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あーちゃんのアンティーク  作者: つばさねずみ
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あーちゃん人生に悩む

 ひやあ。百万円でも買うって言ってたよ、あのおじいさん。十万円でも、こっちはおしっこちびりそうな気分だったのに、世の中にはすごい物好きがいるものだなあ。

 十万円で売れてすごい得したと思ってたのに、じつは損したってこと?

 あー、骨董屋ってむずかしい。自分で値段を決めていいって言うのがほんとむずかしい。こういう仕事をやってるパパってちょっとすごいなあって思った。

 パパったら仕入れのときも、こんなふうにいろいろ値段の交渉をして買ってるんだろうなあ。値切ったり吹っかけられたり、そうやって腹の探り合いをやって少しずつ物の価値がわかるようになるわけだ。

 あのおじいさんが相手なら、パパはどうしただろうなあ。百万円で売ったかしら。でもパパったら人がいいから、そのときの気分で値段を下げてしまうこともあるんだよねえ。物の価値をわかっている人に売りたい、というのがポリシーで、気に入らない客とはケンカもするし追い返したりもする、逆に自分が気に入った客には半値で売ったりもする。そういうところはいいかげんなんだか、商売熱心なんだかわからない。

 でも今日はなんだか刺激的な一日だった。十万円で売って、儲かったはずなのに本当は損しているかも知れないという変な気分。でも、手元には十万円がある。

 これでまたおいしいものが食べれるぞ。

 今夜は寿司だ、寿司にしよう。ひゃっはー。

 あずはひとつ雄たけびを上げて、店の中をぐるりとながめる。

 無造作に陳列されている骨董品。それまではガラクタにしか見えなかったものが今は少しちがって見える。

 この中に百万円で売れるものがまだ混じっているかもしれない。そういうのがいくつかあったら、あたしってお金持ちになれるじゃない。もしかしてここは宝の山?

 だけど、骨董品っていうのはじっくり見るとなんだか気持ち悪い。

 みんな前にどこかの家でどこかの人に使われていた品物ばかりだ。このお茶碗も、このカフスボタンも、このネックレスも、この鏡も、何十年ものあいだ人から人へと渡ってここまできた。それが歴史ってことかあ。たった十四年しか生きていないあずよりはるかにおじいちゃんでありおばあちゃんである骨董品たち。

 そんなことを想像すると、どんなちっぽけなものにもそれを使っていた人の趣味嗜好とか喜怒哀楽とか生活のにおいとか、そういうものがまとわりついているような気がしてきた。

 パパはきっとそういうのが好きで集めているんだろうけど、あずにはまだその良さがわからなくて、どちらかというと新品の真新しい家具やアクセサリーの方に魅力を感じる。

 どうしても店番をしなくちゃならないからやっているけど、あんなガラクタみたいなものを売ってお金を受け取るっていうことに、なんかちょっと罪悪感があったりする。お金をもうけるって変な気持ちだ。

「お金では計れないものがこの世にはあるんですよ」

 おじいさんはそう言っていたけど、でも実際にはあのオルガンを手に入れるために十万円払ったわけで、そんなに大切なものならただであげればよかったかなあという気が、しないでもない。でもそうしてしまうと商売にはならないわけで。

 お客さんのことを考えると安く売った方がいいし、お店のことを考えると高く売らなくちゃならない。正反対のことを一度に考えなくちゃならないって、矛盾ってことでしょ。あたしの足りない頭じゃ、どうすりゃいいのかわからない。

 あたしには商売ってものが、向いてないのかなあ。

 一生懸命働いて、それに見合った給料を受け取るというのなら、わかりやすい。工場で働くっていうのは、きっとそういう感じなんだろう。でも工場で働くのは退屈そうだし、商売は難しいし、この先どうすりゃいいのやら。はあ、生きていくってむずかしいわ。

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