愛がっていた娘と侍女の行方不明に憔悴していた
『いや、ジャンのミスではない。最小人数での別荘行きに許可を出したのは私だ。3歳の令嬢と14歳の侍女か…きっと奴隷商に売られているだろうな。レオンの方で捜索部隊を精選してくれ』
「承知しました。すでに手筈は整っております」
騎士団長のレオン・ナイトレイの命令で騎士団から一番隊が捜索隊として動くことになった
…………。
もちろん、捜索隊が出ることは未来予測でわかっていたことであり捜索隊が動き出すまでにどれだけ遠くに行けるかが2人のカギであった
「流石に朝日が昇ってから休憩なしに走り続けたからもう追ってはこないでしょうね…はぁ、はぁ」
肩を大きく上下させ息を整えながらマリーゴールドが後ろを振り返る
今は朝日どころか2人の背中には夕陽が沈みかけていた
『ご、ごめんなさい…はぁ、はぁ、わたくしにもう少し体力があればもう今頃はじまりの街 アンファング に着いている頃なのに…はぁ、はぁ、』
ルナはマリーゴールドよりさらに呼吸があがりフラフラしている
今いる山を下ればアンファングの入り口まではもう少しだ
「ルナ、もう少し進みたいから背中に乗って」
マリーゴールドはルナの前にしゃがみ背中を向けた
『ダメよ!マリーも疲れているのに』
「私はルナよりお姉さんだし体力もあるわ。だから大丈夫!それにここで休むより捜索隊が動いてる頃だから早く街に入った方が安全だわ」
『マリー…ありがとう、お願いちます。でも本当に無理な時は休むと約束して頂戴。その時はわたくしも歩きましゅわ』
「はい!」
マリーゴールドはニッコリ笑ってうなづくと小さなルナをおんぶし、一歩、また一歩と街に向かって歩き出した
もう2人のMPは枯れ果て魔力の使い過ぎで体はボロボロになっていた
お腹はすくし、体は痛いし、眠い。しかしマリーゴールドはるあを守ると自分自身に誓ったため街に着くまでは絶対に倒れられなかった
街の入り口に着いた頃にはもう辺りは真っ暗で街も寝静まり灯りもあまりついていなかった。しかし着いたという安堵からマリーゴールドはそのまま気を失って倒れてしまった
「おい、あんたらどこの子だ?おーい!こんなとこで寝てたら危ないぞー!」
2人は街の人と思われる男に声をかけられるが、全く起きる気配すらなかった