あーちゃん、パトカーに乗る
アンティークの小さなテーブルの下に、猫のドンキチが体をもぐりこませて遊んでいる。雑然としたこの店の中は、ドンキチの目にはきっと迷路のように見えていることだろう。
「あーあ、せっかくお金持ちになったのに、これじゃまた貧乏に逆戻りだ」
店の中に所狭しと置かれたガラクタをみて、あずは何度目かのため息をついた。引き出しから骨董品の丸メガネを取り出して顔にかける。
「なぬ、貧乏、それはよいことじゃ」
そんな声がして、貧乏神のムギじいがタンスから出てきた。
「あんたにはよくてもね、あたしには困ったことなの」
「しかし、あーちゃん、なんだか顔つきが変わってきたな」
「そう?」
「顔つきも態度も、ずいぶんしっかりしてきた。元気はつらつの女の子じゃな」
「そういうのって疲れるわ。だいじょうぶ、もうすぐ、ぐうたらに戻るから」
「戻らなくていいじゃろう」
「戻りたいのよ」
店の前に車が停まった。見るとパトカーだった。
「ありゃりゃ、こりゃたいへん。あーちゃん、何か悪いことしたのか?」
ムギじいが心配そうに言った。
パトカーの運転席から、交番のおまわりさんが出てきた。
「わかりましたよ、例の件」
あずをみて、おまわりさんはそう言った。
「そうですか」
「すぐに行きますか」
「はい」
「じゃ、送っていきます」
「え? パトカーで」
「そのほうが早いでしょ」
おまわりさんは言った。そうね、パトカーに乗れる機会なんてめったにないから甘えちゃおう、あずはそう思って、パトカーに乗り込んだ。すると、なんだかおもしろそうじゃな、わしも連れてってくれ、とムギじいがついてくる。さらに、ドンキチまでがドアの隙間からひょいとパトカーのシートに乗り込んだ。




