序章
各種設定はテーブルトークRPG、ソードワールドを参考にしています。故にファンフィクションに分類されるかも知れませんが、ストーリー、登場人物はまったくのオリジナルです。
序章
嫌なにおいのする、狭い部屋の中、周期的に右に左に揺れる。
部屋中には大勢の人間が詰め込まれている。皆が一様に武装している。武装は皆がまちまち、良く観察すれば数人の仲間と思しき集団がいくつもあることがわかる。そして彼らの使う言葉もいくもの種類があることがわかる。
大声で勇ましい事を語る集団。
小声で怨嗟の声を吐く集団。
一人でぶつぶつなにやら祈りをささげている奴。
かく言う俺は、呑気に鼻歌を歌っていた。
歌の歌詞は、今となっては下位古代語と言われる大昔の言葉。俺自身は歌詞の意味を知っているが面倒なので説明は省くが、子守歌の類だ。
正直きな臭い空気の中、俺は満杯になった大きな背負い袋に腰掛。得物の槍を無造作に体に立てかけ、気持ちよく揺れる船室でゴキゲンさんだった。
不意に目の前に、熊のような大男が立ちふさがる。奴はどすの利いた声で俺に怒鳴る。
「おい、てめぇ、ここはガキのピクニックじゃねぇんだよ」
なぁにを、びびっていやがる。俺は口の端をやや吊り上げ薄く笑い。
「違ったのか?」
と、ひげ面、はげ頭の熊男に言ってやった。
「野郎!」
熊男が殴りかかろうとする。
のろまな動きだ… つまらん。寸前でかわせば充分だ。俺は放って置くことにした。
熊男の仲間と思しき奴らが慌てて熊男を取り押さえる。
その中の一人が俺に声をかける。
「すまなかったな、しかしアンタも良くない。今から戦にいくんだ。二十歳やそこらの若造じゃあるまいし。少しは気を付ける事だ。」
俺は手をヒラヒラと振ってその親切に答えた。
そう、ここは戦地に向かう船の中、そして俺たちは金で雇われた気楽で楽しい戦争屋。
「なぁそうだろ婆さん」
俺は自分の左手に向かってそう独り言を呟いた。
俺が昨夜見た夢は概ねこんな所だった。