骨董屋にも泥棒が……?
汗びっしょりになりながらようやく家に着いた。骨董店の前に自転車を停めて、店の中に入るとそこはガラーンとしている。いつもはお客さんがいなくてガラーンとしているのだけど、目の前の光景はさらにひどい。ガラクタ置き場のように展示してある商品が、ほとんどなくなっているのだ。
「ユキノン、これは……」
レジの横に座ってぼんやりしていた雪乃に声をかけた。
「あーちゃん、おかえりなさい」
雪乃はのんびりした口調だった。
「これ、どうなってるの? 商品が何もないじゃない」
雪乃は、うん、と首をこくりと傾げた。
「もしかして、泥棒にやられた?」
「ちがうよ、全部売れちゃった」
「うそでしょ」
「ほんとうだよ」
雪乃はそう言って、レジを開けた。そこには一万円札やら千円札やらがあふれるほど詰まっていた。あずは腰を抜かしそうになった。
「ぜんぶ、売れたの?」
「うん」
あずはあらためて店の中を見回した。あんなガラクタがみんな売れちゃうなんて、いったいどうなってるの。
しかし店の隅に一つだけ残っているものがあった。貧乏神が住まう古い帳場箪笥だ。
「ねえ、このタンスは売れなかったの?」
「そうなのよ、どういうわけか、お客さん、誰も買ってくれないの」
「だってこれ、タダだよ」
あずはそう言って、タンスの扉に張ってある赤札を指さした。
「わけあり、0円」
「その、わけありってのが、ダメなんじゃないかなあ」
「だって、昨日は使えない万年筆だとか、映らない鏡までも売れたじゃない」
「そうだよねえ、だったら0円っていうのが、まずいのかなあ。高いものから順番に売れていったよ。みんなお金持ちなんだねえ」
そんなバカな、何かがおかしくなってるよ、みんな……。
雪乃は腰を上げて、じゃそろそろ、おうちに帰るね、と言った。
「そうだ、アルバイト代、払わなくちゃ」
「そんなのいいよ」
「よくないよ、だって店番をしてもらってたんだから」
「いいのいいの、おもしろかったから」
雪乃はチャーミングな笑顔を見せる。店を出て、雪乃の自転車を置いてある裏庭まで二人で歩いた。
「じゃ、またあした学校で」
「うん、あ、その学校だけどさ、変なことになってるの」
「変?」
「校則が全部なくなって、登校する時間も自由で、先生がみんなやめちゃって」
「なにそれ」
雪乃はぜんぜん信じてない顔だった。
「ほんとうなのよ、それであたしが校長先生になったの」
雪乃はおなかを押さえて笑い出した。あーちゃん、おもしろい。
「冗談じゃないんだってば。明日学校に行ったらわかるよ、なんかみんなおかしくなってるの」
「うん、じゃ、またあしたね」
雪乃はそう言って手を振り自転車で帰っていった。ほんとうなんだってば……、あずはその後姿を見送りながら、すねたようにそうつぶやいた。




