朝はぬこにおこされる
朝起きるのはつらい。朝がさわやかなんて誰が言ったのだろう。そんなさわやかな目覚めなんてあずは生まれてこのかた一度も経験したことがなかった。めざまし時計なんて、もってのほか。ジリリリリーンなんて野蛮な音でたたき起こされるなって、あたしのデリケートなハートが許さないのよ。
朝はゆっくり目覚めたいんだよねえ。夢から覚めて、あっ、さっきのあれは夢だったんだ、なんて思いながらだんだんと意識がはっきりしてきて、でもまだあたたかい布団のなかで、うつらうつらしているの。二度寝ってこれがまた気持ちいいんだよなあ、ああ、起きたくない、起きたくない。
むにゅ。
なんか布団の上に丸っこくて重たいものが落っこちてきた。ちょうどあずのおなかの上だ。おもたいよ、どけよ。あずはしょうがなく首を持ち上げる。
布団の上にいるのはドンキチだった。猫ってのは、早起きだ。朝の四時とか五時に平気で起きだして、メシ食わせろーってな感じであずが寝ている枕を前足でかりかりやったりする。
おまえは学校に行かなくてもいいんだから、気のすむまで寝てろよ。
あずは寝ぼけまなこでそう告げる。しかしドンキチは容赦なく、こっちが起き上がるまで執拗な攻撃を加えてくるのだった。こいつはぐうらたのくせに、こういうところだけはしっかりしている。
「はいはい、ごはんね、ごはん」
あずは脱皮する蛇のようにずるずると布団から這い出して、猫皿に冷ごはんとかつお節をぶっ込む。ドンキチはそれにかぶりつく。時計を見るとまだ五時を回ったところ。ばっかみたい、なんでこんなに早起きしなくちゃならないの。あずはぶつくさ文句を垂れながら、もう一度布団にもぐりこんだ。
しかしこれがいけなかった。いつもの失敗。次に目覚めた時は八時を回っている。
やばい、今日も遅刻だ。
もうドンキチ、おまえのせいだぞ。そう思ってドンキチをにらむと、やつは自分の寝床ですやすや寝息を立てていやがった。こいつは猫なんてかわいい名前よりも、ナマケモノって方がお似合いだ。ごちそうのサンマは抜きだ。




