② 外堀
「ディエルよ、待ちに待ったお前の結婚も近いな」
俺は大公の息子ということで幼馴染の隣国王妹と婚約している。
しかし俺はメイドのアイレア一筋、たとえ彼女を愛人にしようとしても国の立場は王国と公国で俺が弱い。
それに筋は通さないといけないだろう。だから俺は婚約者とは結婚しないことにした。
コソコソ不倫するくらいなら嫁はいらないしな。
しかし逃亡しようにも見張りが厳重に張っていて八方塞がりである。
「大公様~!」
「なんだ騒がしい」
「魔王討伐から帰還した勇者Dが金をせびりにきました」
「おお、ようやく来たか勇者Dよ」
「どうも~勇者ダメンズでーす」
「討伐ご苦労だった」
「いやー苦戦しました。こりゃーたんまりと頂きたいです。だって大公閣下って富まれる大金持ちでしょ~」
「ああそうだとも、先日の値段より倍用意するからしばらく滞在するといい。ついでに息子の婚約パーティーにも出るといいよ」
父は誉められると気分よく金を出してしまう。
「えーオレなんかが大事な婚約パーティーに出ちゃっていいんですか……」
「遠慮するな魔王を倒した英雄よ!」
いや、あれは遠慮じゃないだろう。たんなる雇い主の息子の婚約パーティーなんて出たくないって感じだぞ。
「……まあしばらく滞在します大公閣下の素晴らしい美術品を拝見させて頂きたいですし」
こいつ絶対盗むだろ。
「王女がおみえになりました!!」
「ディエル~あいたかった~」
「これはこれは王女殿下」
「幼馴染なんだから堅苦しいのはなしよ」
「ははは、人目もありますしそういうわけには」
「あ、ところでまだあのゴミメイドいるの?」
王女は辺りを見渡す。
「いやだな、いませんよ」
「そうなの、よかったわ」
「ゴミメイドなんて雇ったりしません。なあそうだろう?」
メイド達を集める。
「そういう意味じゃないわよー」
「お忍びで市街デートしましょ」
「ではとっておきの護衛を一人つれていきましょう」
「まあ一人ならいいわアナタ魔法も使えないしいざってとき戦えないでしょ」
「さすがは魔法学園を卒業なさった方だ。いやーたのもしいですね」
オレは魔力吸収力0なので王女と違って学園生活はまったくない。
「外に出たら普通の一般人らしく話してね」
「はい、では着替えてきます」
王女は魔法でパッパと着替えるがオレは手動である。
普段はメイドたちが魔法で着替えさせてくれるがお忍びだから頼めない。
「ディエルぼっちゃま」
「ああよかった。さあ出掛けよう」
「王女様と二人きりのデートのお邪魔では?」
「まああいつお前につっかかってうざいよな。でもお前がそばにいないと落ち着かないんだよなあ……」
「わかりました」
着替えをすませていく。
「あ、おそ……えええ!?」
「どうかなさいましたか王女殿下」
「なんでゴミメイドがいるの!?屈強な護衛は?」
「彼女は魔法が使えますから」
「2040年~43年の魔法学園を首席卒業でした」
「うわああメイドのくせに平民のくせに首席とかムカつく!!」
「そんなことより出掛けましょう」
「そ、そうね」
「わー絵に描いたような庶民の町並みー」
「なんか逆に貴重ですね」
「あ、危ないです。ぼっちゃま」
アイリアに言われて止まる。人にぶつかりそうになっていたようだ。
相手がチンピラならぶつかったら騒ぎになって終わりだしな。
「きゃっ」
「あいた」
連れだっていたのはジュグ大帝国の男性騎士団員と女性騎士団員だ。
「ちょっときをつけてよねー騎士さーん」
「すみませんすみません!!」
クソの代わりに謝っておく。相手は神の次に偉い真ん中の大主国の騎士だからだ。
「きにしないでー」
「いくよサルヴェナ」
「はーいファイセン隊長」
ファイセンって名前で気がついたがジュグ女大王の甥で騎士団長じゃないか。マジで最悪である。正体隠しててよかった。
「ぎゃっ」
「いったーいなあ」
またぶつかりやがった。
「なに斬っていい?」
「だめですロシトン大将」
ジュグ皇帝の剣である軍人だ。なんでジュグは大王と皇帝フラフラしてんだろ?
「すみませんすみません!!」
「そっちのお嬢ちゃんはケガしてない?」
「だいじょーぶでーす」
さっきから相手が不自然に似てる連中だったが何事もなくすんでよかったぜ!!
「ふぎゃっ」
「いったた……」
相手は宇宙防衛軍人だ。国より星レベルで消せる組織なのでさっきの軍や騎士より偉い!!
「大丈夫かいエレゴイラ」
「ええ傷はないので大丈夫ですよ」
「すみませんすみません!!」
まあこれで許してもらえるだろう。
「うわー宇宙軍人だチョーイケメン!!」
「ちょっとツラかしてねー」
「夕飯までには帰るんだよーそれとここらの人間はハイロダルタンダ民で返り血は赤だから気をつけてー」
くそどうでもいいが血液はジュグの民は緑、他は黄色や青らしい。
「はーい大佐。30秒で終わらせます」
クッソナ王女は女性に連行された。さっきの人の靴、なんかリング状の刃がついてたな。
「ちょいいんですか?」
「相手が悪かったんだろ」
むしろ前の人達が心広すぎる。