15:戦闘
「初戦の相手がこれか」
まぁ楽でいいだろう、と思い直し武器を構える。今のメリアリオの形状は槍だ。特訓では剣よりも良く使ったので慣れている。
「かかってこいよ」
そう言いながらゴブリンに近づく。
「ギャギャッ」
そんなます無防備な俺の姿に調子に乗ったのか、ゴブリンが武器すら構えず近寄ってくる。ちなみにゴブリンの武器というのは錆びた短剣と棍棒だ。ろくな装備もつけてないし、そんなに脅威的な相手ではないだろう。
「けど、油断は禁物。それは」
お前らもなっ、と叫びながら一気に駆け出す。魔力(魔法ではない)によって身体能力を強化しゴブリンが反応すらできない速度で走る。結局ゴブリンの首をはねるのに三十秒とかかっていない。
「ふぅ、案外楽だったな」
そう言いつつも心の中では別のことを考えていた。
それはちょっとした違和感。くんれんをしている時から感じていた違和感だ。そのときは何なのかわからなかったが今になって、いや、ゴブリンを殺してからわかった。
俺は殺すことに、殺し合うことに、戦いそのものに一つの嫌悪感も恐怖も抱いていない、ということだ。以前の俺なら考えられなかった。どれだけカッコいいことを言ったところで俺は平和に慣れきったにほんじんだ。法律とか以前に何かを殺すことには確かな抵抗があった。人を平気で殺せる奴は少しすごいとすら思っていた。
だがそんな俺が今は人に近い姿をした魔物を殺すことに大した嫌悪感を感じない。嫌悪感など皆無だと言っていい。むしろある程度の興奮すら感じていた。命を奪うのが楽しいのではなく戦いが楽しい。そう感じていた。
「確かエルダラムさんも魔人と人間は違うと言っていたしな。そのせいかもしれん」
まぁいい。とそこで考えるのをやめる。この世界で生きる上で一つ心配事が減ったのだ。十分に良いことだろう。その考えが魔人としても少しおかしいものだとはそのときの俺は知らなかった。




