31:力
「なあ、まずくない?」
『てめえならどうにかなる!』
また無責任なことを。さっきまで、必死で相手してた魔物が、強化されたのだ。結構厳しいんじゃないか?
『お前魔力強化とか出来ないのかよ!?』
「あんなもん、ベテランの専売特許だろうが。俺がやろうと思ったら、5分は動けねえよ」
俺が言い返すと、メリアリオは更に言い返してくる。
『アーク達にやらせろ!』
「囮にしろってか!?出来るかそんなこと!」
『てめえそれでも勇者か!犠牲を恐れて勝ちが拾えるとでも思ってんのか!』
「ぐっ……」
言い返せない。その間に覚醒直後のスタンみたいに、止まってた怪物が動き出した。
「……なら、俺が囮をやる」
『は?』
メリアリオの言葉を無視し、兵士の方に話しかける。
「俺が時間を稼ぐ!その間に魔法を詠唱してくれ!」
「分かった!だがこちらからも数名手伝わせてもらう」
助かる、その言葉を置き去りにして怪物に走り寄る。
「メリアリオ、もう一度代償は使えるか?」
『使えるが、今の俺の性能じゃ、大して今までと変わんねえぞ?』
「さっきの倍は血いとっていいから」
『!?そんなにとったら、お前寝込むぞ!』
「たかが三日やそこら、構わん!」
そう言い放つと、俺の願いが承認されたようだ。更に血が消える感覚がする。今度は、手だけではなく体中から。
「けど……まだまだ大した事ねえな。あん時に比べりゃ」
ん?あの時?俺は何を言ってるんだろうか。こんなに血を流したことはない。子供のころにあったらしいが覚えちゃいない。
「さ~て、もうちょい付き合えよ怪物」




