夢うつつ
遂にここまで来た!
魔王はすでに衰弱している!
こちらは僧侶、戦士、弓士、魔法使いが全員生きている!
「勇者ァ!止めを刺せ‼︎」
これで最期だ!
「うぉぉぉぉぉぉ‼︎」
→→→→
魔王は討伐された。
そして、世に平和が訪れた。
僧侶は大司祭に。
戦士は近衛騎士団団長に。
弓士は近衛騎士団副団長に。
魔法使いは森の管理者に。
そして俺、勇者は、実家に帰り、農業を営む事にした。
暫くして、皆で終戦の宴を開こうという話になった。
「おう勇者!変わってないなお前!」
「あら勇者さん、お久し振りです」
「勇者さん、本当に変わってないね!」
「勇者ぁ!早く飲もうぜ!」
「戦士に僧侶に弓士、それと魔法使い!お前らもあんまり変わってないな」
「いや、みんな変わったぜ」
見た目では変わっていないが、いい知らせでもあるのだろうか。
「そうですよ勇者さん。私達」
ーーもうみんな死んでるんだ
→→→→
………夢を見ていた。
とても長い夢だ。
現実は違う。
魔王の最初の一撃で俺は気絶し、戦士と魔法使いが奮闘して、傷が深くなると弓士が交代し僧侶が回復する、ということを繰り返し、俺以外は全滅。
代わりに魔王は衰弱している。
止めを刺さなければ。
俺はゆっくり近づく。
もう逃げることも出来ない程に弱っている。
そして俺は、最期の一撃を放った。
魔王は虫の息だ。
もうじき死ぬだろう。
そんな時、魔王は俺に語りかける。
「勇者よ、お前はそんなに戦って何になる」
「そんなもの決まっている!死んでいった仲間の為、国の為だ!」
「違う、国や仲間の話をしているのではない。お前はどうなのだ」
「どういう事だ?」
「勇者よ、お前は確かに魔王を討伐した。仲間の犠牲によってな」
「だが、お前に待っている未来は平和の象徴、政治の道具だ」
「頼れる仲間も死んでしまった。すでに肉親も我の眷属に殺されている。」
「誰がお前を守る?誰がお前の自由を主張する?平和の象徴は自由だと思い込んでいる者どもがお前を助けると思うか?」
「……何だと?」
「夢は夢だ。そして夢はいつか覚めるものだ」
消えゆく魔王が最期に告げる。
「ここから現実の幕が開ける!ようこそ、現実へ!」
暫くして、新たな魔王がこの世に君臨した。
錆び付いた光の剣を手に持って。
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