48:どんな苦境でも、諦める訳にはいかないって話
2018/10/08より、45〜47話を大幅変更しております。
ブックマークなどの関係で、もし話の内容がつながらないと感じた方は、45話よりお読みください。
よろしくお願いいたしますm(__)m
後の指揮はカイルとサイノスギルド長に任せ、俺は全力で自宅へと戻る。
その際冒険者ギルドが、コカトリスとの戦闘に直接参加するには少々ランクの低い冒険者を連絡役として数人つけてくれた。
「ちょっ!? はっ! 速い!」
「待ってクラフトさん!」
「馬鹿! 先に行ってください! 家は知ってますから!」
「わかった! すぐこい! 鍵は開けとく!」
「はい!」
「ちょっ……クラフトさんって錬金術師だよね!? なんであんな足速いの!?」
「開拓村に長く住んでる人はみんな無茶苦茶なんだよ!」
恐らくゴールデンドーンに来て日の浅い冒険者なのだろう。
ぐんぐんと引き離してしまう。
ブラックドラゴン号に乗っているわけでも無いのに軟弱な!
俺は冒険者達を置き去りにして、錬金部屋に飛び込んだ。
「お帰りなさいませ。マスター」
すっとメイドのリュウコが出てくる。
「リュウコ! 手伝ってくれ」
「はい。準備済みです」
作りかけだった石化防止薬の作成に必要な材料が全て丁寧に並べられていた。
どうやらリュウコが用意してくれていたらしい。
多くの貴重な材料が必要な石化防止薬は量産に向かない。もし、俺が黄昏の錬金術師の紋章を持っていなければ、とてもまともな数は造れなかったはずだ。
特に現在はいくつかの材料を別の材料で無理矢理補っているような状況なので、とにかく作成に時間が掛かる。
簡単に言えば、石化防止薬の材料になる錬金薬を錬成するための錬金薬を錬成するという、何重にも手順を踏まなければならないのだ。
「クソ……あれが手に入れば、石化解除薬も防止薬も一気に造れるっていうのに!」
手に入るわけも無い素材が頭をちらりとよぎる。
もしその素材が手に入れば、全ての手順をすっ飛ばして、一気に解決できるものを!
「はぁはぁ……お、お待たせしました! 何か手伝えることはありますか!?」
「ちょうどいい! この錬金薬をこの樽に移すのを手伝ってくれ!」
「はい!」
中間素材の錬金薬を冒険者とリュウコに手伝ってもらって樽に移していく。
おい冒険者! リュウコより力が無いとか情けない!
錬金釜が空になると、すぐに次の錬金薬の作成にはいる。この二つの錬金薬を混ぜて、さらに別の錬金薬へと錬成するのだ。
一つの錬金薬を作る度、ごっそりと魔力を持って行かれる。
普段なら、ここで別の作業に入るのだが、今日は問答無用で貴重なマナポーションをがぶ飲みしていく。
魔力回復薬に任せて、次から次へと中間素材を完成させていった。
ふと見ると、手伝ってくれている冒険者達が汗だくでヘロヘロになっている。
「しまった。これを!」
「これは……もしかしてクラフト印の伝説スタミナポーションですか!?」
「いいから飲め!」
「はっはい!」
「お……おおおお! なんだこれ!? 全然疲れないぞ!」
「凄い!」
リュウコが普通に手伝ってくれていたからすっかり失念していたよ。
はしゃぎ出す冒険者。手が動いてればそれでいい。
彼らの手伝いもあって、ようやく一回目の石化防止薬が完成した。
樽一つ分といったところだろう。
「よし! 半分に分けて、すぐに右翼と左翼に運んでくれ!」
「わかりました!」
石化防止薬を樽詰めすると、すぐに担いで飛び出していく。
俺はそれを見送ることも無く、次の薬の作成に入ろうと、手を止めた。
外から喧騒が聞こえた気がしたからだ。
外に飛び出し、騒ぎのする方を見れば、城壁に三つ存在する未完成部分の西側、中央部隊からだった。
「もう町まで到着しやがったのか!?」
物見塔から見ていた限りだと、もう数時間はかかると思っていたのだが、コカトリスの侵攻は思った以上に速いらしい。
「完成している部分の壁も、第一段階でそこまで高さがあるわけじゃない、本当に防ぎきれるのか?」
「マスター。よろしければ、城壁の様子だけでも見てきましょうか?」
「なんだって?」
たしかに城壁は気になる。もしこれらが破られるようなら、俺達の防衛戦略は根底から破綻する。
だが、リュウコはメイドだ。その判別がつくのか?
「お任せください」
キッパリと言い放つリュウコ。
ならば信用しよう。
「わかった。確認してきてくれ。だが、間違っても戦闘には参加するなよ!? それと、中央部隊の様子も確認できそうなら頼む」
「了解しました」
リュウコが軽やかにお辞儀をしたので、俺はすぐに背を向け、錬金部屋へと戻る。俺の戦場はここだ!
残った冒険者に手伝ってもらいつつ、今度は石化解除薬を作成していく。
対処療法だがやるしかない!
