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45/265

45:のんびりな日常って、幸せだよなって話

45話大幅変更。46話、47話削除

詳細は後書きにて。


「クラフト兄ちゃんおはよう! 届け物だぞ!」

「ようエド」


 その日、遅めの朝食を摂っていると、エド達孤児が現れた。

 子供達の家庭教師をやっているせいか、懐いてくれている。


「お前ら学校は?」

「今日は休みだよ!」

「そうか」


 今、開拓町では午前学校という物を義務化している。週に五日の授業で、子供達にはお昼の給食が無料で配給されることと、きちんと子供を学校に通わせる親に対しては、開拓補助金が増額されることから、ゴールデンドーンに住む子供達は皆学校に通うようになっていた。

 また、早くから獣人差別を取り除く努力をしていたので、トラブルもない。


 四人の獣人孤児達は、それぞれ両腕一杯の植物を抱えていた。


「届け物だって?」

「ああ。教会の畑で育てたハーブだ! 兄ちゃんにもらった肥料で育てたら、めっちゃ沢山育ったから、お裾分けだってアズ姉が」


 籠一杯に摘められた薬草を差し出すカイ。


「こんなに沢山ありがとうな。干すのはあとにして、お前達はもう朝飯を食べたのか?」

「まだだよ」

「そうか、じゃあ食べてけ」

「いいの!?」

「でもアズ姉が用意してるかも」

「じゃあアズールも呼んでこい」

「やったぁ! すぐ連れてくるね!」


 俺の返事を待たずに飛び出していくエド。

 すぐにアズールが引っ張られてきた。ゴールデーンドーンに越してから、キツネの毛並みが良くなって、輝くような美人になっていた。


「おはようございます、クラフト君」

「よう、おはよう。リュウコ、頼む」

「かしこまりました。マスター」

「本当に良かったんですか?」

「全く問題ない。これでも結構稼いでるからな」

「それではお言葉に甘えます」

「やったー!」


 子供達がはしゃぐ。

 完璧なタイミングで料理が運ばれてくると、夢中で頬張りはじめた。


「うめー!」

「タマゴおいしー!」

「なあ兄ちゃん。魔物のタマゴって凄い美味いって聞いたんだけど本当か?」


 エドが半熟タマゴを啜りながらこちらを見た。


「魔物にも色々いてな、どうやって増えているかわからないものも多いが、タマゴで増えていく魔物もいる。噂だとバジリスクやコカトリスやヒュドラのタマゴは美味いらしいな」

