わたくしの婚約者はとても素敵な方で、(side:G)
「また、彼にあんな態度を……!」
わたくしゲルトラウデ・ロッサ・ネーヴェは、自室で机に突っ伏しておりました。
「流石に、流石にこれは嫌われてしまいますわ……!」
わたくしにはカイェタン・ロドンという婚約者がいます。
彼は騎士で、確かに法律上平民上がりではありますが、代々騎士の家系です。その上彼の家系は精霊に愛されており、彼もまた氷の大精霊と契約しているとか。
そのため、特例的に幼い頃から騎士の位を授けられています。
ちなみに、王家としてもロドン家には男爵位、或いは子爵位を授けたいと思っていらっしゃるそうですが、色々あってそれは出来ない為、このような対応なのだとか。
そういった事情もあり、剣の腕は若くして超一流。しかし本人はそれを鼻にかけず、あくまでも謙虚に鍛錬を重ねています。
更に彼は、剣の腕だけでなく凛として整った顔立ちと優れた頭脳、人徳も持ち合わせた青年です。
私より身分の高い方の中にもファンは多いのだとか。
そんな彼がこんな没落スレスレの家の令嬢と婚約してくれているのは、正に奇跡。
……だというのに!
だと!いう!のに!!!
「どうしてあんな態度を取ってしまうのですか、ゲルトラウデ・ロッサ・ネーヴェ!」
その昔、わたくしは同年代の子供を怖がっておりました。
それは婚約者も例外ではなく、怖い怖いと渋り続けていたのです。
見兼ねた両親が「これなら間違いないだろう」と持って来たのが、彼との縁談でした。
わたくしはそこで彼に、恥ずかしながら一目惚れしてしまいました。
金が必要な我が家、爵位が欲しいロドン家、爵位を与えたい王家と見事に思惑が一致したこの縁談はトントン拍子にまとまり、わたくしと彼はめでたく婚約。
幼い頃は、それなりに話せていたと思います。
しかし。
わたくしは、「好きな人の前だと上手く話せない」女でした。
貴族としてそれはあるまじき事。どうにかこの悪癖を直そうと奮闘し続けていますが、一向に成果は出ず……
せめてもと学業や礼儀作法を修める事に努めて参りましたが、彼との距離は広まるばかり。
「”薔薇”なんて称号より、素直になれる勇気が欲しいのに……」
悩みは募るばかりでした。
でも、「あの思い出」がある限り、わたくしはどうにか折れずにいられるのです。
「そもそもわたくしは彼に釣り合っているのでしょうか……」
「げ、元気を出して下さいませ、ゲルトさん!」
「ありがとうございます、ベルさん……」
「ゲルトさんは可愛いですし、成績優秀ですし、男の子からも人気ですから!」
「それはベルさんの方では……?」
「私はほら、お淑やかって感じではでしょう?」
「……」
ベルさん基ベルティーナ・ファーレ・マークンさんは、わたくしのお友達。いつも……婚約者である浮気者のピートさんを締め上げる時でも、微笑みを絶やさない方です。子爵家の一人娘同士、仲良くさせて頂いています。
「確かに、カイェタンさんは女の子から人気よね」
「はい……もう、なぜわたくしの婚約者を続けているのでしょうか!」
「でも、彼全然浮いた噂がないそうよ?」
「そう、なのですか?でも、そうは言われても……」
その後ももやもやとした気持ちが晴れなかったわたくしは、図書館で本でも読んで気を落ち着かせようと思い立ちました。




