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シトクノビトク1 勇者って姫と結婚するもんだよね?
「おまえは誰だ」
鏡の前で向こうの水色髪の人間に問う。戦場に赴く兵士はこうした暗示で自我を崩壊させる。
「……」
◇
「死にたくなければ匿った獣を差し出せ」
薄緑の長い髪をした軍の男が長老に迫る。
「わしは知らん!」
男が命令すると一般兵が村の民家に火を放つ。
「やめろ!」
茶髪の少年が男に叫ぶ。
「貴様、魔王を討伐した勇者か?」
「お前のような悪党は成敗してやる!」
果敢に挑む少年は敗れた。
◇
俺はリカルド・イヂツ。魔王討伐後に幼馴染のルーナと結婚の約束をした。
帰っている道中の宿で村焼きに巻き込まれた。
俺は敵の将軍に負け、目を覚ますと町の診療所だった。
「大丈夫?」
獣の耳を持った薄紫髪の少女が見ている。
「君は、もしかして君が俺を助けてくれたのか?」
「そんなとこかな。重くて引き摺って運んだ」
「君は獣族だね。もしかするとあの男の言う獣って君?」
「そう。あの村で姿を隠していたけど」