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76:ボス戦は、譲れないよなって話

あらすじ

ゴールデンドーンの西に広がる森の調査に出たクラフト一行だったが、滅んだと伝えられていたリザードマンと邂逅する。

そしてリザードマンの村は巨大なカエルに襲われていたのだ!

クラフトたちは、カエルの親玉を倒すべく、動き出した!


 タイタンデュークフロッグを討つ!

 リザードマンの村が、巨大ガエルの群れに襲われ、俺たちは助けに入った。

 細かい理由は不明だが、カエルの親玉であるタイタンデュークフロッグが大量のカエルを引き寄せているらしい。


 カエルどもは夜に動きが鈍るらしいのだが、暗い湿地帯で戦う方がよっぽど不利なので、夜はリザードマンに任せ、俺たちはゆっくりと休ませてもらった。


 日の出と共に、俺たちはカエルの親玉を討つことになった。

 最初、俺が広域の火魔法か氷魔法を放つつもりだったのだが、レイドックに却下された。

 実は以下の理由で攻撃魔法を禁止されていたりする。


 今回の未開拓地域を調べるという旅の間、何度も魔物に襲われた。もちろんレイドックやキャスパー三姉妹によって撃破されたのだが、当然俺も攻撃に参加する場面はある。

 強力な攻撃魔法を放つ俺を見て、エヴァが疑問に思ったらしい。

 その時こんな風に疑問を投げかけられたのだ。


「クラフトさん。もしかしたらですが、魔術師の紋章系に属する魔法の魔力消費が大きくないですか?」

「え?」

「おそらくですが、黄昏の錬金術師の紋章が優秀でわかりにくいだけで、魔術師の紋章持ちより、魔力消費が大きいように感じます。錬金術による作製は連続で出来るようですが、攻撃魔法などは連発するのが難しいのではないですか?」


 このエヴァの助言は衝撃だった。

 俺の感覚からしたら、魔力消費が大幅に減っていると感じていたからだ。

 だが、それは俺が魔術師だった頃との比較だ。あの頃は大量の魔力を消費して、コップにわずかな水を生むのがやっとだった。俺個人の魔力が豊富だったのにも関わらずだ。

 エヴァの言葉を意識して、錬金術の魔力消費と、それ以外の魔法で使う魔力消費を慎重に比べてみた。

 もちろん魔力は数字にできるようなものではないので、感覚だよりではあるのだが、エヴァの推察は正しかった。


 結論として、魔術師系の魔法を使用する際の、魔力消費量は大きい。

 おそらく、魔術と呼ばれるくらいの大魔法では、連発することは不可能だろう。

 だから、レイドックに厳命されていた。


「クラフト。攻撃魔法の使用を禁止する」


 言われた時は反発したが、その分錬金術でフォローしてくれと説得されたのだ。


 そんな訳で、今回の「なんかむかつく巨大ガエルをしばいたろ」作戦(命名ジタロー)では、俺は正面戦力として数えられていない。

 だが……。


「〝破天烈風〟!! 〝飛翔連撃〟」

「〝刹那闇討〟」

「くらえっすよ!」


 夜明けを過ぎ、沼地がようやく明るくなってきたタイミングで、俺たちはタイタンデュークフロッグへと特攻を開始した。

 