俺は狂ったように錬成をしまくった。
もし……もしもあの素材があれば、必要数などあっと言う間に用意してみせるものを!
「くそっ……コカトリスの卵さえ手に入れば……」
俺の呟きに、リュウコが顔を上げた気がした。
◆
そこは西側の城壁未完成部分。
大量の冒険者が集められた中央本体だった。
冒険者ランクがCに上がったばかりのデガード・ビスマックは地平線を睨み付けていた。
主力であるBランクが軒並み留守の状況で、傭兵の経験があることから、仮の指揮官を任されたのだ。大役である。
「最終的に、予防薬は何人が飲めた?」
「一〇〇人ほどらしい」
強面のデガードに答えたのは、彼の相棒である虎獣人のタイガル・ガイダルだ。同じ傭兵団に所属していたが、部隊が壊滅したのを機に、二人で冒険者に転職したのだ。
「約半数か」
「普通に考えたら、一〇〇人の実力派冒険者の戦力は並みじゃないんだが」
虎獣人のタイガルも地平を睨み付ける。
狂ったように押し寄せるのは、大津波となったコカトリスの大軍だった。
コカトリス。
その姿は凶悪なツラのニワトリがもっとも近い表現だろう。
大きさは馬程度から、その数倍。個体差が激しい魔物である。
もちろんその大きさから繰り出されるクチバシ攻撃は強力だが、コカトリスにはなによりも厄介な能力があった。
石化のブレスだ。
鍛えられた冒険者なら、ある程度防げるのだが、限度がある。
石化のブレスを大量に吸い込んでしまえば、どんなに実力があろうが、いずれ石化してしまうだろう。
そして、ブレスを吸わないように戦うというのは、それだけで大変なハンデとなってしまう。
そんな厄介なコカトリスが千……いや数千の単位で襲いかかってくるのだ。洒落にならない。
むしろドラゴン討伐すら経験した冒険者達一〇〇人に石化防止薬を配れただけでも僥倖だろう。
「いいか! 間違っても前面に突出するなよ!? 城壁の未完成部分を逆に利用しろ! 中に入ってきた奴だけを確実に仕留めるんだ!」
「「「おお!!」」」
中央部隊が気合いを入れて答える。
ドラゴン戦である程度連携を知っている連中で助かったと、デガードは内心で安堵する。
これが自意識の高いバラバラの冒険者だと、むしろその数が仇になる。
「予防薬を飲めなかった奴はバックアップ! 怪我人を運び出し、ヒールポーションをぶっかけろ! 手が空いたら、何でも良いから遠距離攻撃を叩き込んでやれ!」
「「「おお!!」」」
中央部隊に配られた石化解除薬はわずかだ。左右の部隊にそのほとんどを配布しているからだ。
デガードの中央部隊は、石化される冒険者の数を極力抑えなければならない。
腕の良い錬金術師がいるので、後日解除してもらえるが、石化される人間が多ければ多いだけ戦力が低下していくのだ。
「くそっ。レイドックの野郎がいてくれれば」
デガードも認めるBランク冒険者のレイドック。個人の腕前もさることながら、パーティーメンバー全員がやり手である。
レイドックだけでは無い。数少ないBランクの冒険者は軒並み町にいない。
コカトリス騒ぎのせいで、周辺の魔物が活発化し、それらの退治に出てしまっている。まさかこんなに速くコカトリス達が町に襲いかかってくるとは予想もしていなかったのだ。
だが、泣き言など言ってられない。
冒険者を受け入れ、優遇し、亞人すら受け入れてくれた開拓村の責任者、カイル・ガンダール・ベイルロードに少しでも恩義を返したい。
なにより、彼らにとってゴールデンドーン開拓地は、すでに第二の故郷であり、安らぎの地であった。
自分の家を守るのに、なんのためらいがあろうか。
「ふん。ニワトリもどきが。一匹残らず肉片にしてくれるわ」
「はっ! 今夜の焼き鳥には困らないな!」
「あいつら喰えねぇけどよ!」
残念ながら、コカトリスの肉には毒があるのだ。
不敵に笑い合う歴戦のデガードとタイガルに、周りの冒険者達も緊張をほぐしていく。
そんな冒険者達の様子を青ざめた表情で見つめる影があった。
「あっ! あなた達こんな所にいたの!? すぐに教会に戻りなさい!」
「アズ姉!」
孤児院の責任者であり、教会の神官でもある狐獣人のアズールが息を切らせて、ようやく探していた子供達を見つけた。
アズールの声に振り向いたのは、エドサイカカイワミカ冒険団の孤児四人組だった。
お待たせしました、長く空いてしまってすみません!
私生活の環境作り、まだ終わってません(´Д`)
なんとか少しずつ進めて、書いていく所存!
見捨てないで!!
前書きでも書きましたが、10/8日から45〜47話を大幅変更しております。
某ヘイトおじさんが消滅した!
この言葉がわかる人は大丈夫。
わからない人は45話からお読み直しお願いいたします!
ブックマークなどの関係で、この話から通知になっている人がいるかもしれないので。
ご迷惑おかけしますm(__)m