「え!? ほんと!? 兄ちゃん今度取ってきてよ!」

「ダメだ!」


 俺は強く言い放った。


「え? なんで?」

「バジリスクに限ったことじゃないが、ほとんどの魔物はタマゴを持ち去られたら怒り狂って襲ってくる。仮に持ち帰れたとしても、あいつらは地獄の先まで追っかけてくるぞ」

「マジかー」

「ああ。魔物のタマゴには手出し不要。そのうち詳しく教えてやるよ」


 もっとも、それがゆえに、高値を付けることが多いのも事実で、狙う奴は後を絶たない。

 子供達が冒険者になるのであれば、その頃に強く教えてやればいいだろう。


「リュウコの作ったタマゴ料理は美味いだろ?」

「うん!」

「美味しいです」

「ならそれでいいだろ」

「わかった! おかわり!」

「こら! エド!」

「はは、構わないって。リュウコ」

「はい。ちょうど焼き上がりました」

「流石だな……」


 絶妙のタイミングで全ての料理を作り上げるリュウコ。世界最高のメイドを参考にしただけの事はあるぜ。

 詳しくは知らないが、ジャビール先生にいただいたのは、伝説となっているメイドに協力してもらって作成した疑似人格魔石らしく、伝説に恥じないメイドっぷりだった。

 微妙に元となったメイドさんを見てみたい。


「すみませんエドが……」

「そうだな、じゃあ食べ終わったらさっきの薬草を干すのを手伝っていけ」

「えー」

「えーじゃありません! クラフト君、必ず手伝わせますので!」

「了解だ」


 子供達に手伝わせ、薬草を干しつつ、のんびりとした午前を過ごす。

 研究はだいたい深夜までやっているので、どうにも午前中は調子が出ないのだ。

 冒険者だったら完全に失格だな。


 冒険者時代を思い出したからと言うわけでは無いが、俺は仕入れのため、冒険者ギルドへと足を運ぶ。

 冒険者が取ってきた素材に貴重な物が無いかを調べるためだ。


「こんにちはにゃー。クラフトさん」

「よう、ミケ。相変わらず忙しそうだな」


 最近冒険者ギルドでギルド職員として採用された猫獣人のミケに挨拶をする。

 このゴールデンドーン村では、獣人差別はない。

 リーファンのおかげでもあるし、カイルの功績でもある。

 それに合わせて、冒険者ギルドも、ギルド員に獣人を採用するなど、なかなか思い切った改革を始めていた。

 ギルド長に少し話を聞いたが、国中に広げるためのテストケースをかねているらしい。


「はいにゃー。噂を聞いた冒険者のみにゃさんが、次から次へと拠点を移しに来てるにゃ」

「繁盛しているのはいい事だ。こっちとしても素材が集めやすいしな」

「今日用意できる、珍しい素材はこんな感じにゃ」

「どれどれ」


 邪魔にならないように、隣のカウンターに座り、ゆっくりと素材を吟味していく。

 初めは数が集まらなかったような希少薬草も、最近では少しずつ量が増えていった。

 ただ、品質がピンキリなので、一つずつの鑑定は必要だった。


「じゃあこっちの良い奴だけお願いします」

「少しオマケするので、残りの品質を教えて欲しいにゃ」

「ああいいよ。こっちに分けたのが”普通”品質で、残りは”低度”だな。悪いが”上質”の物だけ買わせてもらうよ」


 山積みだった他種の珍しい素材ではあったが、購入したのはいくつかの牙や爪と、薬草一握りだった。

 他の錬金術師はよく知らないが、俺の場合だと、錬金釜を使った錬金術の場合、より品質の高い素材を使った方が、最終的に量が作れるのだ。しかも当然品質も上がる。

 この辺、一度ジャビール先生と話してみたが、推測の域を出ない仮定しか出なかったので、そういう物だと割り切ることにした。


「助かるにゃー。この町の素材は変なのばっかりだから、鑑定魔法が効かないのもおおいにゃ」

「ちょっと待て、俺は鑑定の魔法は使えるが、鑑定士の資格は持ってないぞ? だったらリーファンに頼めよ」


 リーファンは鑑定士の資格を持ってる。

 なんか面倒くさい国家試験と研修を受けなければいけないはずだ。


「正式に依頼するとお値段がにゃ……」

「それってまずいんじゃね?」

「大丈夫にゃ。鑑定したのはクラフトさんって伝えてるから、みんな安心して買ってくにゃ」

「お前ら、俺をなんだと思ってるんだよ!」

「あー、本当に自覚ないにゃあ。本当に大丈夫にゃ」

「まぁ、問題がないなら良いけどよ」


 ああそうか、鑑定無しで販売するとなると、結局、商業ギルドか生産ギルドに流すしか無く、未鑑定の品だと安く買い叩かれるからか。

 それなら、町でそれなりに有名になってしまった俺の名前を出して、鑑定士の鑑定じゃないけどいいかにゃ? って確認して売るわけか。


「ちゃんと購入者には説明しろよ」

「もちろんにゃ」


 ならこれ以上言うことは無い。

 折角冒険者ギルドまできたので、誰か顔見知りでもいないか見ていくか。


 俺は裏の訓練広場に足を運ぶと、なぜか先ほどまで一緒に作業していた孤児の子供達が、冒険者の訓練に参加していた。


「よおクラフト」

「よお、じゃねーよレイドック。なんでエド達が冒険者とガチンコの訓練やってんだよ」


 言葉通りである。

 狼獣人のエド、兎獣人のサイカ、レッサーパンダ獣人のカイ、最後に猫獣人ワミカの四人が、どう見ても歴戦の冒険者パーティーと派手な模擬戦をしているのだ。


 横に来たレイドックが俺より早く口を開いた。


「あー、こっちも一度聞こうと思ってたんだ。お前、あの四人とジタロー。それにキツネ神官には俺達と同じスタミナポーションやってるって話だったろ」

「ああ。ついでに他の人間とどのくらい変化が出るのか、ちょっと気をつけておいてくれって頼んだ通りだ」


 最初は本人達に伝えていなかったが、途中からちゃんと説明して飲ませている。

 リーファンにこう突っ込まれたのだ。


「よかれと思ってやってるんだと思うけど、なんかちょっと人体実験みたいじゃない?」

「はっ!?」


 俺は慌てて全員に謝罪した上で、改めて”伝説”ポーションを飲み続けてもらえるか頼みに行ったのだが、全員が快諾してくれた。

 俺は本当に良い仲間を持ったぜ!


「で、結果があれだ」

「……」


 レイドックが親指でぐっと指す先には、熟練冒険者四人パーティーに必死で食らいつく子供達の姿があった。

 どちらのパーティーも汗だくで、かつ真剣な表情だった。息も荒い。


「ん? どっちのパーティーも疲れてる?」

「ああ、今日の訓練はスタミナポーション無しのメニューだからな」

「え? じゃああいつら、朝からポーション飲んでないの?」

「そう指示したからな。飲んでないはずだぞ?」


 俺の作ったスタミナポーションは、ほとんど無尽蔵に動き続けられる事が特徴だ。もちろん戦闘ともなれば息も上がるし汗だって出るが、あそこまでわかりやすく疲労は出ないはずだ。つまり本当に服用していないのだろう。


