Ⅰ逃亡前日の経緯①
俺は貴族の息子、メイドと恋仲。ある日のこと、婚約者をつれてこられた。
逃げるかそいつを殺すかしかない。だが殺すのはかわいそうなので俺はメイドと逃亡することにした。
「ぼっちゃま~追いかけてきますよ!?」
「奴等は死んでよし。殺すか」
「そうですね!闇よりきたれ邪悪なる魔神――――」
「我は暗黒死招く深淵なりて咎を受けよう」
「「愛をもって汝等に深き苦しみ、永久なる終焉を与える!!」」
格好つけたが俺は魔法なんて使えないんだ!
「ふう、逃げるシミュレーションつかれたな」
「そうですね」
■■
エリア1【勇者Aの家】
「父さん、オレ、西魔王の城に行ってくるよ」
「おう…」
エリア666【魔王の城】
「叔父さん久しぶり」
「おう、久しぶり」※オレの叔父さんは魔王です。
「どれ、こづかいやろうなー」
母さんの妹、つまり叔母さんが魔王と結婚したので、こうなりました。
「えっ金貨60000枚なんて貰えないよ!!」
「ケチケチするなよ~」
この人、いや魔王だけどいい人だ。
「魔王様ああ!!」
「なんだー」
「雑魚共が仲間割れを始めやした!」
「しるかーお前らでなんとかしろーオレは忙しい」
「座ってるだけじゃ…」
「あ"?」
「…ビール腹になればいいのに」
いい叔父さんだけどいい魔王ではないです。
■■
―――――俺は勇者だ。
仲間と共に魔王をブッ倒し、村に帰る時、ふと思った。
弓使いの野郎は、魔女をチラチラ見ている。
騎士の野郎は修道女の背後をつけ回している。
(……許せん)
「おいら達仲間じゃないか」
「貴様には姫様がいるだろう。協力願う」
(だが断る!!)
「どうしたのですか勇者さん?」
「修道女、俺の嫁その2になってくれ」
「ええ!?…いいですよ」
「アンタたち何話してるのよー」
「魔女、俺の嫁その3になれ」
「は?…別にいいけど、生活費とか…家とか考えてる?」
「金ならある」
俺は村に帰るまえに、城に寄った。
「勇者…おかえりなさいさっそくだけど祝言の…」
「姫、プロポーズがまだだったよな」
「え?……そうですわね」
「俺の四番目の嫁になれ」
「え?四番目!?」
「女魔王」
「勇者!よくも父上を!!」
「俺の嫁になってくれ」
「……!?」
俺の一番目の嫁は、初めから女魔王だと決めていた。勇者になったのも魔王を倒したのも。
すべては魔王になるためだったのだから。