7 お蚕
青年フォラロティンが昼食の買い食いをしていると、奴隷商らしき風貌の男がうろついているのが目に付く。
「許せねえ」
正義感のある彼は人の多い昼間から堂々と取引しようなどという不届きものにヤキを入れてやるつもりで追いかける。
「買わんか」
男の倉庫に牢のようなものがあり、男も女も子供も大人も老人も髪の毛の長いものばかりがいた。
「なんでこんなに髪の毛が」
カラフルでキラキラしている。髪の毛の商売であろうか?
先ほどまでの怒りが困惑にシフトチェンジしてくる。
「こりゃイコ族といってな。ムシの蚕と人間の合の子で髪の毛がとても高く売れるのだ」
「蚕ってシルクの材料の人間が世話をしないと生きられない虫、たしか成虫になると食事をせず。そして繭をとりだされる」
「ようしっとるな」
「彼らって髪の毛のびんのか?」
「おうよ」
「食事は?」
「いらん」
「どうやって生える? 羊みたいに? エサいらずで?」
「愛情オキシトシンだ。興味あるか? おまえさん正義感つよいだろ、やさしさと愛情で育つこいつらにはピッタリだな」
「いくらだ?」
「相場は50コエマドゲルポだ」
「20しかねえ! くそっ!」
「この色のないやつは無価値だから20でええぞ」
「ほんとうか!?」
「な ん で?」
「俺、君を助けたいだけだ。よろしくな」
「だ す け る?」
「とにかく、髪の毛を売ろうなんてことはしない」
「の び る よ」
「うーん、じゃあいらなくなった部分をキミの生活の金にしようか?」
「あ な た わ た し かっ た」
「まあとにかく家帰ろうぜ」