朝なのに、ぬこが起こしにこない
朝だ。目覚めて時計を見ると、もう八時を過ぎている。
ぎゃー、また遅刻じゃない。ドンキチを見ると、自分のねぐらでまだすやすやと寝息を立てている。いつものように朝早くに枕をガリガリやって起こすこともなかった。
おかげであずはまたも遅刻だ。
とりあえずドンキチのごはんを用意して、だけど自分の分は作っている暇なんかないし、食べている暇もない。もう朝食抜きで学校まで猛ダッシュだ。
ふと夕べのことを思い出して店舗に顔を出し、骨董品の丸メガネをかけて帳場箪笥の前に立った。扉についている金輪に手をかけてそれを引っ張る。
「なにか用かのう」
しわくちゃで垂れ目の小さなおじいさんがこちらを見てそう言った。
やっぱりいたんだ、ムギじい。もしかして夢でも見たのかと思ってたんだけど。
「あたし、学校行かなくちゃならないの」
「たいへんじゃのう」
「そんなにのんびりしているわけにはいかないのよ、すぐに出ないと遅刻しちゃう」
「だったらわしなんかと話してないで、すぐに出たらいいじゃないか」
「そうなのよ。でもなんだか気になって」
「わしのことが?」
「そうよ。だって貧乏神なんて初めて見たから、もしかしたら夢じゃないかと思ったの。朝起きたら消えてて、やっぱり夢だったのか、なんてことになるんじゃないかって」
「心配してくれてありがたいが、わしはちゃんとここにおる。ここは居心地がいいから、ずっといるよ」
「ずっといられちゃ、困るのよ。お店も繁盛しないし、どんどん貧乏になっちゃうじゃない」
「わしは貧乏が好きじゃ」
「あたしは、きらい。早くここから出て行ってよ」
「自分からは出て行けないのじゃ」
「誰かにこのタンスを買ってもらえればいいのね、その方法を考えるわ」
あずは扉をばたんと閉めた。




