22:会話
「へ~、じゃあ四人は別の村で生まれてるのか。なんでこの街に来たんだ?」
「この村の周りには魔物が多いらしくてな、人助けは出来るし、金は稼げるし冒険者としては文句無い環境だ」
四人はそれぞれ生まれ育った村は違えど、冒険者になってすぐの頃から一緒にいるらしい。
「そもそも、冒険者が生まれた村以外で仕事をするのは珍しくないぞ」
「えっ、そうだったのか?」
「ああ、生まれた街だと、良くも悪くも知り合いが多すぎてな」
良くも悪くも、か。要するに、知り合いが多すぎるから、仕事としてではなく、知り合いへの頼みごと、というかたちになることが多いんだろう。
「カケルはどうなのよ」
「えっ、俺?」
さっきまでアルに絡んでいたイリアが、急に質問してきたので驚いた。
アルは机に突っ伏して寝てるな。よほど酒に弱いんだろう。南無。
シュラインはまだ目が覚めていて、イリアと同じく興味津々でこっちを見ている。
取り敢えず、俺も聞きたいことがあったし、聞いてみることにした。それが俺の目的の説明にもなる。
「みんなはさ、人間とか獣人についてどう思う?」
「どう思う、って別に敵意はないぞ。向こうの国とうちの国は仲が悪いが、獣人そのものは悪いやつじゃねえしな」
「そうよね、やっぱり仲良くはしたいけど国同士がこんなに仲悪いとね」
「どうしたよ、急に神妙な顔して?」
シュラインはそう聞いてくる。が、こいつ目が笑ってない。多分気づいてるんだろうな、俺がしたいことに。
バレてもいるようだし、仕方ないだろう。
「実はな、俺は人間にあって来たいと思っている」
「良いんじゃないか?」
「一回会ってみるといいわよ、とくに獣人は」
思いのほか止められなかった。もう少し止められるかと思ったんだが。この世界の種族間の関係は、結構複雑なようだ。〈かんこ●人〉は日本を好きで旅行にも来るが、〈かんこ●〉という国は、日本に凄まじい敵対心を抱いているのと似ている。
どこの世界も平和とはいかないのか。
「人間は?」
「当たり外れ多いからね、人間は」
当たり外れ、ってひどい言い様だな。言いたいことは分かるが。夢を追っかけてる奴と、殺人を平気で出来る奴を一緒にしては、どちらにも失礼だろう。
「わかった」
その後もワイワイ騒ぎながら酒をのんだ。結局解散したのは、アルが三回目に眠った時だった。すぐに起きるくせにすぐ寝るなよ。酒に強いのか弱いのか分からない。アークいわく、けっこう強い方らしい。ちなみにイリアとシュラインは、相当強い方らしい。差が分からんな。まだそんなに酒も飲んだことないし。