 日の光を浴びて、動き出した巨大ガエルどもが、レイドックたちの技によって、次々と細切れにされていく。

 背後のリザードマン村から歓声が飛んできた。


「おおお! 見ろ! あの人間たちを! あのパラライズバロンフロッグがヒキガエルのように次々と倒されていくぞ!」

「なんだあの技は!?」

「やはり人間は恐ろしい……」

「だが、今は味方だ!」

「本当に味方なのか?」

「あいつら……凄まじいな」


 ふふふ、驚いてるな。

 レイドックの野郎、また腕を上げてるからな。

 なにげにジタローなんかも活躍してやがる。見上げるような巨大ガエルの群れを、切り裂くように突き進んでいく。

 それでも目標のタイタンデュークフロッグは遠い。簡単に乱獲しているように見えるが、決してバロンフロッグも弱くはない。


「いいか! 魔術師を安全にタイタンデュークの目の前まで連れて行くのが仕事だぞ! クラフト! お前は援護に徹しろ! 俺の許可があるまで攻撃魔法は使うなよ!」

「念押しされなくてもわかってる!」


 勢いでそう返してしまったが、少しくらいの援護攻撃ならいいだろうと思っていたので、レイドックの念押しは絶妙のタイミングだった。

 くそっ。見透かされてやがる。


 極大魔法ならまだしも、細かい攻撃魔法くらいならいいんじゃないかとも思うが、エヴァもバーダックも、奥歯を噛みしめ手を出していないのが見える。

 タイタンデュークフロッグがどのくらい強力な敵なのか不明なのだ、戦力の温存は必須と言える。


「……レイドック! 露払いは任せたからな!」

「おう! 任せろ!」


 神官であるマリリンも温存したいため、俺は仲間が少しでも傷ついた時点で、ヒールポーションを投擲して治して回る。

 ポーション瓶に使う魔力は微々たる量なので、これは問題ない。


 ある程度進むと、味方の被害率が一気に上昇した。

 少しずつ沼の深いところに踏みいっているため、とうとう水面が腰の高さにまで来たからだ。

 これが普通のCランク冒険者であれば、動きが制限されあっという間にカエルの群れに飲み込まれているところだろう。この状態でなお、敵の殲滅率が変わらない俺たちの方が異常だ。


「ぐはっ!」

「ジタロー! 前に出すぎるな!」

「ですが、リーファンの姉さんが!」

「私は大丈夫だよ! 下がって! クラフト君!」

「ジタロー! 下がれ! 敵にさえぎられてポーション瓶が投げられねぇ!」

「わ、わかりやした!」


 カミーユが素早くジタローの位置とスイッチし、戦列を整える。

 ジタローの肩口から大量の血があふれ出していた。

 弓の腕は一級品だが、いかんせん狩人と冒険者では連携のしかたが違いすぎる。

 俺は視界に入ったジタローに、すぐさまヒールポーションを投げつけた。


「ありがとうございやす!」

「ジタローはクラフトの横にいろ! お前は敵を一撃で倒そうとしすぎだ! 牽制に徹しろ!」

「そいつぁ……」


 ジタローがレイドックに注意されるが、納得いっていないようだ。


「ジタロー。お前の弓は頼りになるし、カエルを一撃で倒せるのもわかってる。だが、その為の位置取りに走り回られたら戦列が崩れる。ここから矢で援護してやってくれ」

「……わかりやした。いきますぜぇ!」


 獲物を可能な限り一撃で倒すのを理想とする狩人の戦い方と、とにかく敵に致命傷を与えて、次々と倒しながら自分安全を最優先とする冒険者の戦い方で差が出るのは当たり前だ。

 旅の間に出会った魔物程度では、ジタローにしてもレイドックにしても、ほとんど確殺だったため、初めて気がついた問題だった。


「よし! 敵を切り崩したぞ! 一気に進む!」

「「「おう!!!」」」


 どこからともなく集まってくる、バロンフロッグを周囲から一掃し、タイタンデュークフロッグまでの道を切り開いた。

 急がないと離れたところにいるバロンどもが仲間の屍を乗り越えてやってくるだろう。


「レイドック様! 攻撃します!」

「……わかった!」


 腰まであった水面は、とうとう胸の高さにまで達する。あらかじめリザードマンに聞いていたとおりだが、もしこれより深い場所だったら、簡単にこちらが全滅していただろう。

 足先も泥に埋まり、動きは最小限に抑えられている。

 そんな中でも敵を一撃で屠っていくレイドックが頼もしい。


 そして、とうとう俺たちの目の前に、ひときわ巨大で気持ち悪いボスカエルが姿を現したのだ。


 身体の半分が水に沈んでなお、その巨体はバロンどもよりもでかかった。

 底なしの穴を覗くような口から、何本もの舌が伸びる。

 バロンもそうだが、この分かれる舌の攻撃が意外と厄介なのだ。


「いきます……〝業炎緋槍〟」

「くらえ! 〝業炎弾〟」


 そのムチのように襲ってくる舌を巻き込むように、エヴァとバーダックの炎魔法が炸裂した。

 特にエヴァの放った〝業炎緋槍〟はかなり威力の強い攻撃魔法だ。

 動きの鈍いカエル野郎は避けることは出来ない。

 辺り一面の空気が灼熱と変わり、タイタンデュークが炎に包まれた。


「やりやしたぜ!」


 ジタローが喝采を上げる。

 やめろジタロー! そいつはフラグだ!


 業炎が空に消え、煙が晴れた先に、ほとんどダメージを受けていないタイタンデュークが怒りの形相でこちらを見つめていた。


「ジタローさんの馬鹿−!!」


 うんリーファン。気持ちは痛いほどわかるが、ジタローのせいじゃない。たぶん。



更新空いてしまって申し訳ない。

大分落ち着いてきたので、連載再開出来ると思います。

頑張りますので、応援よろしくお願いします!


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