表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

でも薔薇がよく似合って、(side:K)

 

「いやー、カイが学籍持ってて良かったよ」


「この学園、平民でも裕福なら入れるからな」


「でも、普通行かないなら持ってないだろう?」


「俺は『基本授業免除でも泊付けにはなるし、行けたら行けばいい』って言われたから持ってるだけだ」


  運良く日中任務がなかったため、俺は生徒として学園に顔を出していた。

  教師の方には話を通しておいたが、生徒には何やら噂をされていた。

  珍しいのは分かるが、全くもって不愉快だ。


「というか、カイ機嫌悪いね?」


「本人の目の前であんなに噂されて、機嫌いい訳がないだろ」


「それもあるだろうけど、ゲルトラウデちゃんの事を」


「黙れ別にそんな訳じゃない!分かったなリョート!」


「……はいはい」


  まあ確かに、俺のゲルト……こほん、俺の婚約者のゲルトラウデに対して、「綺麗だよな」だの「嫁にしたい」だの「色っぽい」だのと言われていた事に、思う所がない事はない。

  ないけれども。


「何が”薔薇”だ、何が……」


  ゲルトラウデは、確かに薔薇が似合う。

  赤茶色の髪は薔薇の棘のようで花の色がよく映えるし、萌葱色の瞳は薔薇の葉によく似ている。顔立ちも華やかだから、薔薇に押し負けない。何より本人が薔薇好きだから、昔からよく薔薇そのものや薔薇をモチーフにしたものを身に付けていたように思う。

  特に赤とか白とか桃色が似合う。

  でも、それは俺だけが知って……こほん。

  兎にも角にも、彼女が”薔薇”なんて呼ばれてちやほやされているのが、気に食わない。

  ……薔薇、か。

  頭によぎったのは、とある子供向けの小説だった。


「……リョート、図書館にでも行こう」


「ゲルトラウデちゃんはどうするんだ?」


「どうせあいつの事だから図書館に来るだろ、読書好きだからな」


  やっぱり、ゲルトラウデが”薔薇”なんて呼ばれてるのは気に食わない。

 聞けば、「薔薇のように華やかで」「人目を引いて」「誰からも愛される」「可憐かつ芯のある少女」―との事だった。

  気に食わない。俺にはあんなに無愛想な癖に。

  俺は騎士だ。

  所詮、騎士(平民)なんだ。

  身分だけで言えば、ゲルトラウデと俺は全く釣り合っていない。

  そしてゲルトラウデは、彼女より格上の家の男からも気を持たれている。

  気に食わない。

  何でかは知らないが、本当に、気に食わない!


「カイー、ゲルトラウデちゃんいたよー」


「で、どうすりゃいいんだ」


「ちょっとじっとしてて。……うん、これで良し」


「あー、あー……凄いな」


  見た目も声も何から何まで変わっている。これなら俺だとはまず気付かれないだろう。

  感心していると、リョートは「お褒めに預かり光栄ですよっと」と言ってウィンクしてみせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