「ちょっと待て、エド達が対戦してる冒険者のランクは?」

「二人Cランクで二人がDランクだったかな?」

「はぁ!? 実質Cランクパーティーとガチンコやってるのか!? あいつら!?」

「ああ。まぁ俺達が悪乗りして、子供達に色々仕込んだってのもあるが」

「たしかに、今では慣れて何とも思わなくなってたが、紋章無しの子供が剣技って普通じゃねーよな」

「騎士の家系なんかだと、たまにあるらしいけどな。高名な冒険者の子供とか」

「まったくゼロって訳でもないのか」

「勘違いするなクラフト。そいつらは生まれてからずっと鍛えられてるような連中だし、断言するがエド達と同じ年齢であの強さには絶対届かない」

「うーん。森とかだと、比較対象が弱すぎてなぁ」


 安全の事も考えて、ジタローと子供達とピクニックに行くときは、いいとこオークくらいしか相手をさせてないからなぁ。


「それだ。クラフトお前、時々魔物狩りさせてるんだって?」

「正確には、ジタローの狩りの手伝いだがな」

「この辺の森に入ったら、必然と魔物狩りになる」

「まぁ、そうだな。でも町の近くはかなり掃除はすんでるんだろ?」

「それなんだが、半分は事実で、半分は違う」

「どういう事だ?」


 カイ達の訓練を見たい欲求もあったが、レイドックの話の方が重要そうだ。


「知っての通り、現在のゴールデンドーン冒険者ギルドには、かなりの数の冒険者が集まってる」

「ああ」

「その仕事の大半は、商隊の護衛か、町の治安維持か、近隣の魔物狩りだ。特に魔物狩りは他の町と比べても圧倒的に依頼数が多く豊富で、かつ実入りも良い」

「ああ。カイルが頑張っているからな」


 優秀な冒険者に集まってもらうには、沢山の報酬が必要ですと言い切ったカイルは、町の予算からかなりの額を冒険者ギルドへ振り分けている。

 そのおかげで、冒険者ギルドも町の治安維持など、普通は受けてくれない仕事も受けてくれている。


「それでなんで、魔物が減ってないんだ?」

「減ってはいる。原因は別だ。まず、この開拓地が広大すぎることが一点」


 ああそうか、最近スケール感が色々おかしくなってるが、この町のサイズ自体が前人未踏の大きさなのだ。その周辺の地域と一口で言っても、その広大さは洒落にならない。

 そもそも穀倉地すら、地平の先に隠れて見えない距離なのだ。そこも含めて「町」と言えば、そりゃあ周辺と呼べる地は、尋常な面積では無いだろう。


「もう一点は、減らしても減らしても、森の奥からいくらでも魔物が湧いてくることだな。いっそ森を焼くか?」

「それは無しだ」


 木は貴重にして、重要な資源だ。もちろん、凄い勢いで伐採もしているのだが、なぜかこの地域の森は育つのが早いらしく、気がつけば元に戻っているらしい。

 流石に根っこから引き抜くなど、きっちり開墾してしまえば大丈夫らしいが、単純に木を切り倒したくらいだと、いつの間にか元通りになっているらしい。

 平地や豊かな土地が他にいくらでもあるのだ、そこまでする必要がまるでない。


「少しくらい焼き払っても、森は広大だぞ?」

「何が起きるかわからんからな」

「それもそうだな」

「しかし、それにしても、そんなに魔物が湧いてくるのか」

「ああ。森が広大過ぎるんだよ。もっともその分貴重な素材も多いんだが」

「それは確かに」


 一般流通していない貴重な薬草やキノコなどが採取できる森なのだ。あまり焼き払いたいとは思わない。

 もっとも、森を全て焼き尽くすなど、その面積を見ても不可能だろうけどな。


「レイドック! ここにいたんですか! ちょっと時間をください」

「ん?」


 走ってきたのは、ゴールデンドーン冒険者ギルド長のサイノス・ガシュールだ。

 ちなみに、ザイード開拓村となった冒険者ギルドに残ってくれたギルド長の弟だったりする。もしかしたら冒険者ギルド内で、なんらかの優遇があったのかもしれない。

 サイノスは普段穏やかで、冒険者ギルド長のイメージからは離れた人物だが、その分頭が回り、優秀だった。


 そのサイノスギルド長が声を荒げているのだ。何か問題があったのは間違い無いだろう。


「あ、クラフトさんもいたのですね。良ければ一緒に聞いてもらえますか?」

「町に関わる何か。って事だな?」

「はい」

「行こう」


 俺達は早足でギルド長の部屋へと向かった。



45話以降、お話を大幅に見直した関係で、45話を大幅変更。

また、それに合わせて、一度46話47話を削除いたしました。


マルボロなんておらんかったんや!

とりあえず、前の内容は忘れて、頭を空っぽにして読んでもらえたら嬉しいです( ´▽`)

よろしくお願いします。


また、私生活がたいぶ大変で、更新ペースが確保出来ていません。

申し訳ありません。

なんとか10月の間には改善のめどがたったので、少々お待ちください。

よろしくお願いします。


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[気になる点] 36「新たな旅立ち〜」で、カイが人型に近い狼獣人とありますが、36話の方が『エド』間違いですか?
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